ようやく、ようやくですよ。
嵩(北村匠海)はのぶ(今田美桜)に自分の思いを伝えられたし、のぶも素直に抱きつけたし……ほっとしました。地震の時、嵩の心配をしているのぶがかわいかったですね。
それでも「嵩の二倍、嵩のこと好き」って、ここでも勝ちに行くハチキン(昨今の言葉ではマウントっていうんでしょうか)の、のぶでした。
今週も心に残るセリフいっぱいです。

もちろん、ネタバレですのでご承知おきください。


「あいつの絵や物語は人の心を動かす」

昭和21年9月、のぶが高知新報を去る日。
編集長の東海林(津田健次郎)はまたも憎まれ口。
“代議士に引き抜かれたからここを辞めて東京に行く、いいご身分やなぁ”、という具合。
嵩が割って入る「最後ぐらいこころよく見送ってあげましょうよ」
ほんとうにすみません、と頭を下げるのぶに、寂しそうな表情になった東海林が
「ええか、これが世間や。世間は怖いぞ。ねたんだりひがんだりして、いろんなことを言われる。お前の志をへし折ろうとするやつもいる。そんなやつにぜっったい負けるな。負けるなよ」
涙を流して聞いていたのぶ。
「はいっ。編集長、本当にありがとうございました」深々と頭を下げる。

嵩が「やっぱり、すごいな、のぶちゃんは。ほんとに行っちゃうんだね。俺もいつかは……」のぶ「嵩も東京に行きたいが?」
嵩「そりゃ、行きたいよ」

のぶ「ほいたら、先に行って待ちゆうきね。ぼやぼやしよったらおじいちゃんになってしまうで」
嵩「そ、そうだね」
のぶ「ほいたらね」
嵩「ほいたら」
編集部の部屋には上を向いてため息をつく嵩がのこった。

琴子(鳴海唯)とのぶ、二人きりの送別会。
のぶのかわりに琴子が『月刊くじら』の編集部員になる。
「猫かぶって結婚相手みつけるより、面白い記事のネタ見つける方が、私の性にうちょるきね」
琴子は変節したようだ。
「のぶちゃんの東京での活躍を祈って」
「琴子さんと月刊くじらのますますの繁栄を願って」 「かんぱ~い!」

酔っぱらった琴子が編集部に戻ってくる。
残って仕事をしている嵩と岩清水(倉悠貴)。
琴子「のぶさん、明日の汽車でつそうです。このまま気持ちを伝えんでええがですか?」
嵩「ちゃんと伝えました。入社試験の後押しをしてくれたお礼は」
琴子、上を向いて叫ぶ「そうじゃのうて!」
岩清水「好きながですよね。柳井さんが彼女のことを好きながは、高知新報の人間やったら、というか、高知中の人間が知っちょりますき。この表紙も、ミス高知も、全部のぶさんがモデルやないですか」
琴子「けんど、肝心の本人には伝わっちゃあせんがが問題ながです」
二人で嵩を責め立てる。
嵩はすっくと立ちあがり、外に出ていくが……
「御免与町の家の方に。失礼します」
あっけにとられる二人。「はあ?」

出発を明日に控えた夜、高知ののぶとメイコの家に、御免与町から羽多子(江口のりこ)と蘭子(河合優実)がやってきた。
蘭子は残されるメイコ(原菜乃華)とここで一緒に暮らすことになっている。

羽多子は風呂敷から、結太郎(加瀬亮)の帽子を取り出す。のぶが持っていくよう、くら(浅田美代子)から言づかってきたものだった。
荷物の支度をしながら、戦災孤児や浮浪児の問題に取り組みたい、という夢を語るのぶ。
羽多子は心配そうに、一人で生きていくつもりかえ? と問うと
先のことはわからないが「自分の足で立って、歩いて、行けるところまで行ってみる」と答えるのだった。

翌朝、ばたばたと高知ののぶの家に走り込んできた嵩。
持ってきたのは……あの赤いハンドバッグだ。
そのころ、のぶはすでに車中の人となっていた。

8年も前に銀座で買ったハンドバッグを、なぜ、これまでのぶに渡せなかったのか、羽多子と二人の姉妹に経緯を話す嵩。
一度渡そうとしたが、当時“筋金入りの軍国少女” だったのぶに突き返された、と。

蘭子「けんどそのあとは? この際やき、聞きますけんど、嵩さんはどういて一遍もお姉ちゃんに気持ちをぶつけんがですか?」
ぼくの気持ちはどうでもいい、という嵩に蘭子はじれて、
「8年も前に突き返されたハンドバッグを走って渡しに来るって、そういうことでしょ」
羽多子が、次郎(中島歩)に気兼ねしているのだろう、というが……。
「もうひとり、かなわないヤツがいるんです。千尋(中沢元紀)です」

千尋が戦地に向かう前に交わした会話。
「この戦争さえなかったら、愛する国のために死ぬより、わしは愛する人のために生きたい」メイコは「それってのぶ姉ちゃんのことですね」
千尋には、勉強も運動も何一つ勝てなかったが
嵩「一番打ちのめされたのは、のぶちゃんを思う、強い気持ちです。あいつを差し置いて、生き残ったぼくがのぶちゃんに気持ちをぶつけるなんて。もう、喧嘩けんかもできないし。ぼくは千尋には一生かなわないなって……」
そんな嵩をじっと見つめる蘭子だった。

東京。国会議員・薪鉄子(戸田恵子)の議員室を訪ねるのぶ。
ちょうど薪はイラッとして電話を切ったところだ。
「国会議員は当選したら自分のためにしか動かない!」と腹を立てている。
ころっと表情を変えてのぶに「長旅ご苦労様」と言ったかと思うと
「ほいたら行きましょう」とさっさと自分が先にドアを出ていく。

ガード下で演説をする薪の、腹から出る声が響く。
「私たちの力で、世の中を変えていきましょう!」
昼食にふかし芋を食べている最中にも、その隣で事務補助員の世良(木原勝利)はスケジュールを読み上げている。

薪はのぶに「徹底的に浮浪児の話を聞いて回りなさい。そして政策作りの参考となる話があったら私にあげること」と命じ、
「ここがあなたの部屋や」(え? どう見ても周囲の壁はトタン板)と言い置いて、次の予定にさっさと出ていった。のぶですら面食らっている。
※戸田恵子 インタビュー

闇市では芋を盗んだと子どもが一人、八百屋のオヤジにつるし上げられていた。
以前、のぶからカメラをひったくった子どもだ。「アキラくん?」
男は「刈り込みに引き渡すぞ」
やめてくれ! と暴れるアキラをぎゅっと離さない男。のぶが割って入る。
「ちょっと待ってください。この子、盗んでないって言いゆうじゃないですか」
男がのぶに絡み始めたところで八木(妻夫木聡)が登場。
札を1枚渡して「これで文句ないだろう、その子を放してやれ」

八木にお礼を言いにいったのぶは、『月刊くじら』を見せ、嵩の漫画も紹介する。
漫画に目を通してふっと笑う八木。
嵩が、八木上等兵という人のおかげで生きて帰れたという話をしていた、とのぶが言うと
「トロくさいあいつが死なずに済んだのは、絵が描けたからだ……あいつの絵や物語は人の心を動かす」
それを聞いてうれしそうなのぶ。子どものころから嵩の絵が大好きで、救われたこともある、と話す。

と、そこで八木は立ち上がり、子どもの首根っこをつかんで「アキラ、出せ!」
芋が出てきた。
「こいつらの盗みは生きるすべとしてしみついたものだ。覚えておけ。きれいごとだけでは何も解決しない」

夜、ガード下のバラックに戻ったのぶ。次郎の写真を出して、結太郎の帽子をかけ、倒れ込む。頭上から電車が走る音が響いてきた。


「嵩は、子どものころからうちにはなくてはならん人ながです」

子どもに話を聞こうと努力するのぶだが、なかなかうまくいかない。
そんな時、『月刊くじら』を読んでいたアキラを、浮浪児の取り締まり、いわゆる「刈り込み」からかばってやる。アキラは過去につかまって施設に連れていかれ、そこから逃げてきたようだ。
アキラ「じゃ、おれ、これから稼ぎ時だから」(それって盗みかスリではないのか?)
『月刊くじら』をのぶに返しながら表紙を指して「この目の大きいところがお母ちゃんに似ている、でもお姉ちゃん(のぶ)にも似ているよ」と言い置いて……。

のぶの取材は続く。
施設から逃げてきた女の子は、鉄格子のあるところで朝から晩まで畑仕事をさせられてひもじかった、と言った。
親戚のおばさんの家から逃げてきた男の子は、何も食べさせてくれないから、と話す。
のぶは薪に、次は施設を調べてくる、と言う。施設の予算を獲得しなければ子どもたちの環境は改善されないからだ。

のぶはガード下の路地で、子どもたちに漢字を教えていた。そこへ割烹かっぽう着を着て手拭いをかぶった薪が近づいてくる。
薪「ガード下に変わりもんがもう1人増えたねぇ」
のぶ「八木さんがおっしゃりよったがです。子どもらぁには食べ物とおんなじくらい、心の栄養が必要やって」
薪と話していると八木が戻ってきて迷惑そうに「そんなこと頼んだ覚えはない」と言うが、のぶは子どもたちに人気があるらしい。
薪が「手が空いた時はこの子らぁに教えちゃりなさい」と言うと、
八木「好きにしろ」
のぶ「はい」

そのころ、嵩はスランプで全く漫画が描けずにいた。
東海林が見せたのは“手嶌治虫”の描いた漫画。大阪で評判になっている、まだ若い学生の漫画家だという。嵩が発奮してくれると期待して見せたのだが……
たちまち嵩は夢中になり、そして……「俺はダメだぁ~」と机に突っ伏す。

昭和21年12月22日
八木が真剣に新聞を見ている。
「昨日の朝、西日本で大きい地震だ」
昭和南海地震だ。関西・四国地方を中心とするこの地震は、津波の被害もあって1400人余りの死者を出した。

薪の事務所では高知と電話がつながらず、慌てていた。
情報収集にあたった世良もよくわからない。高知県でも100名以上の死者が出ている、という。
母、祖母、妹たちを心配するのぶ。そして「心配や。たっすいがやき。嵩」
つぶやきを聞いて「?」の顔の薪と世良。

高知では……
会社に泊まり込んでいた、東海林、岩清水、琴子は無事だった。
高知市内は空襲で焼け残った建物が倒壊し、火災も起き、道が陥没していて先に行けないところも。そんな中、嵩と連絡がつかない。徹夜続きだったため、東海林はその日、嵩をうちに帰したのだった。自分のせいだ、と後悔する東海林。

嵩の安否は地震から丸2日たってもわからなかった。
依然電話もつながらない。
のぶと薪は「これから高知に行く」と言い出すが、世良が止める。
関東大震災を経験した世良は、危険だからやめろと。

呆然ぼうぜんと東京の町を歩くのぶ。
八木のところへ行くと……
「あいつは死にゃぁしないよ。悪運が強いからな」
のぶ「そうでしょうか……」
八木は大陸での話をする。飢えとマラリアで何度も死にかけた嵩の話を。
「悪運と、もう1つ。戦地に行く前に言ってたよ。自分はどうしても生きて帰りたい。何のために生まれてきたのか、その意味すらまだ分からないからって」
初めて聞く話に、のぶは嵩の言葉で救ってもらったことを思い出す。
「嵩はそういう人ながです。子どものころからうちにはなくてはならん人ながです。……ほんまに馬鹿ばかですね。今ごろ気が付くらぁて」
八木「失いそうになって、初めて気付くこともある。その大切さに」
夜、バラックで『くじら』の表紙を見つめるのぶだった。


「なかったことにして欲しゅうないがです。なかったことらぁにせんといてください」

ようやく、『月刊くじら』の編集部に嵩が現れた!
「うちで寝てました」
あきれる編集部の面々。「寝よった?」「うそやろ?」
徹夜で原稿を書いていた岩清水は「身体が跳ねましたき!」
嵩「ぼくも飛び跳ねました。でも、また寝てしまって。目が覚めて家を出たらびっくりしました」
近所のがれきの片づけをしていて出勤できなかった、という。
腰を抜かしたように椅子にすとんと座る琴子と岩清水。

嵩の「みなさんが無事でよかったです」というとぼけた返答に
東海林「あほかぁ。こればぁ大災害やちゅうに、寝よったやと? ぬしはそれでも新聞記者か?」
ホッとしてそこで力つきる東海林。
蘭子とメイコ、羽多子、くらばあも無事だった。
しかし、無事を知らせる手段がない。電報も手紙もいつ届くかわからない。
1週間がたった。のぶはぼーっとしたまま。

ようやく高知と電話がつながり、高知の羽多子から電話がかかってくる。
「もしもし。のぶかえ?」
新聞社から電話をかけているという。
本当は嵩のことを聞きたいのに、編集者のみなさんは? としか聞けないのぶ。

そこで電話の主が交替する「もしもし、のぶちゃん、ぼくだけど。一応、ぼくも無事なので報告です」
のぶ「ぼくって、誰で?」
嵩「……誰って柳井嵩です」
のぶ「あ嵩……なんで、あんた無事やったが」
嵩「無事っていうか、ずっと寝てて……」

スイッチが入るのぶ。
「なにが『寝てたんだ』で!こっちはね、この一週間眠れちゃぁせんがや」
どうして? と聞かれ「自分でもわからん!」
「うちはしらんっ! たっすいがぁの嵩のくせに、どればぁ心配したと思うちゅうがで。あんたらぁて、あんたらぁてもう、起きんでえい、一生寝よれ。死ぬばぁ心配して損したわ。ほいたらね!」ガチャン!

夜、八木のところで酒を飲みながら顛末てんまつを話すのぶ。
「うち、またやってしもうたがです。女学生の頃から全然成長しちゃあせんがです。嵩の前やとブレーキが利かんがです……どうすりゃぁええがでしょうか。なんで嵩にだけ、うちは、こうなってしまうがでしょうか」
ふっと笑う八木。
失いそうになって初めてその大切さに気が付くことがある、と言っていた八木だが
「失ってから、どれほど大きな存在だったか、気が付くバカもいる」
(これはきっと八木自身のことなんでしょうね)

高知ののぶの家でご飯を食べている嵩。
羽多子・蘭子・メイコと食卓を囲むが元気がない。
心配する蘭子とメイコに、羽多子「のぶがね、電話で嵩くんにひどいことを言うたみたい」
なんて言われたのか、と聞かれ「死ぬばぁ心配して損した、ほいたらね、と」
にぶい嵩。あきれる3人。
蘭子が、嵩さんはお姉ちゃんが好きなんでしょう? というと
嵩「こないだも言いましたけど、ぼく、千尋にはかなわないので」
蘭子「そんなの千尋さんは全然うれしゅうないと思います。お姉ちゃんがいつか言いよりました。心に思うちゅうことを伝えんがは、思うちゃあせんのとおんなじことやって。ずっとお姉ちゃんを好きやった気持ち、なかったことになってしもうてもいいがですか?
うちは、どんなに思うても、もう気持ちを伝えることはできんがです。(涙声になる蘭子)
戦争で死んだ人の思いを、うちらぁは受け継いでいかんといかんがやないですか。人を好きになる気持ちとか、そんなに好きな人に出会えたこととか、なかったことにして欲しゅうないがです。なかったことらぁにせんといてください」


「好きや。嵩の二倍、嵩のこと好き」

夜中、嵩は会社に戻り、絵を描いていた。
朝日の中、机にはオレンジ色の着物を着たのぶの絵が。
出来上がった表紙の絵を置いて嵩が向かったのは……

八木のところで子どもたちに勉強を教えるのぶ。
そこに……嵩が現れた。

嵩「のぶちゃん、久しぶり」
のぶ「なんで?」
嵩「汽車と船を乗り継いで」
のぶ「そうやのうて」
嵩「徹夜で表紙と挿絵を描き上げたから編集長が休みを……」
のぶ「そうやのうて、何しに来たか、聞きゆうがよ」
嵩「のぶちゃん、今日は喧嘩はやめよう」
のぶ「うん、ごめん」

子どもたちを連れて離れていく八木。(気を利かせているんですね)
「ごめんね、突然来て」と言ってハンドバッグを差し出す。
嵩「これを、のぶちゃんに渡したくて」
のぶ「これ、いつかのハンドバッグ」
嵩「今日はどうしても受け取ってほしくて」
「ありがとう」のぶは受け取った。
のぶ「それで、わざわざこんなところまで?」

嵩「もう1つ、大事な話が……若松のぶさん、ぼくは朝田のぶの頃から、あなたが好きでした。勝手に失恋したり、怒られたり、いろいろあったけど」
のぶ「ごめん」
嵩「いいんだ。どんなに怒られても、ぼくはそのまんまののぶちゃんがどうしようもなく好きだから。これからもずっとぼくはあなたを、愛しています」
そこでホッとしたらしい嵩は、くるりとのぶに背を向けて
「ああ、やっと言えた。ハンドバッグも渡せたし、来てよかった。ありがと」
のぶ「こちらこそ」
「じゃ」と去っていく嵩。
のぶ「嵩、まって。たっすいがぁはいかん。一人になってやっとわかった。嵩はなくてはならん人や」
駆け寄って嵩の首に抱きつくのぶ。
「好きや。嵩の二倍、嵩のこと好き」

のぶを抱きしめる嵩。
※今田美桜、妻夫木聡 振り返りインタビュー


いやぁ、ここまで長かったですね~。4月から始まって4か月近くですよ。中園ミホさんに散々さんざん、じらされた気分です。寛伯父さん(竹野内豊)が言った“いつか二人の道が交わるとき”がようやく来たんですね。
とはいえ、これからまだまだ苦難が待ち受けているのでしょうが……。
来週は「ふたりしてあるく 今がしあわせ」幸せな時を楽しんで! ほいたらね。