アニメ「青のオーケストラ Season2」の1か月分の内容を、極私的レビューとして紹介! 今回は第9話から第12話、コンクール全国大会での海幕高校の挑戦と、青野くんに対するりっちゃんとハルちゃんの揺れ動く感情が描かれた12月の「青オケ」を、“まるっと”振り返っていきましょう。

期待と不安が入り混じる結果発表。海幕高校、連覇なるか?
まず第9話の「バッカナール」では、全日本学校合奏コンクール全国大会での海幕高校オーケストラ部の演奏をたっぷりと。演奏曲はサブタイトルどおり、サン=サーンス作曲の歌劇『サムソンとデリラ』より「バッカナール」。部員たちが指揮の鮎川先生(声:小野大輔)を見つめる緊張の一瞬、そしてタクトが振られると……。
いや、すごいな、これ! 青野くん(青野 一/声:千葉翔也)の息遣いなどを除いて一切セリフがなく、若干の回想と演奏シーンで8分近くを見せ切っちゃった! 3DCGで描かれた演奏は、弦楽器の弓の動き、管楽器奏者の運指、打楽器が刻むリズムまで、絵と完全にシンクロしていて。フラメンコカスタネットを膝上で完璧に鳴らすアニメ作品なんて、今までなかったよね!? これまで描かれてきた青野くんたちの取り組み、部員間の不協和音、それぞれの葛藤が、全て演奏に収斂していくことになります。
この曲自体が英雄サムソンの激しい怒りを表現し、巨大なエネルギーを内包していることもあって、曲のパワーで押し切った印象のある前半部分でした。

演奏終了後、結果発表を前に他校の演奏が上手く聴こえてしまう青野くん。不安を抱えながらも、自分たちも全力でやりきったと考える彼に、佐久間優介(声:神谷浩史)が声をかけます。
「まあ、今は自分の手応えを信じてもいいんじゃない?」
あれ、少しデレた!?(デレてません)
結果発表で、最優秀賞を目指す学校が、優秀賞の段階で「名前を呼ばれませんように」と願ってしまう感覚、「おめでとう」の声に抱く悔しさは、コンクール特有のものですね。そして海幕高校は……、最優秀賞を受賞して全国大会9連覇を達成! 表彰式の終了後には、滝本さん(滝本かよ/声:渕上舞)がオケ部に籍を残して練習に参加しなくなることを部員たちが受け入れ、“コンクール・パート”とも言うべき物語は、ひとつの区切りを迎えることになります。

打ち上げで訪れたファミレスで、青野くんは9連覇の高揚感も手伝って、つい気安く佐久間に話しかけてしまい。「いいよ? 君がそのつもりなら……、今から今後のオケ部についてとことん話し合おうか」と言われるのでした。
チーン……(終了のお知らせ。第7話Cパートと同じく「がんばれ少年…!」の気分になりますね。笑)。
私なんか居なければと落ち込むハルに、青野は……
第10話「らしさ」では、青野くんに思いを寄せているハルちゃん(小桜ハル/声:佐藤未奈子)の揺れ動く気持ちや、晴れたり曇ったり、お天気のように変化する表情が魅力的に描かれています。ヴァイオリンをメンテナンスに出すために楽器店へ行こうと、青野くんと待ち合わせをしたハルちゃんが、青野くんを見つけて笑顔を見せるシーンは、もう何度もおかわりできますね!

前半はモノローグが中心で、2人とも相手との距離がつかめずに、どういう顔をすればいいのかわからないまま固まって……。青春ものらしい“キュン”が全開。ハルちゃんは「『デート』なんて、そう思ってるのは私だけで…」なんて言っていたけれど、絶対に記念すべき「初デート」ですから!(力説) 恋愛ごとに疎い青野くんは、そう思っていなかったようだけど。いや、ハルちゃんじゃなくても頭が真っ白になりますよ。
楽器店を出た後、2人は食事するために商業施設のフードコートへ。ハルちゃんは自分からりっちゃん(秋音律子/声:加隈亜衣)の話を持ち出してしまって自己嫌悪に陥り「今日はネガティブ禁止…ッ!」と自分を戒めたり、青野くんとりっちゃんが親し気に話していた場面を思い出して傷ついたり。そこで見せる表情のひとつひとつが魅力的でした。
ところが青野くんが席を外したとき、ハルちゃんの前に現れたのは……。

中学時代にハルちゃんをいじめ、りっちゃんが不登校になる原因を作った篠崎加奈(声:鈴代紗弓)! 篠崎さんは相変わらずの態度で金をせびり、ハルちゃんは恐怖で動けなくなって、涙が止まらなくなります。“キュン”が一転、もう地獄のようで……(涙)。
でも、戻ってきた青野くんが、スーパーヒーローだった! ハルちゃんの態度を見て状況を察した青野くんは、次々と許せない言葉を投げつけてくる篠崎さんに、
「小桜さんに謝れよ」
と、強い態度で謝罪を求めたのでした。結果、篠崎は「ごめん……」の言葉を口にして(絶対、そう思ってない顔だったけれど)退散。青野くん、よくやった!

それからハルちゃんは、弱くて何もできない惨めな私を知られてしまったと落ち込みながらも、ちゃんと言わなきゃと心を決め、中学時代の話をし始めます。母親が仕事を辞めて、転校するために引っ越ししたこと。いじめの対象がりっちゃんに移ったと知ったこと。黙って話を聞いていた青野くんでしたが、ハルちゃんの「私が、あの人達の人生を壊してしまった。私なんか居なければ……」という言葉に、
「それだけは絶対に違う!」
青野くんは自分が感じている、ハルちゃんの周囲に対する気配りをひとつずつ挙げていきます。会話に入れない人への話しかけ、楽器倉庫の楽譜整理、誰かが忘れたドア閉め……。その人の「らしさ」って、そういうところにあるんじゃないか。だから「高校生の小桜さんが、本当の小桜さんなんだと思うよ」と言って笑顔を浮かべた青野くんに、ハルちゃんは救われて……。
「ネガティブになっちゃダメだ…! 今の自分を変えていかなきゃ」
次の一歩を踏み出す決意をしたのでした。頑張れ、ハルちゃん! 「青オケ」正ヒロインの座に向かって走り出すんだ……。(そういう話ではありません)
え、ちょっと待って。りっちゃん、え、えええ!
第11話「プレゼント」は、“青ハル・デート”(と勝手に命名)の翌日から。一歩進んだ感のある2人だったのに、青野くんはメンテナンスに出したヴァイオリンの受け取りを母親に頼んでおり、一緒に取りに行く心づもりだったハルちゃんを当惑させて……。ホント、青野くん、そういうとこだぞ!

そんな青野くんに、りっちゃんから頼みが。母親の誕生日プレゼントに、母が好きなバッハの「2つのヴァイオリンのための協奏曲」を弾きたいから教えてほしい、代わりに勉強を教えてあげるから、というものでした。
2週間後。りっちゃんの家を訪ねた青野くんは初めて女子の部屋に通されて、微妙に意識してしまうことに。もちろん、りっちゃんは何も気にしていませんでしたが。帰宅したりっちゃんの母・秋音 司(声:豊口めぐみ)は新聞社勤務で、りっちゃんからいつも青野くんの話を聞いていたから、とてもフレンドリー。りっちゃんを頑固だと語る司さんは、そのブレないところが羨ましいと言った青野くんに「こんな良い子が律子の彼氏なら大歓迎よ!」と笑って、青野くんを慌てさせます。
そして司さんのために青野くんとりっちゃんが奏でる、「2つのヴァイオリンのための協奏曲」。今回は7分40秒近くの演奏で、そこに2人のモノローグやりっちゃんの子ども時代の回想が重ねられていました。(青野 一のヴァイオリン演奏を担当している東 亮汰の、この曲に対するコメントはこちら)

その演奏は、2台のヴァイオリンが繰り広げる音の対話。「Season1」冒頭のりっちゃんの演奏を知っている視聴者にとっては、彼女がどれだけ練習を重ね、いかに上達したのかが伝わってくる演奏ですね。
このシーンの回想からわかってくるのは、司さんはりっちゃんの育ての母(おそらく産みの母は青野くんが「親戚の人かな?」と考えた、フォトスタンドの中の女性)で、りっちゃんとの関係を築くのに、かなりの時間を要したこと(まだ距離のある、少女時代のりっちゃんを巧みに演じた加隈亜衣さんの声の演技がお見事!)。司さんが抱えていた母親としての不安や葛藤も伝わってきます。
改めて思うけれど、「青オケ」って高校生たちの青春を描く一方で、彼らを見守る大人たちの心の動きも見逃せないんですよね。青野ママ(青野優子/声:斎藤千和)しかり、中学時代の恩師・武田先生(声:金子隼人)しかり、ハルちゃんママ(声:佐藤利奈)しかり……。滝本さんに医学部進学を強要していたお母さんだって、娘に対する愛情がなかったかというと、決してそんなことはないわけで。それが物語に厚みを与えていると思うんです。
今回で言うなら、りっちゃんの演奏を聴いている司さんのモノローグ、
「今思えば私、あなたに『お母さん』にしてもらった気がする」
子育て経験がある人もない人も、めっちゃ感情移入できますよね? 聴き手がそんな気持ちを持っているのを理解しているかのように、りっちゃんは、
「今の私の全力を見せるんだ…!」
と、演奏に魂を込めて。あっという間に成長していく姿に、嬉しいような、寂しいような感情が湧き上がってくる司さんに、見ている側もただ涙……。
演奏が終わって帰宅しようとする青野くんに、司さんは玄関先で再び「青野くんが律子の彼氏なら大歓迎だよ?」の大プッシュ。その声は、りっちゃんにも届いており、小さな声で「…お母さんのバカ」。
青野くんを見送りながら、今夜の演奏を褒められたことを喜びつつも、突然の感情が湧き上がって彼に駆け寄って、その頬に唇を……!!!
え、あ、ちょ、マジで?見事な作画で描かれた、いきなりの急展開。何が起きたか全く理解できないでいる青野くんに、りっちゃんが浮かべた表情の意味は……!?

合唱練習で、母譲りの美声を響かせたのは……
衝撃の急展開から1週間後に放送された(イッキ見放送では昨日でしたね)第12話「合唱」は、あの日の3日後。期末テストを控える青野くんは、当然ながら、勉強に全く集中出来ない日々を過ごしていました。佐伯 直(声:土屋神葉)から「で? どっちにするの?」と聞かれ、それが世界史問題の解答を選ぶ問いかけにもかからわず、思わずりっちゃんとハルちゃんの後姿を思い浮かべたり。あああ、これは完全に動揺してますね。

りっちゃんとハルちゃんは普段と変わらない口調で青野くんに話しかけますが、実は気持ちの整理ができないままであることが、細かい仕草から伝わってきます。りっちゃんは時折、顔を伏せたり、後ろ手を握り締めたり、足を動かしてみたり……。一緒に試験勉強をしていると、あの日の突発的な行動を振り返るモノローグが重って。
「…なんで私……、あんなことしたんだろ」
「ていうか私…、青野のこと…?」「いつからだろう?」
「…なーんで気付かないかなあ?」
ここにきて、りっちゃんも胸の中にあった感情をはっきりと自覚したのでした。明日から、どんな顔をして会えばいいのか? 複雑な表情のりっちゃんが、何とも切なくて。翌朝、学校でいつもどおりに行動しようと笑顔を作っても、心臓は早鐘のように鳴って、でも「…今は、もう少しこのまま……」と自制して……。
言うまでもなく、りっちゃんとハルちゃんは、お互いに相手の心が青野くんに向いていることに気づいていません。大人の恋愛ものなら修羅場に突入しそうなところだけど、そこは高校生ですからね。微妙な恋愛トライアングルは、現状維持のまま、しばらく続きそうです。

期末テストが終わり、オケ部では合唱部と合同開催するクリスマス・コンサートに向けての練習が始まります。コンサートでは特別プログラムとして、オケ部の部員たちも合唱に参加することに。合唱部のメンバーが、見本として讃美歌「もろびとこぞりて」を聴かせてくれました。その澄んだ歌声は、思わず青野くんも聴き入ってしまうほど。
そんな合唱練習で大活躍したのは、佐伯 直。「Season1」で出生の秘密が明かされた後に青野くんと和解し、定期演奏会で渾身の演奏を披露して以降は、やや見せ場が少なかった佐伯ですが、自分の声を完全にコントロールして、合唱部部長の本郷しほり(声:寿美かのん)が悔しがるほどの実力を青野くんに見せつけます。それもそのはず、彼の母親は、ドイツのオペラ団体に所属しているソプラノ歌手。普段はチェロを弾く山田一郎(声:古川 慎)とともに「もろびとこぞりて」テノール・パートを歌う佐伯は圧倒的な美声を響かせたのでした。ちなみに各キャラクターの歌声は、全て“中の人たち”のもの。声優さんのポテンシャルの高さ、凄いな……。
佐伯が歌の中で思い出していたのは、子どものころに見た、母親が背筋をピンと伸ばして歌う姿。
「……毎日子守歌のように聴いていた気がする」
今は離れて暮らす母のことを考え、「元気かなあ」という思いを気持ちに乗せた佐伯の歌声は、聴くものを魅了してやみません。
次回予告、佐伯のモノローグとして「あの頃の俺は 母に聴いてもらいたい その思いだけで ヴァイオリンを弾いていた気がする」という言葉が提示されたので、彼の母への思いは、第13話「朝霧」で言及されていくことになるのでしょう。教会でのクリスマス・コンサートは、もう少し先。お正月は明けたけれど、脳内時間を少し巻き戻して楽しみましょう。さらにその先には、既にオープニングには登場しているあの人たちも姿を見せてくれるはず!
めっちゃ楽しみだ――!!!
*次回の記事は、第17話の放送前、2月1日(日)の午後1:00の公開予定です。
アニメ「青のオーケストラ」Season2
毎週日曜 Eテレ 午後5:00~5:25
毎週木曜 Eテレ 午後7:20~7:45 (再放送)
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カツオ(一本釣り)漁師、長距離航路貨客船の料理人見習い、スキー・インストラクター、脚本家アシスタントとして働いた経験を持つ、元雑誌編集者。番組情報誌『NHKウイークリー ステラ』に長年かかわり、編集・インタビュー・撮影を担当した。趣味は、ライトノベルや漫画を読むこと、アニメ鑑賞。中学・高校時代は吹奏楽部のアルトサックス吹きで、スマホの中にはアニソンがいっぱい。