「AIがあれば大抵のことは何とかなる」と思っていませんか?
でも、企業の就職面接で「私の考えていることをAIが代読します」と学生が言ってきたら、面接官はどう思うでしょうか?
現在、本人が肉声でプレゼンテーションをする、自分の考えを伝える、という機会は多く、その技術を学びたい人もたくさんいます。
NHK財団の「話し方講座」は、ビジネスに役立つ「話し方」を学びたい社会人や、テレビやラジオで「話して伝える」仕事に就きたいと思っている学生が受講します。講師はプロのアナウンサーです。どんな内容なのか? 「アナウンサー基礎・実践」の教室の様子をご紹介します。

自分の声を録音して聞くと……
自分の声を録音して聞いたことはありますか? 聞いたことがある人はそんなに多くないでしょう。どの講座でも、受講生は最初に自己紹介をします。その音声を録音し、全員で聞きます。受講生の多くは「自分がこんな声をしているとは思わなかった」「もっといい声で、はっきりとしゃべっていると思っていた」という反応をします。
受講生に感想を聞いた後、講師が、なぜ自分の声が「思っていたのと違う」のかを説明します。

声は、どのように他の人に伝わるでしょうか。空気を振動させて、耳に届きますね。自分以外の人が聞いているのは、すべて空気の振動としての声です。
ところが、しゃべっている本人だけは、空気の振動=音に加えて、自分の頭蓋骨の振動、つまり骨伝導の成分を足して、自分の声を聞いています。「低くて、良く聞こえる、いい声」だと勝手に思っているのです。録音した自分の声には骨伝導で伝わる(主に低い音)の成分がないので、「思っていたのと違う」声に聞こえるのです。
ここまで説明すれば、受講生に「自分の声、話し方を客観的に聞くこと」の大切さを理解してもらえます。話している自分を、第三者として客観的に見る視点を持てるようになってくるのです。
客観的な視点を持てれば、自分のことも、他の人のことも、同じように聞くことが出来るようになります。すると対面であってもオンラインであっても、「ここが良かった」「もっとこうすればいいと思った」という意見を、受講生同士がお互いに言い合えるようになるのです。このことは私たちの講座の大きな特徴だと思っています。
技術的なことも

「みんなで言ってみてください。マラミリムルメレモロ」
発音の練習の時によく使う、マラミリムルメレモロ。
マ行は、赤ちゃんが最初に覚える子音だと言われています。赤ちゃんが口を動かしていたら偶然出た“マ”の音に対して、“わが子がママと呼んでくれた”と目の前の大人が大喜びする、そんな思い出とともに身につけた音です。
一方、ラ行は、口の中で、つまり、他の人が発音していても見えない場所で、舌を使って整えるので、大分遅れて発音できるようになる子供も多い音です。大人になってもラ行の苦手な人が多いのには、理由があります。
などなど、なるべく分かりやすい例えを使いながら、発音の仕方をお伝えしています。

「出だしの音をもっと高く!」
「原稿の内容を理解しないうちに音読を始めない!」
など、技術的なことももちろん指導します。
講師がプロのアナウンサーとしての経験を活かし、良いところを伸ばしながら、直すべきところを指摘する。その結果、翌週、話す内容や、しゃべり方が変わっていると、講師冥利に尽きます。
ミニテスト
毎回、受講者に出されるミニテスト。時事問題や、ことばに関する問題を出しています。
例えば、時事問題。
沖縄戦最後の激戦地となった糸満市摩文仁の平和祈念公園にある、戦没者の名前が刻まれた「平和の礎」。「へいわの」「礎」。何と読むか覚えていますか?
例えば、漢字の読み。
「施行」と「施工」。どちらが「しこう」でどちらが「せこう」でしょうか? そして、それぞれの意味、使い分けは? などの問題。
知っているはずなのに思い出せない、という微妙なラインを聞く問題が多く出されます。

今回は、「アナウンサー基礎、実践」研修を少しだけご紹介しました。この他にも、「ビジネストーク」「プレゼンテーション」「面接対策」「先生セミナー」「朗読セミナー」など様々なニーズにお応えできるよう、色々な講座を用意しています。 ぜひ一度NHK財団のHPをご覧ください。
NHK財団 放送研修センターのHPはこちら
※ステラnetを離れます
(文 NHK財団 ことばコミュニケーションセンター 廣田直敬)