NHK放送技術研究所(技研)では、5月28日(木)~5月31日(日)の期間、最新の研究成果を一般に公開する「技研公開2026」を開催します。このイベントは、技研の研究成果を広く社会に紹介し、視聴者の理解と支持を得るために、毎年実施されているものです。79回目を迎える今年は、「ひらく、支える、これからも」をテーマとして、16項目の研究成果が分かりやすく展示されるほか、体験展示や、オープンイノベーション、環境経営に関する展示なども行われます。その中から、NHK財団の展示ブース(展示番号N6)のみどころをご紹介します。

技研公開2026「拓く、支える、これからも」
開催期間:5月28日(木)~5月31日(日)
会場:NHK放送技術研究所 (東京都世田谷区砧)
入場:無料
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/strl/open2026/index.html ※ステラnetを離れます

NHK財団のブース

実用化研究の展開

NHK財団では、NHKから受託した実用化研究の成果に放送外利用を目的とした技術開発を加え、高度化・多様化するニーズに応えて、社会貢献につながる取り組みを進めています。ここでは、実際のサービスや業務利用を想定して開発が進められている技術をいくつか紹介します。研究成果がどのように社会に届いていくのか、その具体像を感じられる展示です。

少ない音声データでも任意の声質や話し方を再現できるカスタムボイス音声合成技術や、AI音声認識を活用した多言語対応のリアルタイム字幕生成・講演字幕表示など、アクセシビリティの向上を支える技術を体験できます。これらは、音声合成や音声認識といった基盤技術の応用により実現したもので、番組制作のほか、教育や国際会議、公共施設での案内など、多様な場面での活用が見込まれます。

実用化研究の展開の展示 (写真は音声合成のデモの様子)

さらに、映像と音声が連動する「8K切り出し視聴技術」は、高精細な8K映像の一部を自由にズームした際に、音の聞こえ方が連動する仕組みを取り入れています。例えば、視点を左に動かすと左にある楽器の音が大きくなって聞こえるなど、臨場感を伴った再現が可能となります。このようなインタラクティブな視聴は、従来の視聴体験の付加価値を高め、将来の新しいコンテンツ視聴の形態にもつながります。


複数種類の3次元ディスプレーに対応したダウンロード型3次元映像コンテンツ

3次元映像コンテンツを、複数種類のディスプレーで共通的に利用するための基盤技術の検討を進めています。3次元ディスプレーは、装置ごとに奥行き再現範囲や視差表現の方式が異なり、同じコンテンツでも最適な表示には個別の調整が必要でした。

本展示では、コンテンツのデータと表示(レンダリング)処理を分離し、ディスプレーの固有情報に応じて最適に描画する構成としています。サーバー側から配布される3次元映像データを、各3次元ディスプレーの特性に合わせて描画することで、3次元ディスプレーの仕様による制約を緩和することが可能となり、多様な表示方式に柔軟に対応できる仕組みです。

また、視点追従型ライトフィールド表示などにも対応しており、見る位置に応じて自然に変化する奥行き表現を実現します。視点移動に追随した映像提示は、より現実に近いリアルな映像体験を生み出します。

こうした技術は、将来の3次元映像配信において、デバイスに依存しない形で広くコンテンツを流通させる仕組みとして重要です。

展示会場に用意した3次元映像コンテンツの「とび出す!トリケラトプス」では、トリケラトプスの骨格モデルの立体感を楽しんでいただけます。

複数種類の3次元ディスプレーに対応したダウンロード型
3次元映像コンテンツの展示の様子
 
「とび出す!トリケラトプス」の3次元映像の表示例

カメラ周動型バーチャルプロダクションシステム

ボリュメトリック映像と実写映像を組み合わせるバーチャルプロダクション技術として、カメラワークの自由度を高めたシステムを展示します。開発したシステムでは、円軌道でのカメラ移動を実現することで、被写体の周囲を滑らかに回り込む撮影が可能となり、これまでにない立体的な映像表現を生み出します。

この動作は非接触型磁気リニアセンサーによって高精度に制御されており、安定した動きと再現性を確保しています。さらに、グラフィクスエンジンUnityを用いたリアルタイム合成により、全天周映像を背景として組み合わせることで、限られた空間でも広がりのある映像演出が可能になります。スタジオの制約を超えた表現が実現できる点も、大きな特徴です。

また、取得した3次元データは、静物の高精度モデル生成にも活用できます。文化財の記録保存や展示など、映像制作以外の分野への応用も期待できます。

カメラ周動型バーチャルプロダクションシステムの本体は直径5.1m、高さ3mありますが、展示会場では1/12サイズのミニチュアモデルをご用意しました。ご来場のみなさまもこのミニチュアモデルを動かして、カメラの可動範囲をわかりやすくご覧いただくことができます。

カメラ周動型バーチャルプロダクションシステムの展示の様子
カメラ周動型バーチャルプロダクションシステムのミニチュアモデル

NHK保有技術の周知あっせん活動

NHKの研究開発成果を社会へ広く普及させるための取り組みとして、特許・ノウハウの技術移転を紹介します。NHK財団では、単なるライセンス提供にとどまらず、企業とのマッチングや技術説明、用途検討なども展開しており、研究成果を実際の製品やサービスへとつなげる活動を行っています。

知財マッチング会や展示会への出展では、企業との対話機会を通じて、提供する技術の特性と企業ニーズをすり合わせることで、技術の適用先を広げます。こうした取り組みにより、放送分野以外にもさまざまな分野への展開が見込まれます。

NHK保有技術の周知あっせん活動の展示の様子

このほか技研公開2026では、NHK放送博物館に収蔵されている貴重な放送機器の中から「放送技術の基盤となったさまざまな真空管」を展示しています。

また、土日にはファミリー向けのイベントも予定しています。ぜひ会場にて、さまざまな最新技術をご体感ください!

(NHK財団 技術事業本部 大久保洋幸)