6月4日、東京・渋谷の放送センターで2028年度前期の連続テレビ小説の制作・主演発表会見が行われた。118作となる連続テレビ小説のタイトルは「ほんのモキチ」。

日本を代表する歌人で精神科医の斎藤茂吉と妻・輝子をモデルに、夫妻の人生を大胆に再構成。フィクションとして描くオリジナル作品だ。主人公のモデルとなる斎藤輝子は、“悪妻”と呼ばれながらも、自分に正直に、自由奔放に生き抜き、晩年には、エベレスト登山をはじめ、世界108か国を旅し、“痛快ばあさん”として名をせた人物である。

本作は、宮藤官九郎がオリジナル脚本を手がけ、主演を河合優実が務めることが発表された。宮藤は15年ぶりに朝ドラ脚本の執筆を、河合はオファーを受けての起用となる。

河合が演じる主人公・テル子は、家事も育児もせず、口も悪いが、奔放で負けず嫌い。さらに派手好きで、やたら前向きな女性という設定だ。一方、夫のモ吉は大病院の院長であり、数々の名歌を詠んだ偉人であるものの、陰気で粘着質。えない風貌の婿養子ということもあって、人望もないどこか残念な人物として描かれる。対照的なこの2人が気が合うわけがなく……そんな究極の“でこぼこ夫婦”を笑いたっぷりに、朝ドラ史上“最も不仲な夫婦”の物語が描かれる。

宮藤と河合から寄せられたコメントを紹介する。

モデルとなる人物について

斎藤さいとうてる(1895〜1984)】
大病院を経営する斎藤家の娘として、将来の「院長夫人」を宿命づけられ育つ。学生時代に、婦人誌の「令嬢特集」で表紙を飾ると、奇抜なファッションと“たん”のキャッチコピーで一躍時の人となる。
結婚後は、震災、大火事、戦争と激動の時代を生き、病院を守ることに腐心する。一方で、妻の立場に縛られず、自分を貫き自由に生きた。
晩年には、南極、エベレスト登山など世界各地を冒険し、その破天荒な生き方が注目を集め、テレビ番組にも多数出演、再び時の人となった。

斎藤さいとうきち(1882〜1953)】
山形県金瓶かなかめ村の農家に生まれる。幼少期から優秀で、同郷の斎藤いちの目に留まり、上京して養子となる。正岡子規に傾倒して短歌を作り、1913年刊行の歌集『赤光』が高評価を得て、広く文壇に影響を与えた。
歌人として活躍する一方で、輝子の婿として大病院の跡を継ぐことに。実直な人柄から、苦悩多き日々の中でも、最大の悩みは、愛する輝子との夫婦生活が上手うまくいかないことだった……。


作 宮藤官九郎

【宮藤官九郎さんのコメント】

2度目の連続テレビ小説です。まずはこの機会を与えて頂いた幸運に感謝します。せっかくだから前回とは全く違うアプローチで、半年間お茶の間をにぎやかに盛り上げたい。不穏なニュースや日々のストレスで塞ぎがちな現代人の心=キモチを解きほぐす、そんなドラマにしたいと考えました。
そして辿たどり着いたのが“猛女と呼ばれた淑女”こと斎藤輝子さん。
良妻賢母がしょうさんされた時代に、家事も育児も一切せず、権威をものともせず自由奔放に生きた方。夫は歌人にして精神科医の斎藤茂吉。2人の息子も精神科医。そしてご自身は……元祖グラビアモデルにして、元祖バックパッカー、そのうえ元祖インフルエンサー? なんかすごい。いたんだ、そんな人が、あの時代に。
真っ先に河合優実さんが思い浮かびました。あのキレ味の良さ。めた目つき。たたずまい。ピッタリだ。支えたり、寄り添ったりしない。むしろ夫の前に立ちはだかるヒロイン。朝ドラ史上、最も不仲な夫婦の物語。夫婦ゲンカの場面をたくさん書くことになる。でも大丈夫。河合さんならつらくない。見てられる。まだ書いてないけど、すでに楽しい。
痛快で奔放な夫婦ゲンカを半年間お届けします。ほんのモキチです。

【プロフィール】

くどう・かんくろう

1970年生まれ、宮城県出身。91年より「大人計画」に参加。映画『GO』で第25回日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞。以降数々の作品を生み出し、最近では、ドラマ「不適切にもほどがある!」、「新宿野戦病院」、「俺のこと、なんか言ってた?」など話題作を次々と執筆。監督、俳優、ミュージシャンとしても活躍する。2025年に紫綬褒章を受章。
NHKでの執筆は、大河ドラマ「いだてん~東京オリムピックばなし~」など。連続テレビ小説の執筆は、「あまちゃん」以来15年ぶりとなる。


主演 もりテル子役 河合優実

【河合優実さんのコメント】

たいへん大きな役目を任せていただくことになり、日々関わってくださる全ての方々に心から感謝しています。
斎藤輝子さんという人の人生をお借りして、いまどんなことを描けるだろうかと考えています。ご本人とその周囲の人びとについて知っていく中で、激動の家族史をきょうじんなすまし顔で駆け抜けた輝子さんの生き方に、図らずも笑いが漏れてしまいます。人生にはとんでもないことが起こりますが、遠くから見れば喜劇、ということだと思うので、まず至って真剣に向き合いたいです。
また、たくさんの感動をもらってきた宮藤官九郎さんとこのような大舞台でご一緒できることも、幸運に思います。ともに真実からたくさんのものを受け取って、「ほんのモキチ」というまだ見ぬ物語をつくることができるのが楽しみです。
すでに、晴れやかな気持ちというよりは、やってやるぞという気概のほうに胸を膨らませています。愛をもって走ります! どうぞごひいに!

【プロフィール】

かわい・ゆうみ

2000年生まれ、東京都出身。21年に映画『由宇子の天秤てんびん』『サマーフィルムにのって』での演技が高く評価され、各賞の新人賞などを受賞。主な出演作に、ドラマ「不適切にもほどがある!」「RoOT / ルート」、映画『ナミビアの砂漠』『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』『ルノワール』『旅と日々』など。映画『あんのこと』で、第48回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞。NHKでは、プレミアムドラマ「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」で、主人公・岸本七実を好演。2025年度前期連続テレビ小説「あんぱん」で、主人公・のぶの妹・蘭子役を演じた。


モデルの輝子・茂吉夫婦を取り巻く世界

◆ 息子は芥川賞作家・きたもり ~斎藤家3代の群像劇~
輝子の父・紀一の明治から、息子・北杜夫(斎藤宗吉そうきち)の昭和まで、斎藤家3代を描く壮大な群像劇。北杜夫の自伝小説・『にれの人びと』でも描かれた「斎藤家の“愉快な”人びと」が次々と登場、令和の視点から新たな物語をオリジナルで紡ぐ。
◆ 精神科医・斎藤茂吉 ~「心の病」と向き合う~
紀一が開業したのは、精神科の草分けとなる病院。茂吉は、歌人としてだけでなく精神科医としても様々さまざまに葛藤する。また息子の北杜夫も精神科医となり、自らも双極症(双極性障害)を患う。同じ「精神科医」を選んだ親子3代のドラマを通し、現代にも通ずる「心の病」と向き合う。
◆ 斎藤家のルーツ ~山形・蔵王~
茂吉と紀一は同じ山形の金瓶村(現・上山市)出身。蔵王の雪深い田舎町で少年時代を過ごした茂吉は、上京してからも生涯山形弁を貫く。疎開先には風光めいな最上川河畔を選び、多くの歌を残した。斎藤家のルーツである山形の魅力を随所に描いていく。


【物語】
東京・青山にある大病院の令嬢、テル子(河合優実)。
病院の跡取りに選ばれ、婿養子としてやってきた山形の神童、モ吉。
理想の夫婦の誕生と思いきや、これが悲劇の始まりだった―。

1895(明治28)年。病院を経営するもりいちの家に女児、テル子が生まれます。紀一は、テル子の婿候補として全国から書生を集め、競わせようと計画。その1人が、山形県金瓶村のモ吉少年(15)でした。中学生のモ吉は、級友の勧めで文学に目覚め、歌人を志します。
その後、東京帝国大学医科大学に進んだモ吉は、紀一のお眼鏡にかない、テル子の婿養子として入籍します。この時、モ吉は23歳、テル子はなんと9歳でした。
やがて病院の一角で、新婚生活を始めた2人でしたが、テル子は一切の家事をせず、女中たちにすべてを任せ、長男が誕生しても育児は乳母に任せっきり。見兼ねたモ吉はたびたびテル子を叱責、日々繰り広げられる夫婦げんが、病院中の名物となっていきます。
以降も、テル子とモ吉は、関東大震災や、病院の大火事、東京大空襲など激動の人生をともにしますが、一向に気が合うことはありません……。
「全くソリの合わない夫婦は、なぜ離婚に至らず40年以上も連れ添ったのか――」
戦時中ですらお互い決して歩み寄らず、我が道を行く男女の本音のぶつけ合いは、みっともないを通り越して爽快でりゅういんが下がるでしょう。そしてお茶の間の心を解きほぐし、ストレス社会を生き抜くヒントがそこに隠されている……はず?
家族のため、夫のためではなく、ただ自分のために生きることが、図らずも周囲を明るく、元気にする……こともある? という現代人へのメッセージでもあります。


タイトルの由来

「ほんのキモチ……」、と思ったら「ほんのモキチ……」?!
家庭で絶大な存在感を示すテル子(河合)に対し、大黒柱で偉人でもあるモ吉は、どこか「ほんの」小さな立場に見えてしまう存在。そんな夫婦の物語であることと、「キモチ(心)」の健康をテーマにしたドラマであることも重ねた、2つの意味をかけたタイトルとなっている。


【制作統括・板垣麻衣子チーフ・プロデューサーのコメント】

ほんのキモチ、見た人の心が明るくなるといいな。ほんのキモチ、日本の朝が楽しくなるといいな。そんなことを思いながら、これまで連続テレビ小説を制作してきました。
そして、このたび、「ほんのモキチ」です。
常に第一線で活躍されている宮藤官九郎さんに15年ぶりに連続テレビ小説を書いていただけること、大変光栄でうれしく思っています。笑いにあふれた明るいタッチの宮藤さんの作風は朝のドラマにとてもマッチしていると思い、オファーしました。
そして、ヒロイン・テル子を演じていただくのは、並外れた演技力を持つ河合優実さん。モデルの斎藤輝子さんは、エネルギーに満ち、自分を貫く強さがあり、まわりを振り回すこともあるけれどなんだか憎めない、そんな不思議な魅力をもった人物です。その多面的な役柄を演じられる人は? と想像した時に、河合さんしか思い浮かびませんでした。河合さんと一緒に新しいヒロイン像に挑戦するのがとても楽しみです。
日々辛いことがあっても、テル子を見ると笑っちゃう。そんなドラマを、キモチを込めて、お届けします。


2028年度前期 連続テレビ小説「ほんのモキチ」

2028年春 放送予定
毎週月曜~土曜 総合 午前8:00~8:15ほか
NHK ONEでの配信予定あり(ステラnetを離れます)

作:宮藤官九郎
出演:河合優実
制作統括:板垣麻衣子、訓覇圭
プロデューサー:村田有里
演出:井上剛、津田温子 ほか
制作体制:NHKとNHKエンタープライズによる共同制作