アニメ「青のオーケストラ Season2」のほぼ1か月分の内容を、極私的レビューとして紹介! 今回は第5話から第8話、海幕高校オーケストラ部が9連覇をかけて全国コンクールに臨むまで。これまで断片的にしか描かれていなかった登場人物たちの葛藤が音楽の表現と絡んで、物語の深みがさらに増していく流れを“まるっと”振り返っていきましょう。

ハルちゃん、青野くんにアプローチ?
第5話の「課題」は、ハルちゃん(小桜ハル/声:佐藤未奈子)を熱烈応援すべき回!(え、そう思っているのは私だけ?)だって、ハルちゃんが青野くん(青野 一/声:千葉翔也)に抱いている感情を、コンクールで弾く曲の解釈と絡めて描かれていくわけですよ。切ないじゃないですか、揺れる気持ちが……。
そもそもハルちゃんは、小学校2年生のときのヴァイオリン・コンクールで出会った青野くんと「いつかブルッフの曲を一緒に弾く」約束をしていて(青野くんはすっかり忘れていて、ちょっとどうなの!とツッコミを入れたくなるわけですが)、10年近くも想い続けてきたんですよね。
そんな彼女が今回コンクールで演奏するのは、サン=サーンス作曲の歌劇『サムソンとデリラ』の「バッカナール」。敵対関係にある英雄サムソンと美女デリラの愛と復讐を描いた情念渦巻く曲だけど、どう向き合うのか?
顧問の鮎川先生(声:小野大輔)は、曲をいかに理解し、音としてどう表現するのかを求めて「もっと曲を咀嚼しろ。そして入り込め」なんて言うし。グループごとの練習では、羽鳥 葉(声:浅沼晋太郎)の「この曲には『妖しさ』があってもいいと思うな」という言葉を耳にして、「妖しさ」をネット検索した夜に青野くんのことを夢に見てしまうし。デリラの感情を一生懸命理解しようとするハルちゃんが、とにかく健気で。
そんなとき、青野くんがりっちゃん(秋音律子/声:加隈亜衣)と親しげに話している姿を見たハルちゃんは、胸に小さな痛みを覚えて……。
「この感情は……、多分、嫉妬」
自己嫌悪に陥ってしまうのでした。誰にも言えないよね、その気持ち……。さらに、同じようにデリラの気持ちを掴もうと悩んでいた2年生のオーボエ奏者・平良まりあ(声:小澤亜李)には、

「好きなんでしょ? 青野くんのこと」
と言われてしまい。自分が青野くんを好きなことが皆にバレているのではないか? という不安を抱えてしまいます。
ただ、そこから、仮面を被ってサムソンに愛を囁いたデリラの気持ちに近づき始めたハルちゃん。大好きな町井美月先輩(声:安済知佳)に自分の思いを打ち明けた(&打ち明けられた)こともあって、自分なりの表現が見えてきて、一気に視界が広がっていく……。この思いをひとつずつ整理して見つめ直していく流れ、良かったなぁ。「青オケ」の人物描写の、まさに真骨頂ですね。

そして月明かりに照らされた部活の帰り道。ハルちゃんは青野くんに、コンクールが終わったらヴァイオリンのメンテナンスに楽器店へ「一緒に行かない?」と誘うのでした。あっさりOKした青野くんが、夏祭りのメンバーを誘おうとしたとき(そこ、そもそも間違っているから!)に、意を決して、
「あのっ!……2人で行かない…?」
あああああ、言ったぁ!!! ついに口にした、この言葉。まっすぐ青野くんを見つめるハルちゃんの目には、自分の気持ちをうやむやにさせないという強い意志が滲んでいて。
この一歩を踏み出したことで、どんな展開が待っているのか……。
りっちゃんと立花さんの心の壁は
続く第6話「後悔と一歩」では、立花さん(立花静/声:Lynn)が記憶から消せないでいる中学時代の辛い思い出に光が当たりました。これまでヴァイオリン初心者のりっちゃんに、厳しく接してきた立花さん。彼女も2年生の佐久間優介(声:神谷浩史)と同様に、馴れ合いを嫌い、思ったことをはっきりと口にするタイプですよね。そう言えばSeason1でも、りっちゃんに「私、ただ部活を楽しみたいだけの人って嫌いなの」と言い放っていたなぁ……。
コンクールまで時間がない中、2ndヴァイオリンの1年生たちの「バッカナール」への理解が進まないことに焦りを感じる立花さんは、彼らに対して思わず声を荒げてしまうのでした。その様子を無言で見ていた佐久間の姿に、りっちゃんは何かを感じて……。

翌日、選択授業の調理実習で立花さんと一緒になったりっちゃんは「佐久間先輩と何かあった?」と聞こうとします。しかしながら、返ってきたのは、
「人が嫌がっている部分に踏み込んでくるの本当にやめたら? そういうの本気で不愉快」
うわぁ、きっつぅ。でも、立花さん、明らかに「言わなきゃよかった」という表情になって、俯いていたよね? そんな立花さんに紅茶を淹れてきて、「ごめん! 次から気をつけるね」と素直に謝るりっちゃん。その手が微かに震えているのを目にした立花さんは「私…、また同じこと繰り返して……! また人を傷つけて……!」と、自分の心に刺さる棘を思い出すのでした。そして、きつい言い方をしたことをりっちゃんに謝罪し、中学時代に起きた出来事をぽつりぽつりと語り始めます。
毎年金賞を獲り続けている管弦楽の強豪校で、佐久間から部長を引き継いだこと。部員たちに厳しい練習を求めてしまい、気合いが空回りしていたこと。結果、コンクールでは銅賞に終わったこと。「正直、みんな立花に振り回されてただけなんだよ」と言われてしまったこと……。
「私…、ずっと皆に我慢させてたんだ……」と、涙が止まらなくなる立花さん。その涙は、紅茶のカップの中に落ちて……。
「……また、私のせいで金賞獲れないかもね」
弱気になっている立花さんに、私ができることは何だろう? そう考えたりっちゃんは、ティンパニーを練習していた佐久間に話をしたうえで、「ちょっとバッカナール合わせない?」と、立花さんを練習に誘います。

2人がバッカナールを弾いていると、リズムをとるように聴こえてきたのは、ティンパニーの音。ここから、演奏後に2人が佐久間に会いに行き、立花さんが大粒の涙を零す場面まで、しっかりと何かを話しているけれど、言葉は聞こえてこずに音楽のみが流れる、と。
原作準拠とはいえ、この演出の妙ですよ! これでりっちゃんと立花さんの心の壁は完全に崩壊。りっちゃんに細かく注意したがるところは変わらないけれど、その裏でちゃんと認めているという立花さんのツンデレぶりが、これから見られることに……。
青野くんの「怒り」が演奏の中に織り込まれて
第7話「怒り」は、バッカナールの主題のひとつである「怒り」をどう表現するのか、が主題。人それぞれ微妙に異なる感情をひとつの音楽に落とし込む過程が丹念に描かれ、オケ部の部員たちをあれだけ煽っていた佐久間の真意も見えてくることになります。

グループごとの練習でコンマスを務めた青野くんの前で、佐久間は言いたい放題。
「なまぬるい。毒にも薬にもならない、ぬる~い演奏だったよね」「弦楽器の音は強い『怒り』が足りない」「管楽器は今の演奏を聴いて何も思わないわけ?」「それとも何? 自分達よりレベル低くて安心した?」「弦楽器よりよっぽど重症だね!」……。改めて文字にすると、強烈だな(しかも、神谷浩史さんの声がまた絶妙で)。ああ、りっちゃんと立花さんを演奏でフォローしていた優しい先輩はどこに?
笑顔で辛辣な言葉を投げつける佐久間に心底ムカつく青野くんだけど、一理ある言葉にどこか納得している自分もいて、演奏に何が足りないのかを模索していきます。数日後の昼休み、期せずして佐久間と「怒り」について話すことになった青野くんは、佐久間に猛反発。それでも対話の中で、佐久間が「自分の意見を何も言わない、口無しの人」たちに「怒り」を感じていると知り、彼の言葉から自分の中にある「怒り」と向き合うことになります。

「もっと怒りと向き合いなよ。君は表現者だろ?」
青野くんの「怒り」の対象は、言うまでもなく家を出て行った父・龍仁(声:置鮎龍太郎)。だけど、くすぶり続ける自分の思いを演奏にストレートに乗せることはせず、あえて抑えて「溜めて弾く」ことを試みたのでした。隣で弾いていた佐伯 直(声:土屋神葉)は理解してくれたものの、オケ部全体に青野くんの思いは伝わらず、演奏は噛み合わないまま。その後のミーティングでも、パートリーダーたち以外は発言する者もなく、重い空気のまま時間が過ぎて……。
そんな中、佐久間の「怒り」を察した青野くんは、自分が「溜めた」演奏をした意図 ――堪えて堪えて、エネルギーを溜めながら膨らんでいくイメージ――を語り始めます。それをきっかけに部員たちからも意見が出始め、「怒り」に対するアプローチがより具体的に。ようやく、オケ部全体が前に進んだ感じ? 帰宅する電車の中で再び鉢合わせした佐久間も「『やっとか』ってカンジだよね」と言いつつも「でもまあ……、今日は割りと良かったけどね」と認めてくれていました。
と、ここまで一途に音楽を作り上げる部活パートが続いたと思ったら、いきなり青春パートがキターーーーーー!!! 同じ電車に乗り合わせていたりっちゃんと一緒に自宅近くの駅で降りた青野くん、帰り道、あの踏切に差し掛かります。そう1年前の中学時代、青野くんにヴァイオリンを教えてもらっていたりっちゃんが、指先の皮が硬くなっていると告げながら、からかおうとして「触ってみる?」と手のひらを差し出した、あの踏切です! 1年前と同じように「ほら!」と差し出された指先が、今回は確かに触れ合って……。

あっ、絶対フラグが立ったよね! りっちゃんの、この表情が意味するものは……。
コンクール開幕。演奏前の部員たちは
先回りして書いておきますが、第8話「コンクール」では、海幕高校のコンクールでの演奏は登場しません。Season1の第22話「贈る言葉」みたいな感じかな? 実際の演奏は、これから放送される第9話「バッカナール」をお楽しみに! ということで。
冒頭には、コンクール当日に至るまでの名場面フラッシュが挿入され、楽器搬入の部分などもちゃんと描かれています。今回は、原作にないオリジナル要素も盛り込まれていて。ライバル校の秋田県立仙丈高校の顧問の先生(柳牡丹/声:浅野真澄)なんて、原作では名前もセリフもなかったもんなぁ……。
原作では「おまけ漫画」として掲載されていたサブ・エピソードがいくつか本編の中に組み込まれていたのも、嬉しいサプライズ。物語の構成順は大胆にアレンジしてあり、原作では「バッカナール」の演奏中に登場していた開演前の点描が、じっくりと描かれています。
そのひとつが、他校の生徒たちを見て緊張するりっちゃんを、立花さんが励ますシーン。「ちゃんと弾けるか、正直不安……」と話したりっちゃんに、

「秋音なら大丈夫よ」
その言葉は、第6話「後悔と一歩」では聞こえなかった、立花さんが佐久間に言われた「君は大丈夫だよ」と重なるものでした。この言葉を口にした後の立花さんの笑顔は、とても柔和で。もう、すっかりデレてますね!
そして、2ndヴァイオリンのパートリーダーを務めるはずだった日向さん(声:安齋由香里)が、定期演奏会後に退部届を出したと知らされたときの経緯を思い返した、佐久間の回想。経験者が抜けた弦楽器パートを心配する佐久間は、自分に情報を共有してくれなかった滝本さん(滝本かよ/声:渕上舞)を問い詰めたものの「先輩たちもいるし、大丈夫じゃない?」と言われてしまい。「次はコンクールがあるだろ!?」と言っても「心配し過ぎ」と流されてしまい。自分から動こうとしない人たちに対して、

「……他人任せかよ。……イライラする」
というのも、佐久間にはもうひとつ苦い思い出があって。中学のとき、立花さんへの引き継ぎが上手くいってないことに薄々気づいていながらも、仲間の筒井俊樹(声:金子誠)とともに「部活を引退した身で口を出すのも悪い」と考えてしまった佐久間にとっては、後悔しかない出来事なんですよね。過去の自分を責める思いは、海幕高校オケ部で現部長を務めている筒井も同じで。
もうひとつは、観客席に座った元コンマスの3年生・原田 蒼(声:榎木淳弥)が思い出した、ヴァイオリンを柔らかく弾きこなす現コンマス・羽鳥とのセッション。その心地よい演奏の記憶が、客席で後輩たちの演奏を見守る3年生たちとの会話の中で紹介されました。
それらが演奏前に描かれ、本番前の緊張感は頂点に。鮎川先生の、あえて厳しい言葉を並べて緊張させた後の笑顔、そして「お前達が変わったのは知っている。もう先輩たちに負けてない。それを証明しに行こう」という熱い言葉とともに、オケ部のメンバーは円陣を組み、

「一音一会!!」
その掛け声とともに、部員たちはステージへ。いよいよ「バッカナール」の演奏が始まります!!!
*次回の記事は、第13話放送の4時間前、1月4日(日)の午後1:00ころの公開予定です。
アニメ「青のオーケストラ」Season2
毎週日曜 NHK Eテレ 午後5:00~5:25
毎週木曜 NHK Eテレ 午後7:20~7:45[再放送]
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カツオ(一本釣り)漁師、長距離航路貨客船の料理人見習い、スキー・インストラクター、脚本家アシスタントとして働いた経験を持つ、元雑誌編集者。番組情報誌『NHKウイークリー ステラ』に長年かかわり、編集・インタビュー・撮影を担当した。趣味は、ライトノベルや漫画を読むこと、アニメ鑑賞。中学・高校時代は吹奏楽部のアルトサックス吹きで、スマホの中にはアニソンがいっぱい。