戦国時代を代表する名軍師・竹中半兵衛。学問に通じ、知略に長けた美男子だったと伝わる半兵衛は美濃の斎藤龍興(濱田龍臣)に仕えていたが、小一郎(仲野太賀)と藤吉郎(秀吉/池松壮亮)の調略により、織田信長(小栗旬)の家臣となった。これまで数々の映像作品で描かれてきた半兵衛を、「おんな城主 直虎」(2017年)で井伊直政を、「鎌倉殿の13人」(2022年)で源義経を演じた菅田はどのような人物として捉えて演じてきたのか。また、秀吉の天下への道半ばで若くして生涯を閉じることになる半兵衛への思いを聞いた。
仲野太賀がくれたヒントで、半兵衛の人間的な魅力が増した

――第21回では同じ軍師であり、よく比較される黒田官兵衛も登場しました。倉悠貴さんが演じる官兵衛はどのような印象ですか?
倉くんの官兵衛とは、まだ数シーンしか一緒に演じていませんが、対峙して感じるのは、官兵衛が持つ純粋な若さとエネルギー、生きる力、満ちあふれる野心です。それは半兵衛にとって、自分にはないものだからこそ、羨ましくもあり、かっこいい。いくら計算ができて知恵を出せても、やっぱり時間が足りなければ何も意味がないっていうことを、半兵衛は感じているんです。別に官兵衛とは師弟関係なわけでも、自分の遺志を継がすわけでもないのですが、個人的にはそんな思いもあります。半兵衛が去った後、官兵衛はこの兄弟と長く関わっていく存在になるから、「この2人を頼むぞ、倉くん」みたいな気持ちを勝手に抱いているということも共有しながら、相談しつつ演じていました。
――演じる竹中半兵衛については、どのような人物だと捉えていらっしゃいますか?
半兵衛はいろいろな作品で描かれてきた人物ですが、今作は豊臣兄弟のお話なので、このふたりとの出会いがとても重要だと思っています。半兵衛は知略に長けている一方で非力、ずっと頭の中で戦略を巡らせている。先を見通す力があって、遠くへ想像を飛ばすことができる半兵衛に対して、ふたりは目の前のことに全力を注ぐ。だから最初は、そんなふたりの熱量と引力に引き寄せられていく感じを楽しんでいこうと思いました。
あと、これは太賀の提案ですが、半兵衛は「ギーク」(特定の分野で高度な知識や深い興味を持つ人)でいいんじゃないかって。オタク気質で社交性に欠け、模型いじりが好きみたいな、ちょっとクセのある面白さを、ユーモアを交えて演じていけたらと思いました。高橋努さんが演じる蜂須賀正勝とも相性がいいだろうし、兄弟とのギャップもあって会話の流れがより楽しくなるんじゃないかって。「こんなにボケていいんだ」と思えるくらいです(笑)。
――演じられる上で意識されていることはありますか?
姿勢ですね。姿勢が決まれば、自然と動きや声量も変わってくるので。単純に、元気だった頃は背筋をピシッと伸ばしているんだけど、病が進むにつれて、どんどん猫背になっていく。そうすると、動きも小さくなるので、その変化は段階をつけて演じています。
半兵衛は、基本的に相手の目をしっかり見て話すタイプではないと思うので、あまり会話をする気がない雰囲気で演じています。頭のいい人と話していると、こっちが置いていかれる感覚になることがあるじゃないですか。あの感じを表現できたらいいなと思っています。

兄弟が大きい声で言い争っているところが痛快で面白い!
――親交のある仲野太賀さん主演の大河ドラマに出演が決まった時のお気持ちはいかがでしたか?
仲野太賀が大河ドラマで主演を務めると聞いた時、そこに自分もいる景色が自然に想像できていたので、声をかけていただけて嬉しかったです。池松壮亮くんにも本当にお世話になっていて、学校の先輩のような存在。太賀と池松くんの関係性も知っていたので、2人の共演も楽しみでした。
――実際にお2人と演技をされて、改めて感じたことはありましたか?
2人とも声が大きいんですよ、本当に(笑)。それが、このドラマの見どころのひとつでもあるのかなと。半兵衛はもともと静かな男ですし、体調のこともあって声を張れないので、僕の声はかき消されています。元気がいい主人公は過去にもいたと思うのですが、兄弟で言い争っているところが面白い大河ドラマってなかなかないですし、見ていて痛快ですよね。セリフの声量やリズムって相性でもあって、いわばキャッチボール。2人の勢いがみんなの刺激になっていると思います。
――八津弘幸さんの描かれる脚本の印象はいかがですか?
ポップさと余白のバランスがとても絶妙な脚本だと感じています。真正面から描かれていて、ちょっと照れるなという部分もあるのですが、演者が考えて演じる余白も残してくれている。演者のことを信じてくださっている方だなと感じています。
豊臣兄弟と正勝といる時を青春のように謳歌していた

――第9回で、半兵衛は豊臣兄弟の調略によって織田軍にくだったわけですが、半兵衛は織田信長に惹かれたというよりも、豊臣兄弟のふたりに心を動かされたのでしょうか。
そうだと思います。ただ、その過程を描くシーンがないので難しいんですけど。半兵衛の中には自分の病や非力さゆえに、「強いやつと戦って勝ちたい」という野心や孤独があったはずで、それが今後に繋がっていくんだと思っています。
――ただ、そこで完全に心を開いたわけではなく、第14回で小一郎から「わしらをもっと信じてください」と言われて、ようやく半兵衛の気持ちが変わったように感じました。
まさしくその通りだと思います。でも、人間ってそんなに簡単ではないじゃないですか。八津さんが兄弟と半兵衛とのちょっとしたやりとりをたくさん書いてくださっていたので、そこは意識しながら演じました。第14回以降、2人と高橋努さんとも話して、3人のシーンとか、正勝を入れた4人のシーンでは、カットがかかった瞬間に爆笑できるくらいの時間にするように心がけて、少しずつ距離を縮めていくようにしました。

――豊臣兄弟や正勝とのシーンはテンポもよくて、いいチームワークだなと感じるのですが、現場はどんな雰囲気ですか?
努さんも大好きな先輩で、ご一緒できるのが嬉しいです。いろんな提案をしてくださるので、それに僕たちがリアクションするっていうキャッチボールを楽しんでいます。僕の中では、すごく絵が上手いけど友達がいない奴と、クラスの人気者2人と、同級生に見えない髭面のヤンキーが、なぜか仲良くしているイメージがあって。半兵衛が人といる楽しさをちゃんと感じられたらいいのかなって。僕の解釈では、半兵衛は自分の城にいた頃は人との繋がりがなかったような気がするんです。だから、その4人でいる時を青春のように謳歌したんじゃないでしょうか。
――仲野さんや池松さんと共演して、改めて自分の中で引き出されたなと感じる部分はありますか?
引き出されてばっかりです(笑)。半兵衛はポーカーフェイスで描かれることが多いのですが、本番で2人と対峙すると崩れまくるので、それが楽しいです。そういう引力のある2人ですね。
――信長役の小栗旬さんとは、「鎌倉殿の13人」以来の共演です。今回の信長役の印象はいかがですか?
やっぱり迫力がありますよね。どんどん体が大きくなるし、足も速くなっているらしいですけど(笑)。僕たち世代からすると、“ドン”のような存在なので、そのまま信長として対峙できている感覚はあります。あと、小栗さんはすごく人のことをよく見ていらっしゃるんですよね、お芝居も、人の作品も。休憩時間でも、何かが起こっていると、必ずそこに行きますし。1人で楽屋でご飯食べるということも絶対しないんです。現場でも常にみんなの輪の中心にいるし、自然と小栗さんのまわりに人が集まって楽しそうで。だから、人の上に立つ信長役は本当にぴったりだと思います。それでいて、今回は暴力的なシーンも多くて、そこはすごく楽しそうにやってらっしゃいます(笑)。

――世界で戦争が起こっている中で、戦国時代をエンタメだけで描くのは難しいところもあると思うのですが、ご自身の中で思うところはありますか?
現場としては、エンタメにとどまらない要素もきちんと表現しようという動きはあります。死との距離感を間違えてしまうと、リアリティがなくなって全部軽く見えてしまうので、演じにくくもなってしまうんです。
初めてみんなと一緒に戦に行く「姉川の大合戦」のシーンでは、人間としての恐怖を感じるだろうから、絶叫する提案はさせていただきました。本当に人が死ぬし、自分たちも死ぬかもしれない、生きて帰るぞっていう部分は、その後すました顔をしていても、絶対に意識していると思うので。
それに、鎧が物理的に重いから、自然と声も大きくなるし、目も見開く。本気にならざるをえなくなるんです。どのくらい伝わったかはわからないですが、そうした力を借りて現場はつくられています。太賀と池松くんだからこそ、成立している部分も大きく、池松くんも「マンガ的になりすぎないように」と常に意識してくれているので、2人がそういう気持ちでいてくれるからこそだと思いますね。
物語自体は、小一郎と秀吉を中心にさまざまな人物が絡み合う群像劇です。敵が現れ、仲間となり、また裏切りが起こる少年マンガのようなワクワク感もあり、それが2人のキャラクターにすごくフィットしているなと。それに、超人的な秀吉じゃなくて、何も持っていない小一郎が主人公なのも面白いんですよね。今後もふたりの魅力あふれる物語は続きます。そして、半兵衛の山場もこれから出てきますので、楽しみにしていてください。