2024年の能登半島地震から2年。奥能登を舞台にした夜ドラ「ラジオスター」が3月30日にスタートする。能登のとある町に小さなラジオ局が誕生する物語。大阪からボランティアでやってきたひいらぎカナデ(福地桃子)は恩人の松本功介(甲本雅裕)に頼み込まれ、地元に開局した災害FMのラジオパーソナリティーを務めることに。予算もない、スタジオもない、電波もない。あるのは“気持ち”だけ……。

NHK放送センターで行われた会見には、ドラマ初主演の福地桃子と甲本雅裕、常盤貴子、演出の一木正恵が登壇。能登での撮影秘話や作品への思いを語った。


能登で撮影したからこそ生まれた“実感”

ドラマは昨年11月、能登で撮影が行われた。演出の一木は冒頭で「コミュニティが傷つき、人とのつながりが傷ついた中で、なんとかそれを取り戻したいと情熱に燃える人々を描きたい、という思いでこの企画はスタートしました。彼らの熱いエネルギーに尊敬と憧れをもって、チーム一丸となって愛情を込めた作品です」と挨拶した。

俳優陣も、能登での撮影はそれぞれの思いがあったようだ。

福地「私は今回の撮影で初めて能登に足を運びました。撮影の前に、地元の皆さんにお話を伺う機会があり、その時に感じた空気や言葉、感情をドラマに刻んで行きたい、と強く思いました。撮影が始まってからは街を歩く時間もあって、能登の風景は美しいのですが、それだけではない感情が芽生えたのが印象に残っています。地元の皆さんの温かさに触れていくなかで、私が風景を見て感じた思いと前向きなエネルギー、いろいろなことが『ラジオスター』を通して循環していくと確信しました。能登という場所と、その土地の人たちに支えられて完成した作品だと思います」

甲本「僕は能登半島地震の前にも訪れたことがあって、だからこそ、大変なことが起きてしまったんだな、と実感しました。能登で暮らす皆さんと話していると、人は生きている限り笑いに向かっていく。そう言われているような気がしました。このドラマを観終わったときに、みんなが同じ目線で笑いに向かって歩いて行ける、そんな作品になればいいなと思い、撮影中はずっと“笑い”のことしか考えていませんでした」

常盤「私は朝ドラ『まれ』(15年)で能登にご縁をいただいて、それから何度も足を運んでいます。能登に知り合いの方もたくさんできました。撮影隊が能登の町に来たときは、本当に涙が出るほどうれしかったです。被災地は忘れられることがやっぱり不安なんです。でも自分たちの町がドラマの舞台になって、全国の方に観ていただける。それを受け入れてくださった皆さんの輝いた笑顔が今でも忘れられません。地元の方が能登を誇りに思えるように、そして能登にまだ帰れない方々も『帰りたい』と思ってもらえるような作品になったらいいな、と思っています」


「このドラマ、おもしろい!」完成試写を見た3人の手応え

完成試写を見て、作品への手応えを聞かれると「このドラマ、おもしろい!」と3人が自信をのぞかせた。

福地「今の能登の風景やそこで暮らす人の思いが刻まれている作品になっていると思います。視聴者の皆さんに、やわらかい気持ちが届くとうれしいです」

甲本「この年になると羞恥心がなくなってきているのか(堂々と)『おもしろいよね!』と思えました」

常盤「普段は自分が出ている作品を、声を大にして『おもしろいです』って言いづらいのですが、この作品はすごくいいドラマになったと思います。やさしい気持ちになれるし、すっと涙もこぼれる。試写を見て、感動しちゃいました」

今回、ドラマ初主演となる福地と、その共演について聞かれると、温かいエピソードが。

福地「大阪出身のカナデが、自分の知らない土地に飛び込んでいくという、その勇気に私も背中を押されました。カナデが見て、触れて感じた新鮮な感情を自分にも重ねて、そこは大切に。現場では、登場人物がそれぞれカナデと何かしらのシンパシーを感じてくれていて、支えていただいたと思います」

甲本「現場では桃ちゃんの気負いのようなものはあまり感じませんでした。違和感がないくらい“カナデ”だったんですよね。松本の立場から言うと、カナデがいてくれて本当によかった。いつもありがとうという気持ちで撮影をしていました。撮影って、台本の順番で撮るわけじゃないんです。8週目を撮ったあとに4週目を撮ったり。でも、最後のシーンを撮ったときに『道のりをちゃんと一緒に歩いて来たね』と2人で話したんです。バラバラのシーンを撮りながら、ちゃんと歩いた足跡があった。それくらい自然に溶け込んでいたと思います」

常盤「やはり主演の方によって現場の空気感は決まるのですが、桃ちゃんのいる現場はみんな穏やかでしたね。すごくやわらかい現場でした」

ベテラン陣との撮影も楽しかったと話す。

福地「演じられている役だけでなく、普段の皆さんのキャラクターも混ざって出来上がっている感じが、ちゃんと映っていると思います」

演出の一木も「幸せな時間だった」と振り返った。

一木「台本も演出プランもあるのですが、福地さんの空気感もあって『こうしなければならない』という縛りから解放されての撮影でした。現場の空気感とそれまで積み上げてきた時間の中で、どうやってあのセリフが生まれるだろう、どういう動きになるだろうと、つねに鮮度をもって撮影に挑むことができました。どこに向かってしまうかわからない、というくらいに。それは幸せな時間でしたね」

1週目は、ラジオ局開局に向けて、松本が奔走する。その熱い思いに思わず涙してしまう視聴者も多いはずだ。3月30日(月)放送開始の「ラジオスター」をお見逃しなく。


【あらすじ】

主人公・柊カナデ(福地桃子)は、恋人の故郷・能登へ旅行中に地震に遭う。そのとき、避難所で松本功介(甲本雅裕)が温かく世話をしてくれた。
恩に報いたいと、再び能登を訪れたカナデ。そこで松本から頼まれたのは、災害FMのラジオパーソナリティーだった! 松本の思いに巻き込まれ、主婦の小野さくら(常盤貴子)、消防士の西川誠(渋川清彦)、お調子者の青年・多田豊(大八木凱斗)が参加。それを冷ややかに見つめる、銭湯で働く海野リクト(甲斐翔真)。
松本は言う。「下手でいい。でもリスナーを笑わせてください」
目指すは平日お昼の生放送番組! なぜラジオなのか、なぜ「笑い」なのか、分からないまま企画を考え、出演ゲストを探し、奮闘するカナデたち。本音のトークが笑いを呼び、みんなの心を揺さぶっていく。やがて、ラジオメンバーたちもマイクを前に、胸に秘めた思いを語り出す――
※災害FM…臨時災害放送局。災害時に、被災者に向けて必要な情報を届けるための期間限定のラジオ局。東日本大震災では、東北地方を中心に延べ30局が開設された。能登初の災害FMは、2025年7月7日に開局した。


夜ドラ「ラジオスター」(全32回/8週)

3月30日(月)スタート
毎週月曜~木曜 総合 午後10:45~11:00

作:小寺和久
音楽:田渕夏海
主題歌:MISIA「舟いっぱいの幸を」(詞・曲 松任谷由実)
出演:福地桃子、甲本雅裕、渋川清彦、甲斐翔真、大八木凱斗/風間俊介、大野愛実、田村ツトム/常盤貴子 ほか
制作統括:福岡利武
プロデューサー:松木健祐
演出:一木正恵、小野見知、土井祥平、原田氷詩

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