義に厚く、知勇に優れた青年武将である浅井長政は、織田家と同盟を結び、その証しとして信長(小栗旬)の妹・市(宮﨑あおい)を妻に迎える。当初は心を閉ざしていた市も長政の優しさに触れ、3人の娘をもうけて幸せな結婚生活を送るようになるが、越前の朝倉義景(鶴見辰吾)と信長の対立が色濃くなると、長政はどちらにつくのか選択を迫られることに。これまで数々の作品で悲劇の人として描かれてきた浅井長政を、中島歩はどのように演じようと考えているのだろうか。
長政のモチベーションは、市への愛なんだと思います
――第11回で、ようやく長政と市の心が通じ合いましたが、中島さんは長政と市の関係性はどのようなものだったと考えていますか?
浅井長政を演じるにあたっては、市との関係が一番大事だと考えています。彼女を愛して守りたいというところが最大のモチベーションだと思うので、そこをちゃんと意識して演じたいです。
でも、昔から宮﨑あおいさんのファンなので、現場で一緒にいると、なんか冷や汗が出てしまって(笑)。頑張ってお話させていただいていますが、まだまだ緊張しています。僕は、そういう気持ちを脇に置いて演じることができないので、今はまだ、その緊張も受け入れながら芝居をしている感じです。

――現場では、長政と市も、中島さんと宮﨑さんも関係を構築している途中という感じなのですね。
市を前にすると、たまに自分が殿であることを忘れてしまうことがあって(笑)。でも殿としてただ堂々としているだけだと、表現の幅が減ってしまうような気がするんです。この人は何の問題も悩みもないと思われてしまうと、見ている人にとってどうでもいい人物になってしまうのかなと。その匙加減が難しいですが、そこを洗練してストイックに表現するのが、時代劇の芝居なんでしょうね。

――婚礼当初、市は長政に対して心を閉ざしているように感じましたが、長政は最初から優しく寄り添う姿勢が見られました。
そうなんです。特に脚本には書かれていなかったので、僕もどこで長政は市を好きになったんだろうかとすごく考えました。そこを自分の中できちんと組み立てておかないと、鏡を取り出すために火に手を突っ込むシーン(第11回)で、見ている方に「そんなに好きだったの!?」って思われちゃうのかなって心配だったので。ここから先は、ふたりで頑張らないといけない状況になってくるので、関係性がすごく深くなっていくのかなと想像しています。

浅井長政の行動一つ一つを腑に落としながら演じていきたい
――脚本を読まれて、浅井長政についてはどんな印象を受けましたか?
僕は戦国時代の武将や歴史についてまったく詳しくなくて、何も知らなかったのですが、脚本を読むと浅井長政ってすごくいい人なんです。いい人すぎて、つらい目に遭っているというような印象でした。監督やプロデューサーからも、誠実な人間なんだという説明をいただきました。敵となる信長は妻の兄であるという彼が置かれた状況を考えると、さぞ頭を悩ませただろうなと思います。
――演じる上で意識されていることはありますか?
僕自身は武士でもないし、殿でもない。そんな人間がちょんまげを結って、武士らしく立派に座っているだけなんです。だから行動や台詞の一つ一つが自分にとってどういう意味があるのかを腑に落としながら演じるようにしています。
なぜ彼はそんなふうに喋らないといけないのか、なぜ彼はそんなふうに座っていなければいけないのか、一つ一つ考えていかないといけない。それを演技全部に宿らせるようにしたいと気をつけています。
――浅井長政は心穏やかな優しい人物として登場しますが、最終的には信長を裏切ることになります。そこまでの心の動きをどう演じていこうと考えていますか?
信長や市など、長政が出会う人たちに真摯に正直に向き合っていくと、自然とまわりが困らせてくれると思います。あとは、意味のあるところでは、カメラがアップにしてくれたりするので(笑)。監督やスタッフ、みんなで一人の人物を作っていくわけですから、一人でやりきろうとしないっていうのが楽しいなと感じています。
大河ドラマはオールスターゲーム。やっぱり特別なドラマだと感じます
――「青天を衝け」(2021年放送)以来、2作目の大河ドラマ出演となりますが、現場の雰囲気はいかがですか?
最初にリハーサルに参加した時に、いい意味で現場がピリピリしていなくて、長距離を走るイメージの空気感だなと思いました。和やかで、全員の居心地がよさそうで、豊臣兄弟を演じる(仲野)太賀くんと池松(壮亮)くんもとても仲よさそうにしていて。僕が「〜ござる」って言うのが「恥ずいな」と言ったら、池松くんが「みんな、恥ずいですから」って励ましてくれました(笑)。
大河ドラマは、野球でいうところのオールスターゲームみたいなものだから、こんなにスターがたくさん出るの!? という驚きがあります。子供の頃は家族で見ていて、オープニングでテーマ曲を聴くと、「さあ大河を見るぞ」っていう家の空気を感じていたから、やっぱり特別なドラマだなと感じます。太賀くんと池松くんはすごく尊敬する俳優さんなので、今作に出演が決まった時は本当にうれしかったです。

――仲野太賀さん、池松壮亮さんのどういったところに魅力を感じられていたんですか?
太賀くんは、こんなに親しみやすい人がいるんだ、みたいな印象です。勝手に応援していたので、太賀くんのような人が国民に愛される存在になっているというのは、同じ俳優としてもすごくうれしいです。池松くんはすごい表現力を持っている俳優さんだなと思っています。「そんな表現は僕にはできない」という演技を見せつけられて、何度も心を折られていますが、俳優として尊敬しています。
――浅井長政を取り巻く状況はこれからなかなか厳しくなると思いますが、この後の見どころを教えてください。
僕が登場する第10回くらいからは、次々と歴史的な事件が描かれていくので、より群像劇的な側面が強くなっていくような印象を受けました。その歴史的事件が面白すぎて、「えー!? こんなことになっちゃうの?」と驚きながら、新鮮な気持ちで脚本を読んでいます。
今作は2026年から戦国時代を見て、現代の倫理観などを反映しながら登場人物たちの心情を想像しているように思えました。だから、見ている方にもわかりやすいし、楽しんでいただけるんじゃないかと思っています。