スマートフォンで視聴する映像コンテンツが主流となる中、展示や教育の現場ではその個人視聴体験を大画面で共有し、みんなで楽しめる方法が求められています。
こうした背景から生まれたのが、「ミラーリング機能(※1)付き湾曲3面モニタ」です。
タブレットやスマートフォンの画面をそのまま大型の湾曲モニタに映し出し、没入感のある映像体験を実現する本システム。
現在はNHK財団・用賀オフィスのエントランスに設置され、来訪者が実際にその没入感を味わうことができます。
どのような発想と技術によって形になったのか、技術事業センター・システム技術部の関職員に話を聞きました。
※1 タブレットやスマートフォンの画面をそのまま外部のモニタに映し出す機能
「ひとりで見る」から「みんなで感じる」へ、視聴スタイルの変化が生んだ発想
――今回の開発は、どのような背景から始まったのでしょうか?
わたしたちの社会生活では、スマートフォンは“ひとりで見るもの”になっていて、展示会場や教育の場のように、複数人で同じ映像を共有視聴する体験との間にギャップがありました。
一方で、来訪者への展示用途だけに限らず、学びの場においても、映像を「体験として理解する」ことの重要性が高まっています。
そうした中で、個人の視聴と共有視聴をどうつなぐか、さらにそれを直感的に体験できる形にすることが、今回の取り組みの出発点になりました。
――確かに、日常の視聴スタイルがそのまま展示や教育の場にはつながりにくい印象がありますね。
そうなのです。だからこそ、普段、みなさんが使っているスマートフォンの画面をそのまま共有できる形にすることを大切にしました。
新しい操作を覚えるのではなく、日常の体感をそのまま広げることで、展示や教育の場でも直感的に使える仕組みにしたいと考えました。

空間として感じる。スマホ体験を変える“3面×湾曲”の力
――このモニタの特徴について教えてください。
画面のサイズは、約97インチ、3K×2K解像度の湾曲3面モニタによって、映像が視野全体に広がるような構成にしています。
しかも単に画面を大きくするのではなく、視野を包み込むように配置することで、画面を見るというより“空間として感じる”体験を目指しました。

違和感ゼロを目指せ、多面ミラーリングの見えない壁に挑む
――技術的に難しかった点はどこでしょうか?
複数のモニタに同時に映像を表示する中で、操作したときだけでなく、見ているときの違和感をいかに無くすかが大きな課題でした。
物理的には分割された画面で構成されているため、多少の表示性能の違いや画面の境界が見えるのは避けられませんが、それが不自然に感じられないようにすることが重要でした。
そのため、3面の境界部を配慮して映像を表示することや、極端な曲面形状にしないなど、全体として自然に感じられる見え方になるように設計しています。
――操作するときの遅延なども影響しそうですね。
はい、少しの遅延でも操作感に影響が出てしまうため、レスポンスの良さは特に重視しました。
触ったときに意図した通りに反応することが、そのまま体感の自然さに繋がるため、操作の遅延時間を体感ではほとんど感じないように調整し、快適に操作できるようにしています。
説明はいらない、触ればわかる直感操作に込めた設計思想
――操作性についても工夫されたのでしょうか。
普段のスマートフォン操作をそのまま生かせるように、特別な操作を意識せず使えることを大事にしました。
例えば、スマートフォンを縦向きにしたら縦の画面、横にしたら横の画面に自動で切り替わります。このように日常の使用環境の延長として自然に扱えるような、直感的な体験を重視しています。
――使ってみると、特別な説明がなくても直感的に操作できますね。
その点は非常にこだわった部分で、体験として違和感なく操作が成立することが確認できました。

“記事の先”にあるリアル体験、用賀オフィスで広がる映像空間
――このシステムは実際に一般の皆さんも体感できるのでしょうか。
はい、NHK財団・用賀オフィスのエントランスに設置されており、来訪された方が実際に体感していただけます。
また、システムとして、スマホやタブレットの画面映像だけではなく、パソコンの映像などもお楽しみいただけます。
――記事で読むだけでなく、体感できるのは魅力的ですね。
開発者としては、ぜひ現地で体感していただけたらうれしいです。
特別なものを、当たり前に誰もが使える没入ディスプレイへ
――今後の展望について教えてください。
今後は、より簡単に扱える形に発展させていくとともに、展示や教育だけでなくさまざまな現場で活用できるようにしていきたいと考えています。

読むから“触れる”へ、新たな視聴体験の一歩を用賀で
スマートフォンという個人のデバイスを起点に生まれた新しい共有体験。対角約97インチの湾曲3面モニタと3K×2Kの高精細表示により、これまでにない没入感を提供します。
現在、このシステムはNHK財団・用賀オフィスのエントランスに設置されています。ぜひ現地で、その臨場感を実際に味わってみてください。
(文 NHK財団 技術事業センター 石井 啓二)
■ 展示場所
NHK財団 用賀オフィス
毎週(月)~(金) 9:30~18:00
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