Ⓒ阿久井真/小学館/NHK・NEP・日本アニメーション

高校オーケストラ部を舞台にして“青春の音が響き合う”アニメ「青のオーケストラ Season2」が10月5日にスタートし、早くも第4話まで放送されました。ステラnetでは「Season1」の放送時に、各話の「極私的レビュー」で内容を振り返っていましたが、「Season2」では少し趣向を変え、月イチの掲載で印象的なセリフをピックアップ。1か月の放送を“まるっと”振り返るレビュー記事として、紹介していきます。

Ⓒ阿久井真/小学館/NHK・NEP・日本アニメーション

アニメ「青のオーケストラ Season1」をご覧になっていた方々は、力強くうなずいてくださると思うのですが、「青オケ」の登場キャラクターが発する言葉は、いわゆる「名言集」という表現では言い表せないほど、胸に響くものが多いんですよ。同名の原作漫画は“絵から音楽が聴こえてくる”と評されているほど、作者・阿久井真先生の圧倒的な画力が魅力。それと同じくらい、セリフやモノローグが素晴すばらしくて。それは、阿久井先生がキャラの内面に深く深く“潜り”、考え抜いたうえで生まれた言葉を紡いでいるから(こちらのインタビューを参照)、なのですが、そんな物語の中で輝いている言葉たちを「Season2」でも堪能していただきたく。

まずは第1話の「ほころび」から。
主人公・青野はじめ(声:千葉翔也)が、打楽器のパートリーダーを務める2年生・佐久間優介(声:神谷浩史)に対して、感情を抑えきれなくなって自分自身に言い聞かせるようにつぶやくのが、このセリフ。

©阿久井真/小学館/NHK・NEP・日本アニメーション

「無理だ、俺あいつの考えてることがわからない。わかりたいとも思わない」

おお、いきなりとがった言葉が登場しましたね! 「Season1」冒頭で、周囲の人々を拒絶していた“ネガティブ青野くん”再び。
まあ、彼がここまでキレた背景には、佐久間が「僕、君のことが嫌いだなぁ」とか「1分54秒。君が僕に話しかけたことによって失われた、僕の練習時間」とか、めっちゃ青野くんをあおるセリフを投げつけていたことが、前振りとしてあったわけだけど。
この佐久間が口にする言葉の辛辣しんらつさときたら! 定期演奏会終了後、3年生が引退して新体制になった途端、オケ部内に漂い始めた不穏な空気。佐久間は同じ2年の新コンマス・羽鳥葉(声:浅沼晋太郎)にも毒づくし、1stヴァイオリンのパートリーダー・ヒメちゃん(裾野姫子/声:金澤まい)を激怒させるし、これで多くの視聴者のヘイトも背負ったと思われ……。青野くんがここまで負の感情を爆発させたのは、父・青野龍仁(声:置鮎龍太郎)との因縁を明かした佐伯直(声:土屋神葉)との対決以来じゃない? その佐伯は、青野くんに「言いたいこと言って(佐久間と)ケンカすればいいんだよ」なんて軽く言っていましたね。
ただ、佐久間が主張する「僕はコンクールを連覇したいだけ」という言葉に、うそはないわけで。りっちゃん(秋音律子/声:加隈亜衣)が心配していた、朝練に出てこない2ndヴァイオリンのパートリーダー・滝本かよ(声:渕上舞)を含め、各部員たちはさまざまな事情を抱えていて。部活ものにおける“青春の蹉跌さてつ”のオンパレードというと、言い過ぎかもしれないけど。
冒頭で描かれていた、青野くんに思いを寄せているハルちゃん(小桜ハル/声:佐藤未奈子)の甘酸っぱい感情との対比が大きくて、第1話から密度の濃い25分でした。

第2話「波紋」では、滝本さんが、かなり追いつめられた状況に置かれています。
朝練をめぐる、佐久間からの叱責。なりたくてなったわけじゃないけれど、パートリーダーとしてコンクールに臨まなくてはならない重圧。部活も、受験も、ちゃんと頑張れる、「大丈夫だから」と何度も口にして自分を鼓舞してきた滝本さん。それでも彼女の負担を気遣い、パートリーダー変更を言い出したヒメちゃんや福留心美(声:井上ほの花)の言葉を聞いて、滝本さんの張りつめていた気持ちは切れてしまって……。

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「全然… 大丈夫じゃないじゃん…っ!」

と、電車を待つ駅のホームで、涙があふれてきてしまうのでした。そこに青野くんが居合わせて……。

部活動と個人の生活をいかに両立させるのか。高校生にとっては切実な問題ですよね。
劇中でも語られているとおり、海幕高校オーケストラ部は全国コンクールで8年連続最優秀賞に輝いています。そして、2か月後に迫る大会では、9連覇がかかっていて。そんなオケ部ゆえに練習量は半端なく、朝練、昼休みの自主練、放課後の午後練(人によっては完全下校の直前まで)夏休みも毎日練習漬けで、休みは週に1度。さすがに試験前は部活停止期間ですが、赤点を取ると練習にも参加できないという……。
そういう毎日を過ごしているから、滝本さんのように医学部志望で予備校の現役生講習にも通っていると、時間は全然足りなくなってしまいます。そこに加わる、親からの過度なプレッシャーや、滝本さんに反発している2ndヴァイオリンのメンバーからの厳しい意見。つ、つらい。
滝本さんじゃなくても、押しつぶされてしまうよね。彼女の気持ちがわかる同世代の人たちは、たくさんいるはず。そんな、きれいごとで済まない、部活の現実もちゃんと描いているところが「青オケ」の大きな特徴だと思います。同世代じゃないけれど、中高で吹奏楽部だった私も心が痛くなってしまうな……。

第3話「ケジメ」は、駅のホームのベンチで涙していた滝本さんを心配して、青野くんが声をかけるシーンから。このとき青野くんは「次の電車が来るまでってことで……」と言いながら、滝本さんと背中合わせになってベンチに座るんですよ。滝本さんの涙を見ないように! 家庭の事情がありながら部活を続けている青野くんが見せた優しさに、滝本さんは自分のことを語り始めて……。
「一生懸命やる意味あるのかな?」「どうしていいか、わからなくなる……」と自問自答する彼女に青野くんがかけた言葉は、「わかります……、俺も、一度全部あきらめたことがあるから」。
なんて気配りできる子なんだ、青野くん。そうか、「Season1」で描かれていた、1度ヴァイオリンから離れてしまった青野くんの葛藤が、ここできてくるわけですね。
滝本さんの頑張りをちゃんと理解して「そこまでの自分を、めてあげていいのかなって……」という青野くんの言葉に、滝本さんの気持ちは少し楽になっていきます。
ただ、問題が解決したわけではなくて。中途半端で後悔したくない滝本さんは「自分で決めなきゃダメだよね」と意を決して「帰ったら話したいことがあるの」と母親に電話をかけたのでした。
彼女が出した結論は、コンクールまではオケ部の活動に専念。コンクール以降は籍だけ置く、ということ。それでも2年生部員たちは困惑し、軋轢あつれきを生むことに。そんな滝本さんを心配して電話をくれたヒメちゃんが、パートリーダーのことで「結局私は……! 追いつめることしかしてなかった……!」と涙ながらに気持ちを吐露しているのを聞いて……。

©阿久井真/小学館/NHK・NEP・日本アニメーション

「……誰に何を言われたからとか、そんなんじゃない。私自身が決めたの」

もう前を向いている滝本さん。よかった、吹っ切れたんだね。それに続く「ヒメちゃん、私のためにいっぱい悩んでくれて、ありがとう」「私は!……かよと一緒にオケ部の音をつくりたいって思ってるからね……!」。うわぁぁぁ、この関係性にボロ泣きですよ。2人の“中の人”である渕上舞さんと金澤まいさんの芝居も素晴らしい。そして最後の「後悔しないために」という滝本さんのモノローグとともに流れてくるEDテーマ、チョーキューメイの「青野の魔法」。サビの歌詞の「♪大丈夫~」が、みるねぇ……。

さて、第3話までを“滝本さんの苦悩回”だとすれば、第4話「体育祭」は思いっきり“日常青春回”になっていて、その振り幅も見事でした。青野くんの学園生活を描きつつも、オケ部の人間関係が見えてくる(バチバチやり合っていた2年生たちも、実は相手のことを認めていることが伝わってくる)、そのへんの描き方もいい感じですね。
ちなみに、トランペットの東金梨香(声:佐伯伊織)先輩が言う「管楽器は体育祭でも校歌とか演奏しなきゃいけないし」は、音楽部あるあるだよなー。コンクールに向けて集中したいときに、学校行事の演奏に駆り出されて。下手をすると、自治体主催のイベントの演奏にも呼ばれちゃったりして……。
話を戻すと、オケ部の選抜メンバーは「部活対抗リレー」に出場することになり、りっちゃんも選手に選ばれました。そのリレーのスタート前、準備運動をするりっちゃんを見守っていた青野くんとハルちゃん。そのハルちゃんに、アシナガバチが接近! スズメバチかと思い、慌ててハルちゃんをかばった(抱き寄せた!)青野くん、からの、ハルちゃんのこの言葉。

©阿久井真/小学館/NHK・NEP・日本アニメーション

「青野くん。りっちゃんのこと どう思ってますか…?」

おお、言ったぁ! これまで、ハルちゃんの青野くんへのほのかな恋心は描かれてきたのだけれども、ここまでストレートに聞いたのは初めてじゃない? 
ところが、青野くんはハルちゃんの言葉の意図に全く気づかずに「俺は、秋音が……、アンカーだと思うよ!」
あああ、そうなんだけれど、そうじゃない!!! って、ラブコメ展開の王道ですけどね。すみません、先ほどの「なんて気配りできる子なんだ、青野くん」の言葉は、完全撤回させていただきます! そういうやつだよな、青野くん……。

ちなみにその直前、りっちゃんもクラスメイトから「青野くんのこと気になっているんだ?」なんて言われて、「へ?」と戸惑いの表情を見せていましたね。この先、どうなるの、この関係は!?

いろんなフラグが立ちつつの、次回からはコンクールに向けて音楽モノの本領発揮となりそうです。うわぁ、楽しみだ~!

*次回の記事は、第9話の放送前、11月30日(日曜)の午後1:00に公開の予定です。


アニメ「青のオーケストラ」Season2

2025年10月5日スタート 
毎週日曜 NHK Eテレ 午後5:00~5:25
毎週木曜 NHK Eテレ 午後7:20~7:45[再放送]

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カツオ(一本釣り)漁師、長距離航路貨客船の料理人見習い、スキー・インストラクター、脚本家アシスタントとして働いた経験を持つ、元雑誌編集者。番組情報誌『NHKウイークリー ステラ』に長年かかわり、編集・インタビュー・撮影を担当した。趣味は、ライトノベルや漫画を読むこと、アニメ鑑賞。中学・高校時代は吹奏楽部のアルトサックス吹きで、スマホの中にはアニソンがいっぱい。