アニメ「青のオーケストラ Season2」の1か月分の内容を、極私的レビューとして紹介! 今回はクリスマスコンサート前の第13話から年が明けて新展開が見えてきた第16話までの印象的なセリフをピックアップしながら、1月の「青オケ」を “まるっと”振り返っていきましょう。

佐伯が演奏に込めた、離れて暮らす母への思慕
冬の早朝。朝霧が残る田舎道は、佐伯 直(声:土屋神葉)の通学路だ。人が消えてしまったかのような景色の中で、彼がヘッドホンで聴いていたのは、シューベルトの「アヴェ・マリア」(歌唱:隠岐彩夏、ピアノ:木村裕平)。それは佐伯の母であり、遠く離れたドイツで暮らしているソプラノ歌手・オリビア(声:高垣彩陽)に繋がる曲でもある。彼が手に息を吹きかけて思い浮かべるのは、同じようにして手を温めてくれた母の記憶。そのとき佐伯の胸に去来したものは……。
と、いきなりの情景描写から始めてみましたが、第13話の「朝霧」は、佐伯の大フィーチャー回で、一瞬、別アニメ? と思わせるほど。阿久井真先生の原作漫画ではそこまで深く触れられてなかった、幼少期の佐伯(声:石見舞菜香)とオリビアの会話がアニメ・オリジナルとして描写されていました。

母と別れて日本にやってきた佐伯が、変わらずに持ち続ける思慕。原作の意図を尊重しつつ、彼の思いがより濃密に描かれています。それがしっかりと伝わるアバン(オープニングが流れる前のプロローグ・シーン)は、それだけで7分近く。今回の物語の1/3を占めていて、丁寧に心情を描いてみせた制作スタッフに大拍手したいですね。
そこも含めて、今回は「忘れないもの」がテーマだったのかな? 小さいころの楽しかった記憶もいつか忘れてしまい、思い出せなくなるのでは、と佐伯が口にしたとき、鮎川先生(声:小野大輔)はこんな言葉を返しました。
「そういう忘れていったものこそ……、今の自分の血肉になっているんじゃないか?」
そして佐伯が持つヴァイオリンに視線を送って、
「お前にはそれがあるだろ? 演奏に乗せてみろ」

青野くん(青野一/声:千葉翔也)を練習に誘った佐伯が、渡り廊下で一緒に演奏する「アヴェ・マリア」。青野くんも驚くほど柔らかなヴァイオリンの音色に、オリビアや幼なじみのマリー(声:小山内怜央)と過ごしたドイツでの記憶が重なって……。
「…忘れないよ。…一音一音、俺の中に刻むから」
ああ、これだけで泣ける! 佐伯の思いが旋律に昇華していくデュオ、その演奏を担当する東亮汰さんと尾張拓登さんの協演がまたすばらしい。音に感情が乗っている、というか。その融合が「青オケ」ならではで、これ、Season1の「カノン」にも匹敵するなぁ……。
そして物語は、ハルちゃん(小桜ハル/声:佐藤未奈子)も楽しみにしていた、合唱部との合同クリスマスコンサート本番を迎えます。
オケ部と合唱部が刺激し合い、新たな世界が

続く第14話「クリスマスコンサート」は、会場である教会特有の残響音も魅力的なコンサートの模様をたっぷりと。全国コンクールに続く、音楽メイン回ですね。合唱部もオーケストラ部と同様、全国屈指の強豪。その精鋭たちにオケ部が合唱で参加した「もろびとこぞりて」、オケ部の演奏と合唱部の歌唱による「アヴェ・マリア」、そしてヘンデルのオラトリオ『メサイア』から「ハレルヤ・コーラス」の3曲という、クリスマス・ムード満点のセレクションでした。司会を務めた合唱部部長・本郷しほり(寿美かのん)先輩による楽曲解説もいい感じで、流れる音楽を聴いているだけでも満足度が高く、心が洗われた方も多かったのでは?

と同時に、前回に続いて佐伯と母・オリビアとの描写も。佐伯がスマホでオリビアにメールを打とうとして躊躇するアバンや、幼少期の佐伯がオリビアに手袋をプレゼントされるシーンはアニメ・オリジナルの演出ですが、それが極めて自然に物語に溶け込んでいます。「アヴェ・マリア」が流れる前の佐伯のモノローグ、
「これは…聖母マリアに救いを求め、祈る歌」
が、じわりと心に沁みます。しかも、原作でも描かれているりっちゃん(秋音律子/声:加隈亜衣)と母・司(声:豊口めぐみ)のエピソード(司さんはりっちゃんの演奏する姿を見たいとずっと思っていたけれど、仕事の都合でコンサートに来られなかった)と、“母の我が子への思い”という点で重なっていて、スパイスとして非常に効いている、と。司さんは偶然、青野ママ(声:斎藤千和)の隣の席に座って(お互いに面識はなかった)、2人が子どもの成長に涙しているところも良かったですね。
そんな合唱部との合同コンサート、互いの存在を意識しながら切磋琢磨して、音楽を進んでいくことは青野くんにも大きな発見があったようで、
「…新しい世界をまた一つ知れた気がする」

コンサート後、雪が舞う帰り道を佐伯と歩く青野くんは、演奏を終えた達成感を感じながらも若干の寂しさを覚えたようでした。ああ、わかる。心の中にあった何かが、消えたような気になるんですよね。そんな青野くんに声をかけてきた本郷先輩は、
「またいつか一緒に演奏できるといいですね!」
その言葉で心を埋められるものが、きっとある。原作では合唱部の登場は今回限りだけれど、いつの日かアニ・オリで見られることを願っています。
こうして海幕高校オーケストラ部の冬イベントは幕を閉じたのでした。そして佐伯はメールではなく、オリビアに電話を……。
誕生日を迎えた青野は、合同オーケストラに参加
第15話「新しい景色」は、年が改まって、山田くん(山田一郎/声:古川慎)を加えた1年生5人で元旦の初詣に出かけるところから。実は1月1日は、青野くんの誕生日。サプライズでプレゼントを渡す計画でしたが、青野くんが髪を切ってきたことにみんなびっくり。これまで片目しか見せていなかった青野くん(Season2のオープニングで、既に両目見せ青野くんは登場していました)の、大きなビジュアル・チェンジです。

心の中で「新しい髪型の青野くんもかっこいいです~~」と呟いたハルちゃん。しっかり惚れ直しましたね!
参拝後に、みんなで引いたおみくじは、青野くんだけが「凶」でした。もやもやした思いを抱える青野くんですが、おみくじに記されていたのは「待ち人来たる」。それは何を意味するのか……?
新年最初の部活の日。オケ部は、3月に行われる春の定期演奏会に向けた活動をスタートさせます。もうひとつ、鮎川先生が部員たちに伝えたのは、「世界ジュニアオーケストラコンクール」が新たに創設されて4月に開催されること。日本の高校生の有志で合同オーケストラが編成され、日本代表として他の国の学生オーケストラと競い合うというもので、参加は学校単位ではなく個人。参加すれば定演よりも合同オーケストラが優先となります。
「楽しそうだ」と考えた佐伯と「今の自分を試してみたい」というハルちゃんは早速参加を希望しますが、青野くんは定演のことも考えて悩みモード。とはいえ「一定の実力があるお前が行けば、より得るものが多いと思う」という鮎川先生や、定演に集中するために不参加を決めた2年生たち、そして
「君が抜けたところで、こっちは何も困らないから。ただし、行くからには、盗めるものは盗んできてね」
という佐久間優介(声:神谷浩史)の言葉に背中を押され、参加を決めました。一方、りっちゃんは、もう少し先輩たちに教わって部活に集中したいという立花さん(立花静/声:Lynn)から「興味があれば参加してみれば? 秋音ならどっちでも成長に繋げられるでしょ?」と言われますが、自分なりに考えたうえで参加しないことに。ここから、それぞれが自分の選択した道を進むことになります。

その合同オーケストラ、ヴァイオリン・パートのオーディションに参加していたのは、音大付属校の生徒など、明らかにプロ志向の高校生たち。彼らにとって青野くんは、やはり「あの」青野龍仁(声:置鮎龍太郎)の息子で、青野くんはオーディション会場で再びトラウマを抉られることになります。中でも、直近の全国コンクール優勝者・昴 雪人(声:斉藤壮馬)は佐伯に親し気に語りかけますが、青野くんに対しては「もう辞めたと思ってたから」と口にしながらも敵愾心がありあり。
「俺は…今でも『青野龍仁』の息子で、あいつらにとっては『過去の人』だ」
青野くんは、鬱屈した思いをオーディションでの演奏(課題曲は、かつて青野くんがコンクールで優勝したときに弾いたメンデルスゾーンの「ヴァイオリン協奏曲」)にぶつけたのでした。
超強烈な指導者に接して、青野は何を思うのか?
そして第16話「巌虎玄六」からは、合同オーケストラによる世界ジュニアオーケストラコンクール編とも言うべき物語となっていきます。海幕高校オケ部からオーディションを受けたメンバーは全員が合格して、一安心しつつ練習会場に足を運んだ青野くんですが、コンマス席に座っていたのは、山茶花音大付属の生徒・昴。その鮮烈な音(演奏:成田達輝)を聴いて、青野くんは大きな衝撃を受けます。

心臓が早鐘のように打ち、脳裏に浮かんできたのは、父・龍仁にかつて言われた、
「上には上がいることを忘れるな」
そして合同オーケストラでの青野くんの座席は、最後列で……。
もう1人、超強烈な個性で青野くんたちを圧倒するのが、日本代表オーケストラの指揮者兼総合指導者の巌虎玄六(声:松山鷹志)です。海外のオーケストラを中心に活動する指揮者で、その厳しい指導には定評があります。
どのくらい厳しいかと言うと、練習初日から演奏者に対して「もう一度」を繰り返し、満足する演奏ができないときは怒り心頭で、
「何がダメなのか、頭で考えながら吹け、バカ野郎!!」
と言い放つ人物なんですよ。それでも、一切のくるいを許さず、ひとりひとりの音を聞き逃さない。理想の音が形になるまで追求し続けるという、真摯な姿勢も持っていて。

要求以上の演奏が出来たときには別人のような笑顔で褒めたたえ、全体練習に付いていけない生徒は時間がかかっても最後まで指導して、フォローを欠かさないという……。
改めて考えてみると、巨匠と言われた指揮者にも、オーケストラに対してむちゃくちゃ厳しい要求をする方々がいましたね。セルとか、ムラヴィンスキーとか、チェリビダッケとか。賛否はあるだろうけど、光輝く音楽を作り上げるために、もっと上を目指すためにはどうすればいいのか、という音楽に対する考え方を、「青のオーケストラ」という作品は深掘りしている気がします。
もっとも佐伯は巌虎の指導に「俺は嫌いだけどね」と言い、青野くんと2人で弾いているほうが楽しい、という立場を崩しません。巌虎を前にした演奏でも、自分の考えを明確に音に乗せていきます。

そんな佐伯に対して、巌虎は彼の母・オリビアと共演した思い出を語り、「楽しい」が音楽の基盤であることを認めながらも、さらに上手くなりたい、良い音を出したいという「飢え」に応えてやりたいという自らのスタンスを説明していきました。その話を一緒に聞いていた青野くんの演奏が、今後どう変わっていくのか? 次回以降、大いに楽しみです。
ちなみに今回から「放送100年 N響×アニメ『青のオーケストラ』スペシャルコンサート」でも演奏されていた、芥川也寸志の「交響管弦楽のための音楽」が登場しています。これから劇中でも曲の詳細が説明されると思いますが、この曲に馴染みのない方は事前にご一聴いただくと、作品鑑賞の“解像度”が上がること間違いなしです!
*次回の記事は、第21話の放送前、3月1日(日)の午後1:00の公開予定です。
アニメ「青のオーケストラ」Season2
毎週日曜 Eテレ 午後5:00~5:25
毎週木曜 Eテレ 午後7:20~7:45 (再放送)
【NHK公式ホームページ】はこちら(ステラnetを離れます)
【NHK ONEの見逃し配信】はこちら(ステラnetを離れます)
【アニメ「青のオーケストラ」公式サイト】はこちら(ステラnetを離れます)
各配信サイトの一覧はこちら(ステラnetを離れます)
カツオ(一本釣り)漁師、長距離航路貨客船の料理人見習い、スキー・インストラクター、脚本家アシスタントとして働いた経験を持つ、元雑誌編集者。番組情報誌『NHKウイークリー ステラ』に長年かかわり、編集・インタビュー・撮影を担当した。趣味は、ライトノベルや漫画を読むこと、アニメ鑑賞。中学・高校時代は吹奏楽部のアルトサックス吹きで、スマホの中にはアニソンがいっぱい。