来年1月6日(火)よりスタートするドラマ10「テミスの不確かな法廷」。12月12日に会見が行われ、主演の安堂清春を演じる松山ケンイチ、安堂の上司・門倉茂役の遠藤憲一、弁護士・⼩野崎乃亜役の鳴海唯、制作統括の神林伸太郎が登壇した。


原作は新聞記者の直島翔さんが描く異色のリーガルミステリー『テミスの不確かな法廷』。発達障害を抱えながら裁判官(特例判事補)の仕事と向き合う・安堂清春(松山ケンイチ)と、安堂と出会い、正義と現実の狭間はざまで揺れ動く弁護士・⼩野崎乃亜(鳴海唯)、前橋地方裁判所第一支部の部長判事であり、安堂の上司・門倉茂(遠藤憲一)ほか、法廷を舞台に普通とは何か、正義とは何かを問いかけていく物語。脚本は「イチケイのカラス」シリーズ、 「ブルーモーメント」、「絶対零度」シリーズなど、緻密な構成とダイナミックな展開で見る者をひきつけてきたヒットメーカー・浜田秀哉が務める。


発達障害の有無に関係なく、誰もが悩みを抱えている

まずは、制作統括の神林から原作の魅力、本作への思いが語られた。

神林 発達障害を描いたドラマはこれまでもありましたが、多くの作品は周囲がそれを理解している設定で、その上でどう社会に向き合うかというストーリーです。
しかしこの作品は、カミングアウトしないまま社会と向き合っていくというもの。発達障害の特性をもつ人に限らず、周囲に言えない悩みや息苦しさを抱えているすべての人たちへ、ひとつのメッセージになるのではないかと映像化を決めました。
ドラマ「テミスの不確かな法廷」は自閉スペクトラム症(ASD)と注意欠如多動症(ADHD)という特性をもつ安堂清春が、その特性を隠して悩みながら成長していく姿を描くものです。そして、周囲の人々も彼の影響を受けながら物語が展開していきます。
本作を観て前向きな気持ちになったり、悩みを持っている人に対して想像力を働かせるきっかけになれば、と思っています。

発達障害という難しい役どころを演じる松山は、クランクイン前にグループケアの現場を訪ねたと明かした。

松山 安堂清春を演じるにあたり、発達障害の方たちが過ごすグループケアの現場へ伺い、実際にそういう特性をもつ方々からいろんな話を聞かせていただきました。
そこではたとえば、自分が苦手なことをどう克服していくか、というテーマをみんなで議論します。みなさん、表情がすごくイキイキしていて、自分のことをわかってくれる同士で包み隠さず話し、それを優しい目線で返してくれる。そこに否定や批判はなく、温かい場所でした。

一方で、それは特性の有無に関係ないと感じる部分もあったと話す。

松山 社会の中にいると周りのスピード感やテンポに合わせながら必死に生きなければなりません。それは、特性があろうとなかろうと誰もが同じ。安心できる場所と、戦いながら走る場所、その2つを上手うまく表現できたら、と現場を見て感じました。

そして、役作りのためにスタッフとともに作成した「安堂ノート」の存在があることを初披露。

松山 実は、共演者は誰も知らないノートがあるんです。特性を正しく表現するために、安堂のルールや考える道筋をまとめて、監督やカメラマンなど全スタッフで共有しています。服装はなぜそれなのか、仕草しぐさや苦手なこと、好きなものは何かなど、細かく書かれています。
たとえばあるシーンでは、安堂のその行動は特性ゆえのものなのか、正義感から生まれるものなのか、ということを細かく議論します。ただし、安堂ノートのまま演じてしまうとロボットのようになってしまうので、段取り(リハーサル)をしながら生まれるものも大事にしています。


全員が「いっぱいいっぱい」の珍しい現場

会見では、出演者が3人とも「台本が難しい!」と現場の苦労を口にした。

松山 台本はすごく面白いんですが、セリフも含めてリアルな法の定義を大切にしている作品。現場には監修の方も常にいらっしゃって、僕たちは難しい言葉をしゃべり続けているような印象です。
法律用語についてはイントネーションもわからず、実際に東京地裁で傍聴もさせていただき勉強しました。鳴海さんは、セリフが一番多くて大変だよね?

鳴海 そうですね、でも全員がいっぱいいっぱいですよね(笑)。弁護士役は初めてなので緊張しながら撮影していますが、ベテランの先輩方に甘えさせていただきながら頑張っています。

遠藤 僕は役者生活42年になりますが、難しいことを覚えるのが苦手で法廷ものはずっと断ってきました。でも原作を読ませていただいたらすごく面白くて、マネージャーでもある女房の「推し」もあり、今回、初めて判事役をやらせていただくことになりました。今もまだ撮影中ですが、ギブアップ寸前で撮っている状態です。

みんなが「いっぱいいっぱい」なので、現場に一体感が生まれていると撮影秘話も。

鳴海 毎日、誰かがなが台詞ぜりふを言っている現場なので、みなさん「今日は松山さんが大変な日だな」「今日は遠藤さんだな」と理解していて「頑張ってくださいね」と声を掛け合うのが日常になっています。だからなのか、チームワークがすごくいい現場です。

遠藤 いや本当に、その言葉に救われてます。最近「いっぱいいっぱい」っていい言葉だな、と感じますよ。みんな必死だよね(笑)


丁寧さから生まれる見応え

本作はドラマ10「そらわたる教室」(2024年)の制作チームが手がける。「熱量の高い現場」と、評した松山は、演じる側の楽しさや苦労も語った。

松山 「宙わたる教室」はすごく好きな作品だったので、今回の撮影が楽しみでした。いざ現場に入ってみると、たとえばカメラワークがすごく丁寧で、カメラマンは「どこを切り取るべきか」ということをギリギリまで探っていたり。カメラ打ち合わせの後にはそれにのっとって撮影していくんですが、その後も撮影部が「この画を撮りたい」と監督とずっと打ち合わせしながら撮っています。俳優の表現を撮りきりたい、という思いをすごく感じます。

鳴海 私も感動するほど熱量を感じます。限られた時間の中で、監督とセッションする時間をとっていただけるのは、とてもありがたい現場です。

一方、遠藤は「もう1回とテイクを重ねるのが苦手」と申し訳なさそうに言いつつ、丁寧さの意味がわかったと話した。

遠藤 僕は自分がNG出すくせに、NGじゃないときに「もう1回」って言われるのが苦手なんだよね。でも松山くん、絶対に文句言わないの。丁寧さの意味をちゃんと捉えてるんですね。

松山 俳優側のNGと、技術部のNGってどっちかがベストなときに出ちゃったりするじゃないですか。僕らはその瞬間にピークを持っていくんだけど、「もう1回」と言われたときに「今の演技、もう2度とできないな」と思うことあるんですよ。でも自分の中で、まだ理解できていないことを探すんです。だから撮り直しはチャンスだと思っています。

「テミスの不確かな法廷」放送スタートは1月6日(火)。社会を必死で生きる全ての人へ。サスペンスとミステリーと人間の温かさの掛け合わせで、心が揺さぶられるはずだ。


ドラマ10「テミスの不確かな法廷」(全8回)

2026年1月6日(火)放送スタート
毎週火曜 総合 午後10:00〜10:45
毎週金曜 総合 午前0:35〜1:20 ※木曜深夜(再放送)

NHK ONEでの同時・見逃し配信予定(ステラnetを離れます)

【あらすじ】
任官7年目の裁判官・安堂清春(松山ケンイチ)。東京から前橋地方裁判所第一支部へと異動してきた彼は、一見、穏やかな裁判官に見える。だが、その内側には絶対に打ち明けられない秘密が……。
幼い頃、衝動性や落ち着きのなさからASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如多動症)と診断された安堂。以来、彼は自らの特性を隠し、“普通”を装って生きてきた。それでも、ふとした言動が前橋地裁第一支部の面々を戸惑わせ、法廷内外で混乱を巻き起こしてしまう。
そんな安堂の元に、複雑な人間模様が絡み合う、難解な事件が舞い込んでくる。市長を襲った青年。親友をこん睡状態に追い込んだ高校生。そして「父は法律に殺された」と訴える娘――。
やがて、安堂の特性からくる“こだわり”が、誰も気づかなかった事件の矛盾をあぶり出す。しかし同時に、彼は自身の衝動とも格闘しながら公判に挑まなければならない。
果たして安堂は、公正に事件を裁き、真実へとたどり着くことができるのか!?

原作:直島翔『テミスの不確かな法廷』
脚本:浜田秀哉
音楽:jizue
出演:松山ケンイチ 鳴海唯、恒松祐里、山崎樹範、山田真歩、葉山奨之、小木茂光、入山法子、市川実日子/小林虎之介(1話ゲスト)/和久井映見、遠藤憲一 ほか
演出:吉川久岳(ランプ)、山下和徳、相良健一、富澤昭文
制作統括:橋立聖史(ランプ)、神林伸太郎(NHKエンタープライズ)、渡辺悟(NHK)

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