「もし昔話の登場人物が訴えられたら……?」という設定のもと描かれる、Eテレの法廷ドラマシリーズ「昔話法廷」。

8月22日(土)に、5年ぶりとなる新作「『天女の羽衣』裁判」が放送されます。今回は、滋賀県北部にある小さな湖・余呉湖に伝わる「天女の羽衣」がモチーフ。シリーズ初となる“家事裁判”で、天女が「婚姻の取消し」を求めて夫を訴えます。

脚本を担当するのは、大河ドラマ「べらぼう」をはじめ、数々のヒット作を生み出してきた森下佳子さん。原告・天女を貫地谷しほりさんが、被告・夫の彦兵衛を桐谷健太さんが、そして裁判官を八木莉可子さんが演じます。
森下さん、貫地谷さん、桐谷さん、八木さんからのコメントをご紹介します。


【脚本:森下佳子さんのコメント】

法律監修の今井秀智弁護士がおっしゃった言葉が心に深く残っています。
「刑事裁判は、どれだけの刑罰にするかを争うもの。けれど家事裁判は、誰が良いか悪いかを決めることが本質ではない。お互いの希望や欲求がぶつかり合ってしまった時に、どこに落としどころを見つけ、みんながどうすれば幸せになれるかを探るのが家事裁判なんだ」と。
単に天女と夫の言い分を「正義だ」「正義じゃない」とジャッジするのではなく、2人の周りにいる人たちも含めて、みんなにとって何が幸せなのかを考えなければならない。裁判になってる以上、誰かの要望を優先すれば誰かの要望は犠牲になる構造です。それをみんなって……。私自身、本当に何が良いのかわからなくて、「他人ひとさまの幸せなんか私ごときに決められるか!」って心の中で逆ギレしましたね。
だからこそ、子どもたちにはこの問いについて、たくさん議論してほしいですね。「僕はこう思う」「私は天女の気持ちが分かる」はたまた「幸せって何?」とか、お互いの意見をたくさんぶつけ合ってほしいです。そのプロセスを経て、「自分はこういう価値観を大事にしているんだ」と知り、同時に「自分とは違う価値観を大切にしている人もいる」という相互理解に気づいてもらえればうれしいです。


【原告・天女役 貫地谷しほりさんのコメント】

実際に現場に入ると、改めて脚本のすばらしさに心が揺さぶられて、家で読んでいたときとはまた違う感情が込み上げてきました。目の前で彦兵衛の証言を聞いているうちに、天女の思いも私自身のこの裁判に対する考えも、刻々と変わっていったんです。彦兵衛に羽衣を隠されたせいで天女の人生は変わってしまったのに、キャラクターが魅力的に描かれているので、つい彦兵衛を許してしまいたくなる。どこまで見せるのか難しい部分ではありましたが、そういう一瞬一瞬の心の機微は、特に丁寧に表現した部分です。


【被告・夫のひこ兵衛べえ役 桐谷健太さんのコメント】

森下さんならではの独特な世界観があるんです。一言で説明するのは難しいのですが、特にすばらしいのはキャラクターの描き方だと思います。情けないところがあっても、どこかいとおしくてあたたかさを感じられる。
最初脚本を読んだときは、彦兵衛は天然キャラのイメージが強かったので、ぽわ〜んとした感じで演じようかと考えていたんです。でも、セットに入って証言台に立ってみると、まっすぐに天女と向き合おうとする彦兵衛の感情がすごく伝わってきました。だから、「もう一度、家族の時間を取り戻したい」という彦兵衛のいちさを大事にしました。


【裁判官役 八木莉可子さんのコメント】

森下さんの作品をよく拝見していたので、今回出演させていただけて大変光栄です。人間の美しさだけではなく、天女と彦兵衛どちらの弱さも描かれているのが素晴すばらしいなと。
私は裁判官の役なので、感情移入したり表情を変えたりしてはいけない印象があったのですが、監督から「番組を見る子どもたちの感情の揺れをリードしていく役割であってほしいから、表情ゆたかに演じてほしい」と言われたんです。
でもやりすぎるとコメディみたいになってしまうし、シリアスすぎても怖くなってしまう。ちょうどいいバランスを探るのが難しかったですね。


「昔話法廷」~滋賀・「天女の羽衣」裁判~

8月22日(土) Eテレ 午後8:00~8:30
NHK ONEでの同時・見逃し配信予定 (ステラnetを離れます)

シリーズ初となる“家事裁判”!「婚姻取消し」訴訟

新作のモチーフとなる昔話は、滋賀県北部にある余呉湖よごこに伝わる「天女の羽衣」です。
ある日、天から羽衣をまとった天女が舞い降りた。天女が湖で水浴びをしていたところ、一人の男が見かけて、一目ぼれ。男は、木にかけてあった天女の羽衣をそっと隠した。羽衣がなくなり天に帰れなくなった天女を、男は素知らぬ顔で優しく励ました。やがて2人は夫婦となり、幸せに暮らした。そんなある日、天女は隠されていた羽衣を発見する。天女は、追いすがる男を振り切り、天へ帰って行ってしまった――。
これまで番組では、殺人や強盗致傷などの刑事事件を扱ってきましたが、今回の「天女の羽衣」は、シリーズ初となる“家事裁判”です。「羽衣を隠すという“詐欺行為”がなければ、そもそも婚姻は成立しなかった」と、天女は、夫に対し、「婚姻の取消し」を求めて訴えを起こします。

作:森下佳子
出演:貫地谷しほり、桐谷健太、八木莉可子、木野花、毎田暖乃、天野優、平川和宏、眞島秀和、小林薫

NHK公式サイトはこちら ※ステラnetを離れます