クマによる被害が後を絶たない。今年度の死傷者の数は220人以上。亡くなった人も最多だった2023年度(6人)の2倍を超えるなど、統計が始まって以降、過去最悪のペースで推移している。出没は県庁所在地の中心部や家屋の中にまでおよんでおり、これまでにない異常な事態である。

実はこうした人里に現れるクマの生態は、まだほとんど研究が進んでいない。NHKは1年半にわたって自治体や大学と共同で人里周辺のクマを追跡調査。その行動を分析すると変容を遂げつつあるクマの“真の姿”が見えてきた。

今回番組が追跡調査を行ったのは秋田県北部、鹿角市の人里近くに現れた4頭のクマ。装着したGPSやカメラを使ってその行動を追っていくと、研究者も驚くような行動をしていた。見えてきたのは学習能力の高いクマが、人の暮らす場所にどう侵出を始めているのかという実態だ。

最新研究では、環境変化でクマの多産化や長寿命化が指摘される一方、私たち人間社会の側の変容もまた、今の状況を招いてしまっている事が分かってきた。
このほか番組では10月に81歳の女性がクマに襲われて死亡した秋田県の現地を取材。猟師でもある女性の弟は苦悩にさいなまれながら、その捕獲に乗り出す。「クマが怖くて外に出られない」という声は、市街地中心部でも。相次ぐ出没と被害に、国は緊急対策を打ち出した。
私たちはいま、かつてなく人の力が弱く、かつてなく野生動物の力が強い時代に生きている。こうした中で、私たちはクマとどう向き合い、安心できる暮らしをどう取り戻していくのか?その道筋を考える。
NHKスペシャル「独自調査 “クマ異常事態”の真相」
11月30日(日)総合 午後9:00~9:49
※NHK ONEでの同時・見逃し配信予定(ステラnetを離れます)