ハーブの香りを魔法のように操り、驚くほど美味おいしい料理を生み出してきた北村光世さん、86歳。

ハーブ料理研究家・北村光世さん(86)

出版した本は25冊以上、NHK「きょうの料理」のレジェンド講師で、食卓の気取らない食材が全く違った味わいに変わると、熱烈なファンを増やしてきました。「自分自身についてテレビで話すのは初めて」だそうですが、その半生は実にらん万丈、何より好奇心を大切に道を切りひらいてきたことがわかりました。

夫に先立たれて21年、「おばあちゃんと呼ばれると老けそうで嫌」と、アメリカに住む孫にイタリア語で「ノンナ(おばあちゃん)さん」と呼んでもらっている光世さん。魔法の香りを持つハーブの庭を世話し、新たな料理を考え、1人暮らしの日々を心豊かに生きる様子を5か月間撮影、シンプルな食材をごそうに変えるハーブの魅力と、ノンナさんの元気の秘密をお届けします。


◆魔法のハーブ料理

ハーブの花寿司

ノンナさんの真骨頂は、普段使いの身近な食材をハーブの香りであっと驚く料理に変えてしまうこと。すし飯に砂糖を入れなくても、トッピングした食べられるハーブの風味で優しい甘みが生まれ、見た目にも鮮やかな1品になる「ハーブの花寿司ずし」。オリーブオイルでカリっと焼き、フェンネルなどのハーブやアンチョビと一緒に海苔のりで巻くとお餅の新たな味わいに出会える「ハーブのいそ焼き」など、番組内でも手軽に作れる美味しいハーブ料理が登場!


◆86歳 元気の秘密

ノンナさんの元気の秘密は「食事」と「体を動かすこと」。ハーブの庭はおよそ30坪。子どもと同じで手を出しすぎるのは良くないと、「ほったらかし」を信条に気楽に世話しています。さらに、オンラインの気功のクラスを週に数回受講し、筋力も抜群。今も全国に出向いて料理教室を開いています。


◆波瀾万丈 好奇心に導かれた半生

アメリカ留学時代の北村光世さん

北村光世さんは1939(昭和14)年、京都市生まれ。とにかく好奇心旺盛で、映画で見たアメリカに憧れ、まだ女性では珍しかった留学を決意。19歳の時に貨物船で2週間かけて渡米しました。言葉と共に困ったのは食事。塩・胡椒こしょうにケチャップと、同じような味付けばかりで飽きてしまったそう。

ディルが入ったきゅうりのピクルス

そんな時に出会ったのが、ディルというハーブが入ったピクルスでした。その香りに魅せられ帰国。
青山学院大学のスペイン語講師となった後もハーブを独学で学び、結婚して家を建てた時に、夫と二人三脚でハーブの庭を造りました。大学では教授にまで昇進しますが、定年を待たずに退職し、ハーブ料理と食文化の研究者へ。好きなことをとことん追求する姿勢が、半生を貫いています。


◆喜びも悲しみも ハーブと共に

北村家には忘れられない記憶があります。一人息子のひろしさんが結婚したのは2004年。ハーブの花が美しく咲く5月でした。光世さんは披露宴を自宅で開き、庭のハーブを使った料理で盛大にもてなしました。しかし、そこに夫・崇郎さんの姿はありませんでした。末期ガンを患い、病院を出られなかったのです。亡くなったのはそれからわずかひと月後。光世さんは庭のハーブの祭壇に供えて見送りました。それから21年。ノンナさんは今日も新しいハーブ料理の考案に夢中です。


「ノンナさんの魔法の庭 ~北村光世 ハーブと生きる~」

9月15日(月・祝)Eテレ 午後7:00~7:59

出演:北村光世(ハーブ料理研究家)
語り:上田早苗アナウンサー

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