明治時代に生まれた日本人は今、全都道府県への取材によると、わずか4人。
そのひとり、日本最高齢114歳の賀川滋子さんに取材班はこの夏、4回に渡り、奈良の自宅を訪ねたが、毎回驚きの連続であった。
はるか昔の記憶は明瞭で、話をすることが大好き、iPadでパズルゲームをするなど、新しいことへの挑戦心も持ち合わせている。

語りの中で、とりわけ新鮮で貴重だったのが、戦前の記憶だ。
文明開化の風のなか、初めて洋食を食べた時の違和感、初めて靴をはいた感触、初めてビニール袋を見た驚き。現代では当たり前になった和洋いりまじった衣食住、そのはじまりの瞬間の記憶を、賀川さんは語る。
歴史の教科書には載っていない、小さな歴史、感情の記憶、そこには、なぜ日本社会は今の姿をしているのか、その手がかりがある。

大正デモクラシーの時代、女性の社会進出が進む中、賀川さんは女性医師として活躍。その後、太平洋戦争の渦に巻き込まれていく。
取材班は、激動の時代を生き抜いた女性ならではの波瀾万丈な言葉を期待した。しかし、返ってきたのは、予想とは違い、静かでしかし胸に深く残る言葉であった──。

【プロデューサー・斉藤勇城のコメント】
明治生まれの祖母が亡くなったとき、もっと話を聞いておけばよかったと後悔しました。そんな経験から「明治生まれの方に話をきく」という企画を立ち上げました。ご健在の方は少なく、ディレクターが話を本人から直接聞くことができたのは、賀川滋子さんのみでしたが、強さと優しさ、そしてユーモアを兼ね備えた方で、本当にすばらしいご縁でした。
見る方によっては、歴史の貴重な証言とも映ると思いますし、見る方によっては、人生を生きるヒントと映るかもしれません。最も長い時間を知るひとの語りから、皆様はどんなことを感じるでしょうか?是非多くの方にご覧いただきたいです。
ドキュメント20min.「最後の明治人」
10月19日(日)総合 午後11:45~0:05
10月22日(水)総合 午後11:30~11:50(再放送)※一部地域別番組
NHK公式サイトはこちら ※ステラnetを離れます