美食家・陶芸家として知られる北大きたおおさんじん(1883〜1959)の晩年を描いたドラマ「魯山人のかまど」。BSP4Kでは3月6日(金)から、総合では3月31日(火)から放送される。
放送に先立ち、NHKにて完成会見が行われ、主人公・魯山人役の藤竜也、若手記者・田ノ上ヨネ子役の古川琴音、また脚本・演出を手がけた中江裕司が登壇した。その様子を紹介する。

★北大路魯山人とは……大正時代から昭和前期に活躍し、日本食を芸術にまで高めた食と美の巨人。料理人、陶芸家、書道家など多彩な顔を持つ一方、傲慢不遜で傍若無人な性格であったとも言われている。


藤「僕のアドリブは私の体を借りた魯山人がやったことなんです(笑) 」

実は20年ほど前から、趣味で陶芸を続けてきて、魯山人には以前から影響を受けてきたという藤竜也。この役を演じるにあたっては、約40年ぶりにトレードマークのひげるほどの思いの入れようだ。さらに魯山人への思いを次のように語った。

「魯山人は、名声の一方ひどい毒舌家で、人を人とも思わない性格だったと言われています。でも、彼が作った器には不思議なあたたかさがある。また、彼の書も絵も、どれもとても繊細。きっと、本当はあたたかさを求めているくせに、わざと自分を孤独に追い込む癖がある人だったんじゃないかと思います。そんな複雑で才能豊かな人物を演じる不安はありましたが、撮影が始まってからは、北鎌倉の地に残る魯山人の気配に背を押されるように、自然に演じることができました」

今回、主な撮影は、魯山人が晩年を過ごした北鎌倉の家を移築した、しゅんぷうばんそうで行われたのだという。古川もまた「全体をとおして、魯山人に見守られているような気配を感じる撮影でした」と撮影を振り返った。

「割とアドリブが多めだったんですが、あれは私がやったんじゃないんですよ。春風萬里荘に入った瞬間、僕の中に魯山人が入ってきた。だからアドリブも、私の体を借りて魯山人がやったことなんです(笑)」

古川琴音が演じるのは、魯山人の取材をする若手記者・ヨネ子。本作のオリジナルキャラクターで、物語はヨネ子の目線をとおして描かれる。古川自身も、「もともと料理や器は好きなので本作へのオファーには胸が躍った」というが、魯山人については、名前を知っている程度だったと明かす。

古川「ほぼまっさらな状態だったからこそ、撮影をとおして日本の魅力に新しく出会い直すような体験でした。本物の魯山人の住まい、本物の自然。それに、料理監修の野崎洋光さんが作ってくださった、美味おいしい日本食。はじめて触れるようなものばかりでしたが、私もヨネ子にシンクロするように驚いたり感動したりしていたので、楽しんで作品に携わることができました。お芝居を作り込むというよりは、どれだけ自分が素直な状態でいられるか、ということを大切に撮影に臨みました」

また古川は、ヨネ子から見た魯山人は「美しいたいの知れない何か」であったと表現する。

古川「これは、藤さんのお芝居を初めて目の前にした時、私自身に湧いてきた感情と一緒なんです」

魯山人と藤、ヨネ子と古川。それぞれが重なり合うかのような不思議な撮影体験だったようだ。


本物の陶芸作品を使用した緊張感ある現場

吉田茂を演じる柄本明(右)。

ドラマの見どころのひとつが、劇中に登場する陶芸作品の大部分に、魯山人が実際に制作した本物を使用していること。その分、撮影中に思わずヒヤリとする一幕もあったとか。

「私も陶芸をやっているから分かるのですが、作家自身は自分の作品を雑に扱うものなんですよ。恭しく丁寧に扱うのは照れくさいですからね。でも、そんな器も、実際には何百万円単位の作品。スタッフの皆さんは冷や汗をかいたでしょうね」

古川「リハーサルは仮の器を使ってやるのですが、本物の器が運ばれる時は、どのキャストが通る時よりも丁重に扱われていました。みんなが道をあけて器の移動を見守っていて、まるでお殿様が通ったみたい(笑)」

演出を手がけた中江は、「そんな中、藤さんだけがひょいっていう調子で器を持つんです。その絶妙な雑さ加減が素晴すばらしかった」と笑顔で称賛し、会場の笑いを誘った。


サイモン・ペッグさんは正座が強い!?

また、本作には、ハリウッドで活躍するイギリス人俳優のサイモン・ペッグさんも出演する。魯山人の評判を聞きつけて、わざわざ北鎌倉まで訪ねてくる大富豪ロックフェラー3世役だ。そのキャスティングには、制作陣の熱い思いが込められていた。

中江「このドラマを海外の人にも見てもらいたい、という思いでオファーさせていただきました。実際、日本食は今、インバウンドで海外の方々に大人気です。でも、いわゆる寿司、天ぷらだけじゃない、本物の日本食の神髄を、魯山人を通じて知ってもらえたら……。ロックフェラー3世は、まさに魯山人との親交を通じて日本文化に目覚めていった人物です。その意味で、サイモンさんに出てもらえたことは、本当にうれしかったですね」

一方の藤は、撮影時のこんなエピソードを披露。

「情けないことに、私よりサイモンさんのほうが正座、強かったですね。何しろ、撮影のために長時間正座していると、立ち上がるのが大変で……(苦笑)」

また最後に、

「魯山人は、日本の美を愛した人。今回のドラマは、その魯山人の気持ちを中江監督が代弁するようなあたたかなまなしにあふれた作品になっていると思います。ぜひ楽しみにしてください」

と会見を締めくくった。

その後、ややかたい表情の藤に向かってカメラマンが「もう少し笑顔でお願いします」と声をかけると、藤が「魯山人が抜けないもんで」と照れくさそうに微笑ほほえみながら答えるという一幕も。会場は和やかなムードに包まれた。

そんな魯山人への愛を結集させて描かれた「魯山人のかまど」。ぜひお見逃しなく。


【あらすじ】

晩年の魯山人(藤竜也)のもとを、出版社の若手記者・ヨネ子(古川琴音)が訪ねてくる。魯山人の傍若無人な態度に戸惑うヨネ子だが、回顧録を口述筆記するため、たびたび魯山人の住まいを訪ねることになる。吉田茂(柄本明)、イサム・ノグチ(筒井道隆)、ロックフェラー3世(サイモン・ペッグ)……多くの有名人たちとの交流を目の当たりにする中、ヨネ子は、その物言いとは裏腹に、料理を美と捉え、一切の妥協を排し、究めようとする魯山人の姿勢に気づいていく。


特集ドラマ「魯山人のかまど」(全4回)

3月6日(金)放送スタート
毎週金曜 BSP4K 午後8:15〜9:00

3月31日(火)放送スタート
毎週火曜 総合 午後10:00〜10:45

脚本・演出:中江裕司(映画『ナビィの恋』『土を喰らう十二ヵ月』、NHK「ふたりのウルトラマン」ほか)
出演:藤竜也、古川琴音
サイモン・ペッグ、筒井道隆、一青窈、柄本明
中村優子、伊武雅刀、尾美としのり、満島真之介 ほか
制作統括:中村芙美子(東京ビデオセンター)、古田尚麿(NHKエデュケーショナル)、遠藤理史(NHK)
プロデューサー:新井真理子、三浦尚(NHKエデュケーショナル)

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