タイトルどおり、絵本『あんぱんまん』が誕生しました。“太ったおんちゃん”から顔があんぱんに!私たちが知っているアンパンマンにかなり近づいてきました。果たして、のぶ(今田美桜)と嵩(北村匠海)は“逆転しない正義”を見つけることができたのか……高知新報時代の編集長・東海林(津田健次郎)は、文字どおり“命を懸けて”確かめにやってきました。泣けました。
どの登場人物も、戦争との折り合いを自分なりにどうつけるのか、模索していました。
そんな一週間をまるっと振り返ります。
もちろんネタバレですのでご承知おきください。
「正義を行うということは自分も傷つくことを覚悟しなきゃいけない。ぼくはそう思うんだ」

嵩は“あの太ったヒーロー”の漫画を必死に描いている。
「一度形にしてみようと思って」
のぶ「わたしやっぱり、このおんちゃんが好き」
嵩の構想によれば……アンパンマンは空腹の人にパンを届けるため戦場の空を飛び回る。敵も味方も関係なく、ひたすらパンを届ける。そして国境を越えたところで敵と間違えられて撃ち落されてしまう……?
のぶ「え?」
嵩「大丈夫、決して死にはしないから。おなかをすかせた子どもたちのために今もアンパンマンは空を飛び続けている」

嵩は『千夜一夜物語』のキャラクターデザインの仕事が佳境を迎えていた。
手嶌治虫(眞栄田郷敦)も嵩のデザインを全面的に支持していて、嵩のデザインに合わせてやり直しを命じている。2人とも必死だ。

マンションの茶室では、登美子(松嶋菜々子)の指導で、のぶが蘭子(河合優実)に薄茶を点てていた。
蘭子は、これから取材を始めたい、戦場で大変な思いをして帰ってきた人たちにインタビューしたい、という。

これに登美子は、自分のお茶の先生で、戦友たちが飛び立つときにお茶を点てて見送ったという人物を紹介したいと言った。(先だって亡くなった、裏千家の前家元・千玄室さんのお話を思い出しました。※千玄室さんインタビュー)
嵩はのぶに戦争の話は滅多にしないが、飢え死にしそうになったことは話した、という。「身体のつらさや痛みはなんとか我慢できるようになるけど、空腹はどうにもならんって……それで、あんぱん配るおんちゃんの話が生まれたがやろね」

一方、手嶌の仕事場では、徹夜作業が続いていた。手嶌は仕事場の床で1時間、仮眠をとったあと、スキッと起きて仕事の続きを始める。その様子に素直に感動している嵩だった。
徹夜明けの朝、嵩は手嶌を伴ってマンションに帰ってきた。
手嶌「お茶を点てていただけませんか?」

初めて訪問した時、寝入ってしまった茶室……のぶの茶を飲んだ手嶌は“映画は見た人の人生観が変わるほど、面白くなければならない。戦意高揚のための映画は二度と見たくない”と語った。
手嶌は学徒動員で大阪の飛行機工場にいて空襲に遭ったという。
「ぼくは火の中、命からがら逃げました。逃げながら遺体をたくさん見ました。みんな黒焦げで、空一面がどす黒く燃えていて、世界の終わりのようでした」
のぶ「手嶌さん、二度と、そんな時代が来ないように、祈りを込めて飛び切り面白い映画を作ってくださいね」
嵩「手嶌さん、ひとつ言いたいことがある……もう少し寝なさい、ちゃんと」

その夜
のぶ「同じやったね。手嶌さんも嵩さんも。戦争の経験が、今になってキャラクターを生み出すことにつながっちゅうがや。嵩さんのアンパンマンも、手嶌さんの鉄腕アトムみたいに世の中に知ってもらえるとえいね」
嵩「いやいや、向こうは国民的なヒーローで、こっちはあんぱん配るただの太ったおじさんだから」
のぶ「人助けをする強い気持ちはどんなヒーローにも負けてないき」
嵩「アンパンマンの味方はのぶちゃんだけかもしれないね」
アンパンマンはいいことをするのにどうして撃ち落とされるのか、と聞くのぶに
嵩「それは……正義を行うということは自分も傷つくことを覚悟しなきゃいけない。ぼくはそう思うんだ」

机の上にはあの、アンパンマンの絵が1枚置かれている。
手に取って、のぶは
「いつの日か、飛べ、アンパンマン」
「向こうから見たら、こっちが悪もんかもしれんやろ?……あきらめんといて。アンパンマンはもっと飛べる」

昭和44年6月に、嵩が美術監督を務めた手嶌の映画『千夜一夜物語』が公開され、大ヒットになった。
手嶌は“嵩の特性”はキャラクターを生み出す能力だ、と言う。(確かに!やなせたかしさんの「それいけ!アンパンマン」は、単独のアニメーションシリーズでのキャラクター数でギネス世界記録に認定されました)

手嶌「柳井さん、映画を作ってみませんか? あなたが脚本を書いて、あなたが監督をする、あなたの映画です」
製作費は自分が出す、という。
「誰よりも、ぼくがやないたかし監督の作品を見たいんです」
編集者・本間詩織(平井珠生)が、次の作品を嵩に頼みに来る。
“なんでも大歓迎”という言葉に、
のぶ「あれをお願いしてみたら?」(もちろん、あの太った……)

一度断られている嵩は逡巡しているが……のぶはとにかく見せてみる。
しかし……
「この主人公、できれば少し減量できないですか?……もう少しほっそりと……」
のぶ「できません、個性ですから」
本間「そこまでおっしゃるなら、載せてみましょう」
いよいよ「アンパンマン」が雑誌に掲載されることに。
漫画、ではなく、挿絵の入った文章。太ったおじさんが空を飛んでいた。

メイコ(原菜乃華)、健太郎(高橋文哉)、登美子(松嶋菜々子)らの反応はよくない。がっかりする嵩だったが、のぶは励ます。
「嵩さん、あきらめたらいかん。いつかきっとみんなぁわかってくれるき」
どこがそんなに気に入っているのか、と問う羽多子(江口のりこ)に
「全部好き。でも一番好きながは、格好よくないところ。うちは子どものころから、悪い奴は懲らしめないかんて、そう思うちょった。それが正しいことで、正しいことをするのが格好いいと思うちょった。けど、あのおんちゃん見たら、そうやないがやってハッとする。おかあちゃんが昔、うちに言うてくれた言葉、思い出すがよ。痛めつけた相手に恨みが残るだけ。恨みは恨みしか生まんって」(1週目の子ども時代、嵩をかばって岩男にけがをさせたときですね)

世の中の害になるような悪者に対しては? と聞く羽多子に、
「向こうから見たら、こっちが悪もんかもしれんやろ? こじゃんと大事なことで。正しいとか、正しくないとかではなく、自分は撃たれても、おなかをすかせた子どもたちのために飛び続ける。嵩さんの描いたアンパンマンってキャラクターが世の中に伝わってほしい。そうなったら、うちこんなに嬉しいことはない」
嵩「のぶちゃん、ぼくは、勝手にあきらめてたんだよ。きっと伝わらないって」
のぶ「アンパンマンが嵩さんの思いを届けてくれる。それで救われる人がきっと、こじゃんとおる。だからあきらめんといて。アンパンマンはもっと飛べる」
「かっこよくなっても、強くなっても、いけないんです」
「かっこいい正義の味方は一番信用できない、か」
蘭子は八木(妻夫木聡)の事務所を訪れていた。
「読んだよ、君の記事」
内容は、登美子のお茶の先生のインタビューだ。
「読み応えのある記事だったよ」
八木に言われて嬉しそうな蘭子。
「きっと君のライフワークになる」

そこにのぶがやってきた。のぶは、八木のつてで子どもを集め、雑誌に載った『アンパンマン』の読み聞かせを始めたのだ。
子どもたちは面白くないのか、集中力がない。
「太ったおじさんよりスーパーマンの話がいい!」
でも、のぶはめげない。
「また、読み聞かせ、させてください」
八木に、どうしてそこまで?と聞かれ「自分のためかもしれません」とのぶ。
アンパンマンをみんなに知ってほしい、という強い思いがあった。

嵩が監督を務めた『やさしいライオン』の映画が公開になった。
映画館で泣きながら見ていた羽多子は、なんと登美子に鉢合わせ。
泣いているところを見られて、ばつが悪そうな登美子は“目にゴミが……”とベタな言い訳、あくまで“認めない”登美子なのだった。
(やなせたかし原作アニメ「やさしいライオン」放送決定! – NHK※ステラnetを離れます)

3年後、のぶの読み聞かせは続いていた。
のぶは髪を短くして、パーマをかけている。
八木の会社「九州コットンセンター」は社名を「キューリオ」に変えている。
(あ、やっぱり! と思って見た方も多かったでしょうね)
嵩はそこで創刊された雑誌『詩とメルヘン』の編集長をしていた。
一般からの投稿によって集めた詩を掲載する、新しい雑誌だ。(実際の『詩とメルヘン』はサンリオが1973年に創刊した雑誌で、やなせたかしさんが編集長を務めました)
嵩は弟・千尋(中沢元紀)にすすめられて懸賞漫画に投稿したことから今の自分がある、という思いがあり、雑誌は投稿形態にしたという。
嵩は漫画家・詩人・作詞家・絵本作家・映画監督、そして編集長になったわけだ。
八木は「アンパンマン」の続きは描かないのか? と聞くが嵩は
「なんかひとつ、足りないんですよね……」
『詩とメルヘン』をいつもの喫茶店で並んで読む、健太郎、嵩、たくや(大森元貴)。
みんな歳を重ねた風貌で、健太郎もたくやも眼鏡(老眼鏡?)をかけている。
もうすぐ定年だ、と嘆く健太郎に
嵩「いくつになっても挑戦はできる!」と肩をたたく。
たくやは3番目の妻とうまくいっていない、と嘆いていた……。
水曜日のこの日、ラストは2人のマンションを訪ねてきた東海林だった。

東海林は高知新報を定年退職していた。
嵩が書いた詩が絵付けされたカップを眺めながら、思い出話や近況報告。
「俺にゃぁ、あいつの描いたもんや映画、全部みちょるぞ」
嬉しそうに感想などを話す。
「あの柳井がこんな活躍するとはなぁ。俺はあのころから、あいつのずば抜けた才能、買うちょったぞ」(笑)

そのころ、嵩は八木の会社で『詩とメルヘン』の編集作業をしていた。
蘭子も手伝っている。投稿詩が選びきれないらしい。休憩時間に……。
「どうして人気が出ないのかなぁって」
アンパンマンのことだ。
八木「テーマはよくわかる。だが、何かが足りないな」
それは何なのか、議論が始まる。
蘭子は“キャラクターがスマートじゃなく押しつけがましい”と言い、アキラ(齊藤友暁)は“弱すぎる、飛ぶ時もよろよろしているし、マントはボロボロだし”と言い、粕谷(田中俊介)はとうとう“ガトリング砲でも持たせたら?”と言い出し、八木に“ただの飛行兵器だろ”と一蹴された。
嵩は「うまくいえないんですけど、かっこよくなっても、強くなっても、いけないんです、アンパンマンは」
八木「かっこいい正義の味方は一番信用できない、か」
そこにのぶから、東海林の来訪を伝える電話が。
「おまんらぁは、ついにみつけたにゃぁ。逆転せんもんを」

のぶは東海林を茶室でもてなしている。
そこで東海林が言い出した。
「けんどひとつ、腑に落ちん作品がある」アンパンマンのことだ。
「一遍見たら気になってたまらんがよ。あのおんちゃんはどういて、悪者を倒さんがな? どういてカッコよう空を飛ばん? どういてボロボロのマントを着ちゅう?どういて……どういて柳井はあれを描いたがな?」

のぶは、嵩が言った言葉を伝える。
「正義を行うなら、自分も傷つくことを覚悟しなければいけない、と」
そして、子どもたちに読み聞かせをしながら感じたことがある、と話し始める。
「カッコよう、銃を撃ったりして、敵と戦うがは、真のヒーローではない、と。敵を倒してそのままカッコよう飛び立ったら、メチャクチャに壊された町やそこに住む人らぁはどうなるがですろう? 強さをみせつけて敵を倒すがではなく、自分を顧みず、弱い人や困っちゅう人を救うがが、真のヒーローではないかな、と思うがです。やき、アンパンマンはカッコ悪くてえい、弱くてえい、マントもボロボロでえい、アンパンマンは嵩さんにとって唯一信じられる正義の味方ながです」
東海林「やっとみつけたにゃぁ」
「え?」
東海林「高知新報の面接のときにいいよった、あれや」
“周りに流されず、自分の目で見極め、自分の頭で考え、ひっくりかえらん確かなものをつかみたいがです”と、あの時のぶは言った。
そして嵩は、
“何が正しいのか、逆転しない正義とは何なのか、そもそも、逆転しない正義ってあるんでしょうか?”
東海林「どういてかわからんけんど、あのころ、お前らはおんなじもんを探しよった。それを、何十年かかけて、やっと見つけた。そうやにゃ」
そこに嵩が飛び込んでくる。
「よお」と片手を上げて嵩にあいさつして、
「おまんらぁは、ついにみつけたにゃぁ。逆転せんもんを。もっとこじゃ~んとあのおんちゃんを描け。のぶはこじゃ~んと応援せい。おまんらぁが長い時間かけて見つけたもんは、間違っちゃあせん。俺が責任を持つ」
そう言って東海林は出て行った。
「アンパンマンによろしゅうにゃ。ほいたらにゃぁ」

金曜日、高知新報の“岩清水琴子”から速達がきた。
(琴子[鳴海唯]と岩清水[倉悠貴]は結婚していたんですね)
それは東海林が亡くなった知らせだった。
東海林は入院していた病院を抜け出して東京に行ったのだという。
2人が逆転しない正義をみつけたかどうか、確かめるために。そして、うれしそうにその話をして息を引き取った、と書かれていた。

アンパンマンの絵をじっと見つめる嵩。
そして描き始めた。
朝が来て(このドラマの冒頭シーンのころに戻ってきました)嵩が仕上げた、新しいアンパンマンは……。

「顔があんぱん……こんなヒーロー、初めて見た」
“あんぱんまん”は自分の顔を食べさせる。
「“あんぱんまん”はおなかをすかせて困ってる人に自分の顔を食べさせて、ボロボロのマントを翻し、夕暮れの空を飛ぶんだ。たとえ自分の命が終わっても……大丈夫。“あんぱんまん”の命は終わらない。続くんだ」
めくるとそこには“ジャムおじさん”がいた。
「パン作りのおんちゃんが新しい顔を……」
ダメかな? という嵩に、のぶは涙を流しながら
「そんなことない、そんなことない。うち、こういうヒーローずっと待ちよった気がする」
昭和48年10月『あんぱんまん』は子ども向けの絵本になった。
(※北村匠海 振り返りインタビュー)

のぶは自宅で茶道教室を開いている。
生徒には子どももおとなもいる。
のぶは茶道を教えながら『あんぱんまん』の読み聞かせをしていた。

子どもからは、かわいい、という声がある一方
「ん~、でも顔を食べさせるのはちょっと気持ち悪い」
「いくらおなかがすいても、顔を食べるのは、ちょっとね」
でもそこに、夢中になっている様子の女性・中尾星子(古川琴音)がいた。

八木の会社にある、子どもたちが遊べるスペースにも『あんぱんまん』を置いてもらうことになった。
楽しそうに絵本を見ている幼い子どもの姿に、ちょっと驚く表情の八木だった。
ようやく“顔を食べさせる”というアンパンマンの基本コンセプトにたどり着きました! やなせたかしさんは著書の中でアンパンマンは“小さな子どもたちが読んでくれていることから人気になった”と書いています。次週は「怪傑アンパンマン」。とうとうミュージカルになるようで、たくやの活躍も見られそうです。そして……のぶの茶道教室にいた、古川琴音さん、気になりますね。
さあ、「あんぱん」も残すところあと2週間! 楽しみましょう! ほいたらね。