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最終回では、『シバONE』づくりに情熱を注いでいた相楽編集長が、突然植木職人の道を選んだ。本作の参考となった日本犬専門誌の編集長が、植木職人に転身したというのもあるが、大東駿介さんはあの思い切った転身をどう思ったのだろうか?

大東 相楽が出し切ったというのが1番大きかったのではないでしょうか。パチンコ雑誌の編集長をクビになって、次に『シバONE』をヒットさせたけど、福助というパートナーと一緒にモノづくりをして、彼のことを理解できて、今までは理解する気もなかった編集部のみんなとも人として向き合えた。彼は人生の大きな宝物をもらったんじゃないかなと思うんですね。だから、全て出し切ったって思えたんじゃないかな。

なんで植木職人やねん? というのは、ドラマが参考にした編集長が実際にそうやから、って言われたらそれまでなんですけど、演じていて清々すがすがしかったですね。“全部出し切った”と同時に、“全部もらった”という感じがあったんです。

仕事って夢中になると、周りが見えなくなっちゃうじゃないですか。相楽はそれが当たり前だと思って生きてきた。でも、自分の人生の広がりが見えてくるようになり、希望を持って、そして、心を穏やかに、豊かに生きる準備が整ったんじゃないかな。もっと言うと、植物って動物よりコミュニケーションが難しい生き物。豊かさがないとたどり着けないと思うんです。彼の選択は終わりではなく、新たな始まりだったんだなと感じます。

相楽編集長の大切なパートナーである愛犬・福助を演じたのは主に“のこ”というしば犬だが、その役柄ゆえ出番が多かった。そのため、実は他に、「きなこ」と「はな」という2匹の柴犬が福助を演じ分けていた。ドッグトレーナーの細波麻裕美さんは、その理由をこう語る。

細波 福助の登場シーンが多いため、すべてを「のこ」が演じるのは負担が大きすぎます。それで3匹の柴犬たちに演じ分けてもらいました。重要なシーンは「のこ」が担当していますが、ワンちゃんによって得意、不得意があり、好きなものも違いますから、それを見極めながら登場シーンを割り振っています。

犬に負担をかけない、という思いは、内藤プロデューサーも同じだった。

内藤 福助のオーディションでは60匹もの柴犬と会いました。決め手は顔立ちもありますが、他の犬と一緒にいても大丈夫か、「待て」ができるか、など総合的に判断して決めました。犬たちのことを考えると、福助を3匹が担当するのは当たり前のこと。体調管理には細心の注意を払いました。3匹の福助には感謝の気持ちでいっぱいです。その中でも、のこちゃんは、求められていることがちゃんとわかった上で、その通りにやってくれるかしこい子でした。

シバたちが名演技を見せ、相楽編集長をはじめとした編集部の面々の成長物語でもある「シバのおきて」。犬と人間との共生や、お互いが支え合い、補い合うことの大切さを教えてくれた。

兵庫県生まれ。コンピューター・デザイン系出版社や編集プロダクション等を経て2008年からフリーランスのライター・編集者として活動。旅と食べることと本、雑誌、漫画が好き。ライフスタイル全般、人物インタビュー、カルチャー、トレンドなどを中心に取材、撮影、執筆。主な媒体にanan、BRUTUS、エクラ、婦人公論、週刊朝日(休刊)、アサヒカメラ(休刊、「写真好きのための法律&マナー」シリーズ)、mi-mollet、朝日新聞デジタル「好書好日」「じんぶん堂」など。