NHKが新進気鋭の脚本家とともに、オリジナルドラマを創作する取り組み「脚本開発会」。
数多くの企画の中から珠玉の1本を選出し、特集ドラマとして映像化するシリーズです。
今年お届けするのは、サスペンスフルなヒューマンドラマ「ある小説家の日記」。このたび、3月8日(日)午後11時から放送することが発表されました。
物語の中心にあるのは、ヒットメーカーのミステリー作家が死後残した“日記”。この日記をめぐって、ふたりの女性が秘密の行為へと踏み出していきます――。本来“日記”は個人の秘められたもの。しかし、今、SNSなどで日常の思いや出来事を他人に共有する「日記界わい」と呼ばれる文化が広がり、いまでは誰もが閲覧できる“パブリックな表現”へと変貌しています。
主人公は、念願かなってヒットメーカーを担当するはずだった女性編集者。そのチャンスを失った時、踏み込んではいけない領域へ足を踏み入れてしまいます。作家が残した日記の存在を妻から教わり、その妻の長年の思いを知って、日記をより魅力的に磨き上げて出版しようと持ちかけます。そうして妻は、夫が密かに胸の内を明かしていたAIと対話を始めます。
主演の夏帆さんをはじめ、発表された出演者のみなさんからコメントが届きました。
それぞれの役柄とともにご紹介します。
【あらすじ】
大ヒットミステリー作家・芹澤環(板尾創路)が階段から転落し、突然この世を去った衝撃のニュースから1年。新作で担当編集者にようやくなれるはずだった江藤恵(夏帆)は、芹澤の未発表の原稿があると妻・真理子(シルビア・グラブ)から聞き、自宅を訪ねる。そこで彼女が見つけたのは、芹澤の残した「日記」だった。突然事故で死んでしまった芹澤の生前の思いが残る宝を見つけ、後ろめたい思いとともに高揚感を抱く江藤。読んでいくうちに、書かれている内容は本物らしいのに、どこか自分の知る「芹澤環」とは違うように思える。「これは、だれが書いた
のか」。
一方真理子は、芹澤の死後、彼が自身の悩みを生成AIにだけ打ち明けていたことを知る。芹澤の残した日記にAIとの対話から受け取れる要素を創作として書き足し、江藤に見せていたのだ。
「人生の大事な1ページはいつですか? あなたにとってそれが今なら、私は喜んで新作を書く」と言っていた芹澤の言葉に無意識に呪縛され続けていた江藤。この日記をきっかけに、「人生のチャンスに間に合いたい」と欲望が膨らむ。江藤は真理子に、事故死の直前までの芹澤の日記を構築することを提案する。だが、数々の名作を生み出したヒットメーカーの心のうちを知りたいと思う人間は、この2人だけではなかった。
編集者としての自分にしがみつきたい江藤。亡き夫の本心に近づきたい真理子。2人の欲望が生んだ過ちは、予想もしなかったカオスを生み出していく――。
編集者・江藤恵役/夏帆

出版社「灯文舎」の中堅編集者で、編集部に残留できるかの瀬戸際に立っている。
1年前、大ヒット小説家・芹澤環の小説執筆にようやくこぎ着けたが、直後に彼が事故死。あきらめきれない中、芹澤環の私生活をつづった日記の存在を知り、編集者としては一線を越えた行動に出ていく。
【夏帆さんのコメント】
演出の平さんと脚本家の上原さんが温めてきたこの企画が選ばれ、映像化することになりました。おふたりともこのドラマがデビュー戦です。創作に熱意のある現場で、脚本を読んで感じた不思議な手触りが、どのように映像化されてるのかとても楽しみです。
あらすじを一読しても、どんな作品か見当もつかないかもしれませんが、このドラマにしか味わえない体験が詰まっていると思います。ぜひ楽しんでいただけたら嬉しいです。
小説家の妻・芹澤真理子役/シルビア・グラブ

芹澤環の妻。草花に詳しく、ガーデニングが趣味。亡き夫が生前に書いたという日記を江藤に読ませる。
触れたくても触れられなかった夫への思いと、彼が頼りにしていた生成AIとの出会いに駆り立てられ、江藤の驚くべき提案を受け入れる。
【シルビア・グラブさんのコメント】
撮影中は夏帆さんとAIと、とても濃密な時間を過ごさせていただきました。
現代にあり得るこのAIとの関係性、まだあまり描かれていないこの世界観、演じながらとても興味深いと思いました。
みんなで愛情を込めて育てたこの作品が皆様に届くのが楽しみです。
小説家・芹澤環役/板尾創路

熱狂的なファンをもつ人気ミステリー作家。江藤の「灯文舎」での小説執筆を約束していたが、1年前に階段から転落死した。江藤に残した究極の一言が、彼女を呪縛することになる。
【板尾創路さんのコメント】
芹澤環を演じました板尾創路です。1年間かけて本作の準備をしたスタッフの皆さんに報えるようにとの思いでドラマに参加させていただきました。このドラマは小説家・芹澤環に登場人物全員が思いを馳せる物語です。しかし芹澤環の場面は冒頭のシーンに集約されていて、存在感を出すにはどうすればいいか悩みました。今も完成を見るまで不安と楽しみでモヤモヤしてます。衣装、メイク、小道具すべてに神経を使って頂き現場の皆様に感謝しております。
視聴者の心に残るドラマになればいいなと思います。
編集長・林大輔役/松尾諭

江藤の上司にあたる編集部長。部としての売り上げ目標を考える中で、結果を残せていない江藤に異動の話を持ちかけ、そのことが彼女の運命を大きく変えていく。
【松尾諭さんのコメント】
少し前までは、AIはどこか空想の世界の話のように語られる存在でしたが、今ではすぐそばにある身近なものになっています。かつてSFとして楽しんでいた物語が、現実の延長のように感じられる時代になってきました。
「ある小説家の日記」は、そんな変化をそのまま映し出しているようなドラマです。撮影中に感じた空想と現実の間でふわふわと浮いているような感覚は他ではあまり味わえないものでした。出来上がりをまだ観ていないので、3月8日にテレビで観るのが楽しみです。
編集部アシスタント・新木翔役/林裕太

「灯文舎」文芸編集部のアルバイト。サボりがちな現代っ子だが、芹澤環の大ファンであり、創作には深いリスペクトを抱いているという、意外な一面も持ち合わせている。
【林裕太さんのコメント】
新木役を演じさせていただく林裕太です。
描かれたものの中に描いた人の輪郭は存在するのか、そばにいる人のことを僕は理解していると言えるのか、台本を読んで、そんなことを最初に考えました。
人を理解するとは何か、思索しながら新木という役に向き合っていけたらと思います。
自分と他者について迫る作品に、素敵なキャストの皆さん、スタッフの皆さんと一緒に挑んでいけるのが楽しみです。
【脚本・上原哲也さんのコメント】
書きながら、これは言葉に翻弄された者たちの話だと気づきました。
タイトルにある「日記」は、私にとって書くことの原点です。自分が書いたはずの言葉が、読み返すと他人のもののように響く。言葉にはもともと、そういう借り物めいたところがあるように思います。
この物語を生きる人たちは、生活に追われながらも何かに間に合おうと、二度と会えない人を
たどろうと、言葉に救いを求めます。その切実さの行方をどうか見届けてください。
【プロフィール】
うえはら・てつや
神奈川県藤沢市出身。
東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻(脚本領域)修了。坂元裕二氏に師事。
第50回創作ラジオドラマ大賞受賞。本作がテレビドラマ初脚本となる。
【音楽・髙位妃楊子さんのコメント】
AIの怖さに切り込むこの作品を前に、私自身も創作に伴う「怖さ」を抱えながら制作に向き合
いました。今や奇妙さもなく人の表現に綺麗に紛れ込み、時には自分でも辿り着けなかった言
葉を代弁してしまうAI。自身の楽曲を模倣させる試みも重ねながら、新しい時代における音楽
の価値とは何か、そして「共感」や「人間らしいいい曲」とは何なのかを問い続けています。
【プロフィール】
たかい・ひよこ
作曲家、アレンジャー、ピアニスト、キーボーディスト。
1993年東京都生まれ、東京藝術大学音楽学部作曲科卒。
代表作:映画『岬の兄妹』(’19)、『さがす』(’22)、『雨の中の慾情』(’24)、連続ドラマW 東野圭吾「さまよう刃」(’21/WOWOW)など。自身のアルバムでは作詞、デザイン、mixまで全て手掛ける。
その他、舞台・ダンス・CM・歌ものの楽曲提供やピアノアレンジなど、ジャンルを問わず活動。
シリアスで繊細な作品に携わる一方、アコースティックの質感とエレクトロニクスを融合させたポップなサウンドを生み出している。
【演出・平竣輔ディレクターのコメント】
「1つの日記をめぐる物語をやりませんか」
上原さんにそう熱く語られたあの日から、気づけば1年半以上が経ちました。
夜な夜な企画について語り合い、好き放題に言葉を投げ、そのすべてを受け止め、形にしてくれた上原さんには感謝しかありません。
そうして生まれた物語は、すばらしいキャスト・スタッフの皆さんとの対話を重ねる中で、2人だけではたどり着けなかった場所まで羽ばたいてくれました。
創作の難しさに何度も立ち止まり、それでも創ることの喜びを感じながら、出来上がったドラマです。誰かの日記を、そっとのぞくような時間を楽しんでもらえたらうれしいです。
特集ドラマ「ある小説家の日記」
3月8日(日) 総合 午後11:00~11:50
※NHK ONEでの同時・見逃し配信予定(ステラnetを離れます)
作:上原哲也
音楽:髙位妃楊子
出演:夏帆、シルビア・グラブ、松尾諭、林裕太、板尾創路 ほか
演出:平竣輔
制作統括:家冨未央