小一郎(仲野太賀)と心を通わせたことで、羽柴家の中での立ち位置も変わりつつあるちか。その変化を慶役の吉岡里帆はどのように感じているのか。インタビュー後編では、小一郎と秀吉(池松壮亮)の兄弟関係の印象や物語全体の魅力について語ってもらった。

慶役・吉岡里帆インタビュー 前編はこちら


小一郎と和解した慶が、どう変化していくのか

――前回、慶と小一郎の大きな和解があって、羽柴家の家族との接し方も変わってきました。お芝居をする中でどんなことに気をつけていますか?

小一郎と心を通わすまでは、決して弱さを見せてはいけないという意識を強く持っていました。織田の者には心に指一本も触れさせないと思いながらお芝居をしていたので、自分の心を殺すような感覚、何も感じないような状態にしていました。

でも、第19回で小一郎が「夫婦なんだから、もっと頼ってほしい」と伝えてくれて、お互いに支え合っていいんだと気づかされてからは、弱音というか、自分の弱い部分も隠しすぎないようにして。困っているときは困っている、苦しいときは苦しいという気持ちを、素直に出していけたらいいなと思っています。

――慶の表情も少し変わってきたような感じですが。

それは羽柴家のみんなにも、よく言われます。「表情が柔らかくなったね」って。心を許しているから、いつの間にか笑顔になっているのかもしれません。

私自身は、撮影に入ってすぐに皆さんが優しく受け入れてくださっていたので、休憩時間には大笑いしたりしていたんですよ。(寧々ねね役の浜辺)美波ちゃんとも、(とも役の宮澤)エマさんとも、(あさひ役の倉沢)杏菜ちゃんとも、いろんなお話をしていて、それをお義母かあさん(なか)役の坂井真紀さんが温かく見守ってくださっている感じで。「このシーン、どうしようか」という相談もお互いにしていたし、女性同士でしゃべる時間も多いです。

――今回は、羽柴家の女性たちが力を合わせて行動するところも描かれていました。

第20回の血判シーンは、これまで描かれたことがなかったそうです。撮影時は、今の時代にもフィットした、女性の結束力の強さを出したいよね、という話をみんなでしていました。また、ともさんが「慶さんはわたしらの身内なんだから」と家族認定してくださるシーンは、短い一言ですけれど、私の中ではジワーッと氷が溶けていくみたいな気持ちになって……。これから家族としての“仲間感”を感じるシーンも度々出てくるので、この感じが伝わるように演じていけたらいいなと思っています。


仲野・池松コンビは、吉岡里帆の目にはどう映っている?

――慶として、あるいは吉岡さん自身の視点で、仲野さんと池松さんのコンビネーションはどうですか?

素晴すばらしいです! お2人のこれまでの共演歴や、お友達であった期間の長さがお芝居に作用しているところが大きくて。やっぱり太賀くんは、池松さんとのシーンではいい顔をしているなと思いますし、秀吉のことを思って喋っているときの小一郎の顔が、最高にかっこいいです。

そして池松さん演じる秀吉の、調子のいい感じが実は見せかけなところ、私はすごく好きです。お調子者のようで深いところまで先を読んでいたり、ものすごく知的で物事を深く考えていたり、天下人にふさわしい人だと感じます。かっこいい人間でいようとしないところが、最大の魅力だなと思います。

いつだったか、太賀くんと2人で“池松さんが可愛い”という話で大盛り上がりしました。「池松さんって時々“キュルン”とした表情をされるよね」って。

――人たらしの役ですからね。

本当ですね。ちょっと、たらし込まれちゃいますね(笑)。応援したくなるし、この秀吉のためなら、って思わされちゃうんです。


人のために生きている夫婦の姿を2人で作れたら

――改めてになりますが「豊臣兄弟!」という物語全体の印象は?

以前まで慶が抱えていた裏腹な思いのように、私は戦国時代を描く作品のテーマが物語の端々にいろいろと潜んでいる気がしています。平和を望めば望むほど誰かを倒さなきゃいけないとか、万事円満の世を作ると言いながらも戦がずっと続くとか。皮肉が効いていて、平和な世の中を維持することがどれだけ難しく尊いことなのか、気づきにもなります。私の役も、そういう時代を象徴しているような、物語のスパイスになればと思っています。

――以前「豊臣秀長は人を支える美学を持った人で、そこがとてもいい」と話されていましたが、撮影が進んで感じた彼の魅力は?

自分は兄者よりも至らない、という認識をちゃんと持っているところです。それは謙虚さでもあるし、賢さでもあるし、兄を支えるんだという気概、彼の生き方にかっこよさを感じます。それは嫁の立場から見ると、至らないことでは決してなくて、「小一郎が最高!」って思っていますけれど(笑)。様々な状況の中で、「兄者にはかなわない」「兄者を支えるのが自分の仕事」と言って、自分を出しすぎないところに彼の品性と人を思いやる温かさを感じます。

あとは、面倒くさい仕事を嫌がらないところも、すごく好きです。小一郎は、排水溝の掃除もちゃんとできるタイプです(笑)。トイレ掃除も「やっといて」と言ったら「わかった」と気軽に引き受けてくれそうで、一緒に生活を共にできる人だという感じがしますね。

――今後も「本能寺の変」が起きるなど、小一郎には多くの戦が控えていますが、慶はこれから彼と人生を歩んでいく中で、どんな夫婦になりたいと思われますか?

これはもう「豊臣兄弟!」の現場に入ったときから、考えていることがあって。“天下統一をする豊臣兄弟”の大河ドラマで描かれる妻ですから、ただ恋愛感情でつながる夫婦関係というよりも、民のことを思って、国のことを思って、というように、テーマを大きく持っているほうがいいな、と思います。

「アンパンマンのマーチ」のように、何のために生まれたのか、大義をちゃんと持っているキャラクターを演じるのが良いのかな、と……。
ただ翻弄されているのではなく、人が亡くなる痛みもしっかりと感じて、そうならないためにはどうすればいいのかを考えに考え抜く――それを小一郎1人にさせるのではなく、夫婦として一緒に考える。そんな諦めない姿をお見せできたらいいなと思っています。
小一郎は天下人となる秀吉を支える人。そんな小一郎が晩年の兄を見たら、どんなふうに思うのか……それを想像するだけで、私はもう今から胸がいっぱいになってしまうんですが、おそらく最期まで兄を支えようとしていたと思います。その人を慶はどうやって支えていくのか……。

私は、慶のことを「支える人」を支える人、“影の影”だと思っていて、小一郎の影の「しっかりとした濃さ」を、より際立たせるような、そういう芝居をしたいと思います。人のために生きている夫婦の姿を、太賀くんと2人で作れたらいいなと思っています。