12月3日、東野圭吾スペシャルドラマ「雪煙チェイス」の会見が行われ、W主演の細田佳央太、ムロツヨシ、演出の一色隆司、プロデューサーの加地源一郎が登壇した。
3年がかりで制作、スキー場をリアリティに描く
東野圭吾さんの同名長編サスペンス小説が原作で、「白銀ジャック」(テレビ朝日系)、映画『疾風ロンド』に続く“雪山シリーズ”の実写化3作目となる。本作の舞台は日本最大級のスキー場で、殺人事件の容疑をかけられた大学生とその友人が、事件当日のアリバイを証明するために奔走。秘密裏に現場に送り込まれた所轄刑事と繰り広げる、サスペンスエンターテインメントだ。
約3年かけて制作され、今年2〜3月に野沢温泉村(長野)などで撮影が行われた。プロデューサーの加地源一郎は、雪山に丁寧に向き合ったことで映像が撮影できたと語った。
加地 氷点下-10℃とか、吹雪の日もありましたが、キャストのみなさんやスタッフ一同に、冬の雪山に向き合ってもらいました。東野先生がスノーボードをされる方で、小説でもスキー場や村の人たち、スノーボーダーなどのことを丁寧に描かれていらっしゃったので、そこを大切に、リアリティを持って描きました。
キャストの方にはクランクイン前からスノーボードを練習していただき、現地のスノーボーダーの方々にもご協力いただけたので、迫力ある映像になっています。
演出の一色隆司は、W主演の2人の演技を絶賛した。
一色 完成まで3年がかりでやっていたんですけど、何がすごいって、やっぱりこの2人。ムロさんのふざけた、いやコミカルな芝居もシリアスな場面も、緩急の芝居を見せてくださって、さすがムロさんだなと思って現場で楽しんでおりました。
それを真正面から受けてくれた細田くん。繊細でエネルギッシュで、それでいて今風の若者を等身大で見事に演じ切ってくれました。豪華なキャストが集まって、仲間(由紀恵)さんや吉田(鋼太郎)さんなど、もういろんな猛獣が出ているんですけど、この猛獣を細田くんが真正面から受けて、必死になって切りつけて、異業種格闘技みたいな現場になっておりましたけども、ものの見事におふたりの力で1つの作品にまとめ上げることができたと思います。
ムロ ふざけた、って本音出てるじゃないですか!
そして、細田とムロが作品への思いを語った。
細田 天候や環境がすごく大変だったのですが、ムロさんをはじめとするキャスト、スタッフのみなさまが本当に明るくて温かく、誰1人欠けることなく最後まで走りきった映像はすごくきれいでした。
自分の芝居を観ると落胆することが多いんですけど、この作品を観た時はくすっと笑ってしまいました。自分が関わらせていただいた中で、肩の力を抜いて観られる作品は初めてで、そんな作品をお正月にお届けできることがすごく嬉しく思っています。
ムロにとって、ロケ地の湯沢温泉村は、2016年公開の映画『疾風ロンド』での撮影でも滞在しており、思い出深い場所。当時は今ほどの知名度がなかったムロだが、現地の人たちは温かく迎え入れてくれ、飲食店やスキー場関係者との交流は今も続くという。
ムロ 東野圭吾さん原作の作品は、私にとっては2作品目になりますが、まずは東野圭吾さんの世界に役者として入り込めたこと。まずこれが嬉しくて、本当に光栄でした。野沢温泉村で撮影をしたのですが、実は、野沢温泉と私、ズブズブの関係でして。その関係をフルに使いまして、撮影以外の時間も野沢温泉村でお酒を飲んだり、美味しいものを食べたりして楽しい時間を過ごすことができました。
細田 なんなら初日から、ズブズブ発動していました。僕と醍醐(虎汰朗)くんと恒松(祐里)さんをジンギスカンの店に連れて行ってくださって、そのあと、スナックとカフェにも行き、一緒にズブズブしていました。僕は2〜3週間滞在していたのですが、そのカフェには入り浸っていました。
撮影後半に前田(公輝)さんが現場入りしたのですが、ムロさんから教えていただいたズブズブを、あたかも自分が知っていたかのようにして、前田さんたちを連れて行きました(笑)。

若い世代、ベテラン勢、そのパイプ役となるムロツヨシ
ムロは本作の見どころについて、3つのポイントを挙げた。
ムロ この作品は、細田くんをはじめとする20代の若い世代が登場する逃走劇で、コミカルな部分もありますが、真相を追求するサスペンスでもあります。若いからこそできるお芝居が前面に出ていて、そこがドラマの一番の良さかなと思っています。
二番目の魅力は、仲間さんをはじめ、吉田さんや八嶋(智人)さんたち先輩方が重しとなっていること。彼らが暴れることによって真相から遠のいてしまったりすることもあって、そこに面白さがあります。先輩だからこそできる、かっこいいのらりくらりだったり、変な人たちだったり、地位を求めてしまう大人たちを演じていただきました。
三番目はですね、その世代間に挟まったムロツヨシさんがですね、非常にいいパイプ役となり、しっかりとした受け身のお芝居と言いますか、苦悩しながらも演じる姿が素晴らしい(笑)。
本作では、細田演じる大学生の脇坂が、アリバイを立証してくれる女性スノーボーダーを見つけ出すべく、日本最大級のスキー場に向かう。そのため、随所で雪煙を巻き上げる、迫力あるスノーボードのシーンが展開される。細田は、雪山での撮影は苦労の連続だったと話す。
細田 天候については、我々人間ではどうすることもできないので大変でした。でもその分、晴れた時に撮れる雪山は本当にきれいでした。
スノボシーンの大変さもありました。僕自身、スノボにちゃんと乗ったのが2回目で、野沢温泉村に入る前も、入った後も練習した中で、スノボの楽しさを知ることができました。東野先生が、スノボのシーンをとにかくちゃんとしてほしい、と圧がかかっていたらしいのですが、先生にもご満足いただけたという話を聞いて、ちょっと安心しました。
スノボのシーンは吹き替えなしだったかどうかを確認された細田。
細田 全部吹き替えなしって書いてください! お願いします! でも、9割吹き替えでした。さすがに短時間では無理でした(笑)。

ムロも、雪山で脇坂を走って追いかけるシーンは大変だったと語った。
ムロ 見た目以上にきつかったのは、雪がフカフカのところを走って、脇坂を追いかけるシーン。監督はカットをかけない。異常にカットがかかんないものだから、逃げる逃げる、追う追う! 体力の差もありますからね。非常にきつかった。でも、その時は快晴で、素敵なシーンになっています。
座長としての後ろ姿や演技の引き出しの多さを間近で観た
細田はムロとの共演にあたり、ムロの演技の引き出しの多さや、座長としての素晴らしさを間近で感じたという。
細田 ムロさんがいるから常に現場が明るいんです。僕はまだまだ未熟で、主演らしいことは何もできなかった中、ムロさんがそこを引き受けてくださり、座長としての後ろ姿を間近で勉強させていただきました。実際お芝居で絡むのは後半部分ですが、引き出しの多さと、シーンの雰囲気に合わせて、ご自身のやりたいことを押し引きする姿を間近で見させていただいて、すごく勉強になりました。
ムロは、細田たち若い世代の俳優陣の魅力を引き出すことにやりがいを感じたと語った。
ムロ どんな世代の役者さんとも会話ができることは日々目標にしておりまして、細田さんとは大河ドラマ「どうする家康」以来の共演でしたが、彼の落ち着きぶりは本当に素晴らしいと思いました。引き出すというよりは、若い彼らから教わり、彼らが少しでも輝くことにやりがいを感じさせてもらえた、と思っています。
ムロにとっては2作目となる東野圭吾作品には、俳優としてどのような魅力を感じているのだろうか?
ムロ 1つの事件から真相までたどり着く道のりですかね。東野圭吾さんの作品には、他の方にはない展開力や構成力があると思います。映像化した時、セリフのやり取りから少しずつ何かが紐解かれていくんです。今回は刑事役でしたし、1つ1つの言葉から、クエスチョンマークをアンサーに持っていくというのは、非常にやりがいがありましたね。
難しいのは、(台本を読んでいる)僕達は答えを知って演じているわけで、小さい正解が一つずつ分かって真相に近づいていくという距離感を出すのは、演じていて難しいと感じました。
細田 雪山3部作は、東野さんご自身の愛情がより強い作品だと思うので、プレッシャーはすごくありました。役の話で言うと、自分よりも他の人を優先しすぎる脇坂のような若い子が今、どれくらいいるのかとなった時に、そこに対して雑念や裏の感情が入ると、それが嘘っぽくなってしまうのではないか、というところがあり難しかったです。
また、笑えるところが多く、その中心で振り回される役なので、真剣さとのバランスもすごく難しく、丁寧に作らなくては、ということを感じながら演じました。
細田は脇坂の真っ直ぐな優しさを引き出すにあたって、彼の友人・波川(醍醐虎汰朗)の存在が大きかったと話した。
細田 波川と脇坂の関係は、たぶん僕と醍醐くんとの関係がどれだけ深くなるかでだいぶ変わるだろう、ということは最初の本読みの時から感じていました。そんな中、醍醐くんの方から距離を近づけてくれたんです。
雪山に行く前も行った後もふたりの時間が多くて救われたし、ふたりの距離感が役を通して出ていたのではないかと思っています。

ベテラン勢の自由奔放な演技が楽しみ!
本作では、小杉が所属する三鷹北署の大和田課長役・吉田鋼太郎、小杉の直属の上司に当たる南原係長役・八嶋智人、元アルペンスキー選手で、居酒屋と旅館のおかみである川端由希子役・仲間由紀恵など、そうそうたる豪華キャストの演技も見どころの一つだ。
ムロ 仲間さんと初めてお仕事をご一緒させていただいたのですが、お芝居しながら「お〜、仲間由紀恵だ!」って思ってました(笑)。僕が演じる小杉がスキー場で出会うのが仲間さん演じるおかみさんなのですが、ちっちゃいハートマークがあるようにも取れる演出をしていただいたので、そこも見どころの一つになっています。仲間さんも寄り添ってくれて、「あの仲間由紀恵が!」とすごく嬉しかったです。
細田 僕の出演シーンではないのですが、三鷹北署の捜査本部での撮影にお邪魔させていただきました。吉田さんは朝ドラ「あんぱん」で共演させていただいたので、ご挨拶に行ったんです。みなさんが暴れて、いくら経ってもカットがかからないんです。演じるたびに毎回変わるし、ベテランのみなさまの自由奔放さが面白くて……。編集で使われなかったことは残念でしたが、すごく楽しみながら見学させていただきました。
ムロ 吉田さんとは長い付き合いになるのですが、非常に自由にやっていて、責任というものを家に置いてきたな、と思いました。お正月にぴったりの作品になっています。

本作は新年早々の1月2、3日に放送されるということもあり、来年の抱負について聞かれたふたり。
細田 出演した作品が1月はじめから世の中に出るなんてことは滅多にないと思っていますし、「雪煙チェイス」から始まって、みなさんに届けたい作品がたくさんありますので、体調を崩さないように、怪我をしないようにして頑張っていきたいと思っています。
ムロ この時期って、1年で一番家にいる数日間だと思うんです。そんな時に僕たちのお芝居をお届けできるのは嬉しいことでありまして、ぜひ、ご家族、仲のいい友人たち、彼女、彼氏と見ていただきたいなと思っています。
ただ、今のところ、年末の紅白の話が来ておりません。大河ドラマも来ておりません! 来年50歳になるのですが、5年後の大河の発表ができればいいなと思っております。誰からもお願いされていませんが、目標にするのは自由ですからね。
5年後の大河の主演、頑張ります。激動の縄文から弥生へ、主演・ムロツヨシ。まだ日本語をしゃべっていない時代なので字幕です。ぜひ楽しみにしていてください!(笑)
東野圭吾スペシャルドラマ「雪煙チェイス」(前編・後編 2夜連続放送)
2026年1月2日(金)・3日(土)総合/BSP4K 午後10:00~11:13
※NHK ONEでの同時・見逃し配信予定
【あらすじ】
大学生の脇坂竜実(細田佳央太)は、身に覚えのない強盗殺人の容疑をかけられていた。被害者は、竜実がアルバイトで通っていた一軒家の主人(平泉成)。竜実には犯行時刻に、殺害現場から遠く離れた新月高原スキー場にいたというアリバイがあった。しかし、スキー場には1人で行っていたためにアリバイを証明してくれる人物はいない。証人の心当たりは、スキー場で出会った女性スノーボーダーだけだが、素性も名前さえもわからず、手がかりは、「明日以降、里沢温泉スキー場で滑る」という言葉だけだった。
竜実が友人で法学部に通う波川(醍醐虎汰朗)に相談すると、「このまま警察に連行されると無実の罪で捕まるかもしれない」と助言を受ける。竜実は、謎の女性ボーダーに自分のアリバイを証言してもらおうと、波川とともに里沢温泉スキー場へ向かい、彼女の捜索を開始する。彼らは、スキー場のパトロール隊員(前田公輝)や関係者たちの協力を得つつ、少しずつアリバイの証人に近づいていくのだが……
そのころ東京では、警察庁本部と所轄署との特別捜査本部が開設されていた。所轄の刑事・小杉(ムロツヨシ)は、竜実が里沢温泉スキー場に向かったという情報をつかむ。すると、“本庁を出し抜き所轄で手柄を取りたい”と考える上司(吉田鋼太郎・八嶋智人)から、里沢温泉スキー場で竜実たちの極秘捜査をするよう命じられてしまう。刑事であるということを隠して、部下の白井(恒松祐里)とたった2人でスキー場に向かった小杉は、偶然知り合った元スキー選手の居酒屋のおかみ(仲間由紀恵)の協力を得て、竜実たちの捜索を開始する。一方、警視庁本部(高橋ひとみ・白洲迅)も竜実たちの行方をつかみつつあった。広大な雪山を舞台にした“チェイス”の火ぶたが切られるのだった。
原作:東野圭吾『雪煙チェイス』
脚本:森ハヤシ
音楽:大間々昂
出演:細田佳央太、ムロツヨシ、醍醐虎汰朗、恒松祐里、前田公輝、武田玲奈、白洲迅、中山優馬、小林涼子、高田夏帆、吉田健悟、なえなの、丈太郎、六平直政、山下容莉枝、伊藤修子、高野正成/平泉成、高橋ひとみ/八嶋智人、吉田鋼太郎、仲間由紀恵 ほか
制作統括:木次谷良助(東映東京撮影所)、高橋練(NHKエンタープライズ)、磯智明(NHK)
プロデューサー:加地源一郎(NHKエンタープライズ)、吉崎秀一(東映東京撮影所)
演出:一色隆司、船谷純矢(NHKエンタープライズ)