幼なじみの小一郎(仲野太賀)と祝言を挙げるため、花嫁衣装を手に中村から小牧へ戻ろうとしていた直。しかし、その途中で村の争いに巻き込まれ、幼い少女を助けようとして命を落とすことになった。衝撃の最期を迎えた直の人生を、演じてきた白石聖はどのように捉えたのか。
父・喜左衛門に「小一郎と生きていく」と伝えたかった

――直は小一郎と夫婦になることを父の坂井喜左衛門(大倉孝二)に知らせるため、故郷の中村へ旅立ちました。その際、小一郎から「いずれは側に呼んで、一緒に暮らせんかの」と言われて、「私すごいなあ。小一郎なら、きっとそう言うと思ってた」という言葉を口にしています。このセリフは何度も出てきますが、今回の直の心境について、白石さんはどのように受け止めましたか?
想像以上に嬉しい言葉を言ってもらえた、と感じました。きっと直の中には“理想の小一郎”像があって、すれ違うことがあってもずっと小一郎を信じ続けてきたと思うんです。だから「一緒に暮らせんかの」という言葉は直がずっと待ち望んでいたものだと受け止めました。
小一郎は、もともと平和主義で、争いごとが起きていても両者が納得するような解決策を編み出すことができる人。そんなところに直は惹かれていて、この人と一緒にいたら平和な世の中が本当に訪れるんじゃないかな、という希望を感じていたと思います。 そんな直の「信じる力」がすごいなと、いつも私は演じながら思わされました。
――父親とは、和解に至るまでに一騒動ありました。喜左衛門は、小一郎、藤吉郎(池松壮亮)の兄弟とも因縁があって……。
そうなんですよ。お父さんは小一郎に対しても圧が強めだし、藤吉郎さんには仏画盗み騒動や直のお母さんが家を出てしまったことで「煮え湯を飲まされていた」と思っていたので、それは毛嫌いしますよね(笑)。

――そんな喜左衛門を大倉孝二さんが演じていますが、最後の父と娘のシーンについては?
すごく思い出深いシーンになりました。それまで直は、お父さんとは微妙な距離感というか、身近だからこそ反発してしまう関係性だと感じていました。でも「お前が幸せなら、それでよい」という言葉を、大倉さんの声で聞いたときに「それがお父さんの本心だったんだ!」と思えて、直としてすごく心に響くものがありました。父と娘が抱える気持ちは複雑でありながらも、お互いにすごく大切な存在であることは間違いないですよね。だからこそ直は、「私は小一郎と生きていくんだ」ということを、お父さんにちゃんと伝えたかったんだと思いました。
小一郎についていくことが、直の人生の“賭け”だったのかも
――先ほど、小一郎に希望を感じたと話されましたが、どんなところでそう感じたのでしょうか。
いちばんは、小一郎の笑顔ですね。直はいつも、遊びで何かを賭けるということをしていたのですが、小一郎についていくこと自体が人生の賭け事のようなものだったと思うんです。仲野太賀さんが演じている小一郎を見ていると、ハツラツとした笑顔がすごく魅力的で、そういった笑顔に信頼感というか、ちょっと賭けてみたくなったのではないでしょうか。

――それは撮影現場で仲野さんが演じている小一郎をご覧になって感じたことなのでしょうか?
この時代を生きている女性たちは、大切な人の帰りを信じて祈って待つしかないという状況なので、台本にも「相手を信じる」というキーワードがたくさん登場します。けれど、なぜ直がそこまで小一郎を信じられるのかな? と考えたときに、太賀さんの笑顔を見て「これだな」と感じました。

――そんな「信じる」という気持ちが、一度は揺らぎましたよね。そこは直としては、どういう心情だったのでしょうか?
第7回の「私は中村に帰る」のところですね。あそこは、自分が小一郎の背中を押したのに、侍になったらちゃんと生きて帰ってきてくれるのか、これが最後になるかもしれない、という不安が想像以上に大きくなったのだと思います。
寧々(浜辺美波)さんと一緒のときは「いつもどおりにいたしましょう」と気丈に振る舞っていましたが、実際に小一郎を送り出したら別れが怖い、みたいな。小一郎のことが大切になっていくにしたがって、一方で鬱陶しく思われてしまうんじゃないかな? という感情も湧いてきます。嫌われたくない一心で、それこそ“好き避け”(好意を抱く相手を意識しすぎて、わざとよそよそしい態度をとったり、距離を置こうとしたりすること)じゃないですけど(笑)、直も「いつもの私じゃないな」と思いつつ、言ってしまった言葉が、「私は中村に帰る」なのかなと思います。
――確かに戦国の世で、家を一歩出たら、何が起きるかわからない状況ですね。
常に「もしかしたら、これが最後かもしれない」と思って生きていたのではないでしょうか。この時代を生きてきた人たちは、言葉一つ、行動一つ、すごく大きな意味を持っていたのではないかという気がしているので、そういう「生と死が隣り合わせ」ということはすごく意識しながら演じました。
――とはいえ、それがまさか直の身に起きるとは驚きました。
私も台本を読んだときに、衝撃を受けました。こうなるのか! と。もちろん、生きてほしかったし、直自身も死ぬなんて思ってなかったと思いますが、最期に小さな女の子を守ることができたのであれば、まだ救いがあったのかな……。すごく悲しかったし、まだ自分の中でも整理できてないですね。

――帰らぬ人となった直と対面した小一郎に、もしも言葉をかけられるとしたら、直はどんな言葉を選ぶと思いますか?
難しいですね。でも、まず「ごめん」かな……。それでも直は、小一郎の今後の幸せをいちばんに願っていると思いますし、彼にとって忘れられない存在として生きられた、ということには満足しているかもしれません。
仲野太賀と池松壮亮の仲の良さに微笑ましくなって
――撮影現場でお芝居をしてみて、台本を読んで想像していたのとは少し違う感情が生まれた、というようなシーンはありましたか?
本読みや段取り(リハーサル)をしていく中で思っていたものとは別の感情が本番を迎えたときに生まれる感覚がありました。想像以上の熱量に引っ張ってもらっている、というか……。
――熱気のある現場なんですね。台本を読んでいても、小一郎と藤吉郎のやり取りが楽しいのですが、演じている仲野太賀さんと池松壮亮さんの姿は、白石さんの目にはどのように映っていますか?
おふたりはいつも一緒にいらっしゃるし、仲がいいことが、画面以外からもビシバシ伝わってきます。きのうの撮影でも「カット」の声がかかった瞬間に、太賀さんの肩に池松さんが足をかけて、ふたりでじゃれ合っていて……(笑)。撮影中、台本上は終わっているのに「カット」がかからないことがあるんですけど、そういうときも、おふたりの関係性から生まれるアドリブで埋めてくれます。そういうところは、すごく素敵だなと思います。

――最後に、大河ドラマファンの皆さんにメッセージをお願いします。
私が演じる直は、史実には登場しない、オリジナルのキャラクターですけれど、戦国時代にはこういう人もきっといたと思うんです。歴史に名前が残っていない人たちも必死に人生を生きていたはずだし、そういった部分も含めて、豊臣秀長のストーリーの一つとして楽しんでもらえたら嬉しいです。
「豊臣兄弟!」は、キャラクターの一人一人がすごく魅力的で面白いなと思いますし、ユーモアに満ちた台本で、読んでいても「このセリフ、どういう感じで言うんだろう?」と思わせるような小気味いい展開が、私は大好きです。撮影していても面白いな、楽しいなと思ったシーンがたくさんあったので、ご覧になる方にもきっと楽しんでもらえるだろうな、と思っています。
残念ながら直はこれで退場してしまいますが、私自身も小一郎、豊臣秀長のこれからを見守っていきたいと思っています。ぜひ一緒に応援してください。