ドラマの出演者やスタッフが「この回のあの人、あのシーン」について語ったコメントを不定期で配信するコーナー。今回は、柳井嵩役の北村匠海さんから、第87回の振り返りをご紹介!


北村匠海さん振り返り

――嵩と八木信之介(妻夫木聡)の人生が再び交差することになりましたが、北村さんは八木についてどんな印象を持っていますか?

嵩にとっての八木さんは、自分の道を照らしてくれるという意味で、戦争の時代におけるのぶ(今田美桜)の存在に近い印象でした。軍隊というルールに厳しい世界で、そして過酷な戦地で、八木さんがいなかったら嵩は死んでいたと思うので。走っているのぶの背中は輝いて見えて、彼女が進む道を嵩もついていくという感じでした。一方の八木さんは、手法も照らし方ものぶとは異なりますが、同じような光になって「あっちに行け、こっちに行け」と導いてくれていた。だから、のぶ的な存在だと思っています。

――撮影の合間に、妻夫木さんともコミュニケーションを取られたりしましたか?

戦時中は、ほぼしゃべっていませんでした。戦争というものが、演じる僕たちの精神にも影響していたし、撮影現場が、もう全く「あんぱん」の空気ではなかったので。だから戦争が終わって、東京のガード下で再会して以降はよく喋っていますね、僕も妻夫木さんも。

――妻夫木さんとは、北村さんが子どものころに共演されているのですが、久々の共演はいかがだったでしょうか?

前回の共演は、僕が小学校4年生に出演した『ブタがいた教室』という映画で、妻夫木さんが主演で先生、僕は児童の1人でした。実話をもとにした、命のことを考える作品で、僕の人生の中でも忘れられない作品のひとつです。子どもたちには台本が与えられていなくて、先生の言葉を聞いて自分が感じたことを言葉にする、という撮影方法だったのを覚えています。
先生である妻夫木さんは、僕たちに役柄を超えて話してくれたことがいっぱいあって、それが今でも自分が生きていく糧にもなっています。今回「あんぱん」で再会することに運命を感じましたし、しかも戦地で妻夫木さんが横にいてくれたのは、ものすごくありがたいことでした。
妻夫木さんって、大人になってから接してみると「たくさん話してくださる方だな」と(笑)。僕が子どものころ感じた印象とは違い、お酒を一緒に飲んでいると、本当にチャーミングな人だなと。その一方で、撮影中は現場の雰囲気に気を配っていらして。

――それは、例えばどういうところですか?

子役のひとりに、僕が『ブタがいた教室』に出ていたときと同じ年齢の子がいたんです。僕もそうだったのですが、自分なりに考えた芝居のメソッドみたいなものが芽生えてくる時期なんですね。そんな彼に対して、妻夫木さんが「芝居とは何か」をきちんと説明されていました。それを聞きながら、僕は『ブタがいた教室』のころを思い出す瞬間がたくさんあって……。その語りかけている言葉の裏に「あなたに、もっと輝いてほしいんだよ」という思いを感じました。