NHKが公開している「メディア・リテラシー×探究学習」のための体験型WEB教材「メリ探」をご存じでしょうか? どなたでも使える無料の教材です。
https://www.nhk.or.jp/info/pr/ml/quest/ (※ステラnetを離れます)

対象は小学校高学年~高校生を想定しています。クリックして進んでいくだけで、メディア・リテラシーに関する基本的な知識に触れることができます。
そのまま先生方が「授業で教材として使えるかな?」という視点で活用していただくこともできますし、宿題など子どもたちの“自学自習”にも利用できます。(もちろん無料です)


NHKでは先生が授業などでお使いいただくときのポイントをお伝えする「メリ探活用先生セミナー」をオンラインで開催しています(サイトのトップページの右上にある「先生向けのセミナーはこちら!」というボタンからお申込みいただけます)。(※ステラnetを離れます)

NHK財団ではこのセミナーの運営をお手伝いしています。
先日、初めて行われたセミナーでは、筆者のNHK財団アナウンサー・阿部陽子が講師を担当しました。その様子をご紹介します。


メディア・リテラシーとは何か? なぜ今必要なのか?

1回目は5月25日(月)に行われました。
オンライン上には北は福島から南は鹿児島まで、お忙しいスケジュールの中20人余りの先生方がご参加くださいました。中には「運動会の練習のあと」とおっしゃる方も。お疲れのところ本当にありがとうございます。

実は今、学校現場では子どもたちにメディアとの関わり方をどう教えるか、が大きなテーマになっているそうです。
次期学習指導要領には情報活用能力(メディア・リテラシー関連)の項目が盛り込まれる見込みで、小学校の総合的な学習の時間には「情報の領域(仮称)」が、中学校では「情報・技術科(仮称)」が設けられる方向です。

もう1つ、教育現場では今、子どもたちが自らテーマを見つけて調べ、発表する「調べ学習」「探究学習」が必須になっていて、その時にネットを使って調べる場面も多いということでした。小学生の頃から情報を適切に受け取り発信する力が必要なんですね。

セミナーではメディア・リテラシーとは何か、を以下のように定義してみました。

ネット上にはフェイク情報や“怖いこと”が多いから情報自体に触れさせないようにしよう、ということではなく、メディアの意味と特性を理解して、情報を読み解く力を身につけて、行動できるようになる……それを目標に掲げています。


 “情報の受け取り方はひとによって違っている”と気づく 授業でみんなで考えるメリット

セミナー参加者とのやりとりは、チャットの書き込みとZoomの「リアクション」ボタンで行いました。参加者のみなさんからハートマークや拍手をたくさんいただいて、講師としてはとても心強く感じました。

セミナーでは、メリ探のストーリーに沿って、ご参加の先生たちにも考えていただき、答えをチャットに書き込んでもらいます。
ネットで見つけてきた情報の出どころを確認することの重要性や、“AIによるまとめ”についての注意点、フェイク画像に気づくための調べ方、さらには情報の送り手側になったときに気をつけることは何か、などを順に考えていきます。

下の写真は実際にメリ探に掲載されている設問です。
大雨の被害について発表する時、あなたならどの写真を使いますか?

お気づきのように、ABCの3枚は、1番右のDの写真から切り取られたものです。切り取り方によって印象が変わりますね。そのDの写真だって、もっと広い場所から見ればほんの一部にすぎません。
このように、メディアを介した情報は発信者の意図によって必ず切り取られている、ということに気づいてもらいます。

どの写真が適切なのか、答えはありません。あなたが選んで発信したら、そのまま情報として流れていく……それがネットメディアなのです。
そして最も重要なことは、

▼同じ情報でもひとによって受け取り方が違うこと

に気づいてもらうことです。 自習でも学べるメリ探を授業で取り上げるメリットはそこにあります。セミナーでは授業の中で子どもたち同士で話し合ってもらうテーマなどについてもお伝えしました。

配信の様子

この中で繰り返しお伝えしたのは「答えはありません」ということです。
先生から「それでもやはり『より良い答え』はあるのでは?」という書き込みがチャットにありました。そうですよね。“教える”立場だったらそこは知りたいでしょう。でも、正解はないのです。

情報を読み解く難しさはここにあります。
こんな風に見てもらいたい、という “送り手の意図”もそれぞれですし、その情報を目にしたときの“受け手の感じ方”もそれぞれ。
クラスメイトと話しながら、そのことに気づいてもらうことが重要なのです。


セミナーの最後には、いまネットの世界で起きている「フィルターバブル」や「エコーチェンバー」、そして「アテンション・エコノミー」といった、さまざまな事象についてもご紹介しました。「どうしてこんなひどい投稿がこんなにも拡散されてしまうの?」「なぜ私が当たり前だと思うことをこの人は知らないの?」という疑問にも少しはお答えできたと思います。

参加者からは「内容がわかりやすく授業での活用方法も説明されていて助かりました」「“メリ探”を通じて何を伝えたいのかよく理解できました」「これまでも教材はありましたが、活用のかたがわからないといった先生が多かったのではないかと思います。実体験として良さを感じました」などのご感想をいただきました。子どもたちに“情報との接し方”を伝える先生方のお役に“少しは立てたかな?” と初回を終えてほっとしています。


“人類総メディア時代”を生きる子どもたち、そして私たち

だれでも発信者になれる、そしてだれでも受け取ることができる、そうした時代になりました。とても便利になった一方、その情報空間が心地よいものになるのか、危険なものになるのかは、日々、私たち自身に問われているように感じます。
この「メリ探」を教材の1つとして是非使ってみてください。日々情報にさらされる子どもたちがメディア・リテラシーを考えるきっかけになれたらうれしいです。
そして“みんなに心地よい”情報空間が未来に広がってほしいと思いました。

メリ探活用先生セミナーはこれからもオンラインで開催する予定です。
詳しい予定などはこちらをご覧ください (※ステラnetを離れます)
セミナーは学校の先生が対象ですが、それ以外の方はご相談ください。

(文 NHK財団 阿部陽子)