プレミアムドラマ「対決」の会見が行われ、出演者の松本若菜、鈴木保奈美、演出の池田千尋、制作統括の黒沢淳が登壇し、作品への思いについて語った。


性別間、世代間、組織の中での上下など、いろんな意味での「対決」がある

本作は、月村了衛の同名小説が原作。シングルマザーで新聞記者の主人公・檜葉ひばきく(松本若菜)が、ある医大で入試の採点過程において“女子の点数が意図的に下げられている”という疑惑を耳にし、核心に迫る姿を描いた社会派ドラマだ。今回、松本はNHKドラマ初主演。鈴木は菊乃とたいする医大理事・かんばやしはるを演じる。
制作統括の黒沢は、原作を読み終わったときから、「松本と鈴木のふたりに演じてもらいたい!」と思ったという。

黒沢 この「対決」というドラマは、月村先生の原作をもとにしています。すばらしい原作で、読了した瞬間から、説得力を持ってお芝居されるこのおふたりに演じてほしいと強く思っておりました。第1回はあまり“対決”という意識はないのですが、第2回からはすさまじいです。毎回対決シーンは、宮本武蔵と佐々木小次郎を超える迫力で、リアリティがあって応えのあるものになっています。ふたりの対立と同時に、理不尽な世の中や、自分自身に対する戦いなどもテーマに含んでおりますので、ぜひご覧いただければと思います。

松本と鈴木はあいさつも兼ねて、第1回の感想を述べた。

松本 私自身、このような骨太なドラマで主演を務めるのは初めてだったので、第1回を客観的に観なきゃと思ったんですけど、こんなにも物語に入り込んでしまうのか、というほど不思議な経験をしました。これからご覧になるみなさんは、最初は私が演じる菊乃の目線で観ていくことになると思いますが、話が進むごとに、いろんな視点で観られるドラマになっていると思います。

何が正しくて何が間違っているか、だけでなく、みなさんに感じ取ってもらって、考えてもらえることが、このドラマを作ろうとした思いにつながると思います。第1回から観ていただきたいです。

鈴木 私は第1回を観て、“池田監督風味”がすばらしく出ていて、いい意味でびっくりしました。第2回以降はまだなので、これからどんなふうにつながっていくのか、非常に楽しみです。

「対決」というシンプルなタイトルですが、性別間、世代間、組織の中での上下など、いろんな意味での「対決」が含まれています。正義とは何か、正しさとは誰のものなのかを常に突きつけられている撮影期間でした。ただ、それは苦しいことではなくて、その時間をこのチームで駆け抜けられたことが自分の糧になっています。

また、ふたりはこの作品に出演できたよろこびを語った。

松本 最初にお話をいただいた時に、黒沢さんからとても温かいお言葉をいただき、私もその気持ちにぜひ応えたいと思いました。難しい題材ではありましたが、立場によって見えてくる景色も違ってきますし、この作品に関わったことで、人間として、1人の女性として、何か変われるきっかけになるかもしれないことを思わせてくれる作品でした。

鈴木 お話をいただいたのと同時に原作を読んで、こうした内容を映像にしようとしている方々がいることに、温かさとパッションを感じました。晴海という役は、私がこれまで演じたことのないタイプの役で、声をかけていただけたことがうれしく、ぜひ演じたいと思いました。

さらに松本さんも以前からとても好きな方でしたし、その後、発表された他の役のキャスティングもあまりにもすごくて! 他の俳優さんたちも注目されていて、このチームに参加できるのは本当に幸せなことだと思いました。


白黒はっきりつけたいタイプ?

本作では、何が正しいのか、誰が正しいのか、などと問われる局面がいくつもあることから、松本さんと鈴木さんに対して、「白黒はっきりつけたいタイプか?」という質問が飛び出した。

松本 私はどちらかというと白黒つけたいタイプです。でも、そこに至るまではしっかり話し合いをしていきたいです。私が演じる菊乃もどちらかというと白黒つけたいタイプですが、白黒をつけたら、それでみんなが幸せになるのか、と言ったらそうじゃないと思うんですよね。そういったことを教えてもらえた作品だったので、今は、時と場合によってはグレーがあってもいいんじゃないか、と思っています。

鈴木 一言でどちらか、というふうにはちょっと申し上げられないんですが、白黒つけなくても、いろんな段階のグレーがあるよね、と。ピンクや黄色もあるじゃないっていうような時代になっています。でも、白黒つけたい人が間違っているわけではないとも思います。私は白黒つけたい、僕はつけたくないということを、誰にもものじすることなく、気を遣うことなく表明できることこそ、目指すところではないかなと思います。


コミュニケーションが取りやすく、楽しい現場

出演のふたりは、池田監督が常にそばに寄り添い、時には一緒に悩みながらどう演じるかを考えてくれたと語った。

鈴木 池田監督は非常に機動力があって、一箇所にとどまらずに常に近くにいてくださったのが心強かったです。質問でもなんでも言いやすい雰囲気を作ってくれましたし、ちょっとしたことでも一生懸命考えてくださるので、非常にコミュニケーションが取りやすく、楽しい現場でした。

松本 私もそうでした。セリフや行動に少しでも違和感があったら、それを池田監督も感じ取ってくれてヒントをくださったり、一緒に悩んでくださったり、そういった時間は、私にとってはすごく幸せな時間でした。

それを聞いた池田は、ふたりをはじめとした俳優陣の演技を目の当たりにして、いつもより「ステージが上がった気がした」と語った。

池田 松本さん、鈴木さんとは以前からご一緒したいと思っていました。さらに、多くのすばらしい俳優のみなさんと向き合えたことは、私にとって一段上のステージに立ったような経験でした。正しさを押しつける作品にはしないと決め、セリフや人物の迷いについて何度も話し合いながら、菊乃と晴海が常に考え続ける感覚を大切に見つめていました。


ふたりの対決は、ラウンド3まである!

菊乃はシングルマザーの新聞記者で、晴海は医大事務局に就職し、事務畑から異例の抜擢ばってきで理事になったという役どころ。どのように役作りをしたかについて質問を受けた。

松本 菊乃は新聞記者として、自分が思う理不尽なことを社会にどうやって伝えていくかという、使命にも似た熱い思いを持っている女性だと思います。話数が進んでいくにつれて、いろんな人との出会いや事柄と触れ合う中で、自分の弱さを再確認したり、理不尽なことに立ち向かっていく自分が不安になったり、短い間に感情が揺れ動いたりもします。そんな中でも、“ステレオタイプな記者にはならないようにしましょう”という話は池田監督としていました。人間味あふれる女性でありたいと私も思っていたので、そういうところを意識して演じていました。

鈴木 原作を読んだ時に、晴海はポーカーフェイスで、クールで、自分の信念に一直線にバーっと向かっていく人なので、菊乃さんにあれこれ探られても、バッサバッサと切っていくような、割と強いタイプの女性を想像しました。でも、監督と話しているうちに、自分のやっていることに常に迷い、悩んでいて、自問自答をずっと続けている人というふうにイメージが変わっていきました。撮影中に晴海はその都度つど探し物をしている女性という感じに結果的になりました。監督がオッケーと言ってくださったので、それでよかったと今は思っています。

さらに、「対決シーンは楽しかった」という鈴木。

鈴木 ふたりの長い対決シーンは大きく3つあり、ラウンド3まであって、攻守交代もありました。「お、若菜ちゃんそうですか。でしたら私は……」みたいな、ある種楽しい、松本対鈴木みたいな感じもあり、ただ、それは対立しあっているわけでもなくて。「なるほど、そう来るのか」と、楽しかったです。
自分が思い描いていた表現と相手の表現が全く違ったりすると、そこで新たに生まれてくるものもあります。そこに監督がスパイスを加えてくださって、それが化学反応を起こし、こんなふうになるんだ、と実感しました。

真相を探ろうとする新聞記者と、なんとか追求をかわそうとする大学理事という、立場的には明確に“対立”しあうふたりだが、物語が進むにつれ、お互いが信念を持っていることを感じ取ったからか、一目を置くようになっていく。そんな絶妙な距離感を演じるにあたって、どのようなことを大切にしたのだろうか。

鈴木 撮影に入る前に監督と、対立し合っていたふたりがいろいろ戦って最後は握手をした、みたいなわかりやすい収まり方ではないですよね、そうはしたくないですよね、といったお話はしていました。晴海的には一件落着するわけでなく、ここから先、どんどんやることが増えて、ハードルが上がっていくだろうなという想像をしていたので、菊乃とはバディみたいな感じでもなく、ある種の距離感があったのだろうと思っています。

松本 菊乃と晴海が最後に、「また会おうね」ということは決してないと思いました。私もまだ第2回以降は観ていませんが、台本から全く変わっていると思います。お芝居を超えて、松本若菜としてすごく胸を打つ部分がたくさんありましたし、監督からいただいたパワーもきっと映像に映っているはずです。


【あらすじ】
私たちは戦う、私たちであるために――

ある医大が入試の採点過程で女子の点数を意図的に下げている。衝撃的な「うわさ」を耳にした新聞記者の檜葉菊乃(松本若菜)は、独自の調査を始め、医大の理事である神林晴海(鈴木保奈美)に目をつける。巧みに追及をかわす神林だが、突破口はそこしかないと考え、檜葉は粘り強く核心へと迫っていく。男性優位の社会で、無数の理不尽に直面してきた2人。それぞれの信念がぶつかり合い、敵対せざるをえない彼女たちの闘いの行方は、予想もしない展開を迎える――


プレミアムドラマ「対決」(全5話)

4月5日(日)スタート
毎週日曜 NHK BS/BSP4K 午後10:00~10:45

原作:月村了衛
脚本:渡邉真子
音楽:小山絵里奈
主題歌:「ひと匙」ヒグチアイ
出演:松本若菜、豊嶋花、大倉孝二、大原櫻子、山中崇、前野朋哉、濱尾ノリタカ
/石坂浩二・渡辺いっけい、高畑淳子、鈴木保奈美 ほか
演出:池田千尋、小菅規照
制作統括:黒沢淳(テレパック)、熊野律時(NHK)

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