アニメ「青のオーケストラ Season2」の1か月分の内容を、極私的レビューとして紹介! 今回は、ドラマチックとしか言いようがない音楽とアニメの融合、キュンキュンが止まらない王道の青春、その両方が光り輝いていた第17話から第20話まで。印象的なセリフをピックアップしながら、Season2のクライマックスへと進んでいく2月の放送を“まるっと”振り返っていきましょう。


Ⓒ阿久井真/小学館/NHK・NEP・日本アニメーション

父への複雑な思いを抱える青野くんの新たな決意

ここのところ、劇中で流れる音楽とアニメの描写がダイナミックに融合し、音楽ものとしてクオリティーがさらに上がった印象を受ける「青オケ」。青野くん(青野 一/声:千葉翔也)たちが奏でる芥川也寸志の「交響管弦楽のための音楽」の曲調もさることながら、芥川がこの作品を生んだ経緯や楽曲解釈とキャラクターの心情がダブル・ミーニングとなって、その対比が絶妙です。もちろん阿久井真先生の原作マンガがそうなっているからなんだけど、登場する音楽がリアルに聴けるところはアニメの面目躍如というか。流れた曲を脳裏に刻んで原作を読むと解像度がめっちゃ上がるし、キャラの気持ちをより深く理解できると、またアニメが見たくなるという……。無限ループに陥って、あっという間に時間が溶けてしまいますね。

ということで、第17話「偉大な父」では、青野くんたちが参加するジュニアオーケストラの練習が本格化する様子が描かれました。指揮者・巌虎玄六いわとらげんろく(声:松山鷹志)の厳しい指導の中、トランペット・ソロからオケの全体練習になだれ込んで、一気に盛り上がる演出は、まさに圧巻。佐伯 直(声:土屋神葉)も、巌虎と激しくやり合いながらも指導を受け、演奏をとおして、それまで知らなかった自分自身に出会えたことで、

「この人が求める音楽がどんなものなのか…、知りたい」

と思うようになります。佐伯が指導を受ける姿を見て、羨ましがる青野くん。そんな青野くんに「俺は青野くんも羨ましいけどね。だって、お父さんに教わってたんでしょ?」と話を向けてきたのは、すばるゆき(声:斉藤壮馬)でした。さらに、昴は……。

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「ねぇ、天才の父親を持つって、どんな気分?」

ああ、青野くんのトラウマを直撃だ……。もやもやした思いを抱えてしまう青野くんですが、「交響管弦楽のための音楽」を練習しながら、芥川龍之介という偉大な父を持った芥川也寸志の苦悩に、世界的ヴァイオリニスト・青野龍仁りゅうじ(声:置鮎龍太郎)の息子である自分の境遇を重ねずにはいられません。自分にとって、父・龍仁の存在とは何なのか……?
居残り練習後の帰り道、青野くんは佐伯を待たせて、昴の質問に答えます。

Ⓒ阿久井真/小学館/NHK・NEP・日本アニメーション

自分の中には「有名ヴァイオリニストの息子として苦しめる人」と「尊敬させてくれた人」の2人がいるような感覚だ、と。だから、青野龍仁の息子であることに「戸惑う」というのが正直な気持ちだと伝えた青野くんに対して、昴は「作曲者の気持ちに潜りたくて」話を聞いたのだと言い、嫌な思いをさせてしまったことをびるのでした。二世としての芥川の苦しみ、その気持ちを深く考えれば、もっと曲が見えてくるかも、と言う昴。そうか、彼の真意は、ここにあったのか!
翌日、座席順入れ替えのために再オーディションが行われることが周知されました。昴の言葉から、青野龍仁の息子であることはどうあがいても変えることはできない、と自覚した青野くんは、

「だったら…、過去の記憶を利用してでも…、俺はあいつを超えてやる」

そのために今の自分がやるべきことは何か? と、考え始めるのでした。


バレンタインのチョコに一喜一憂して……

第18話「それぞれの兆し」は、サブタイトルが「運命のバレンタインデー」でもいいくらい(笑)で、青春ストーリーの本領発揮です。チョコレートが飛び交うバレンタイン、海幕高校オケ部の部員たちも浮かれ模様で。青野くんの机の中には、明らかにチョコと思われる箱が……。

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これまでお情けチョコしかもらったことがない青野くんにとっては、青天の霹靂へきれきでした。そのころ、贈り主であるハルちゃん(小桜ハル/声:佐藤未奈子)は、机に忍ばせたときのことを思い出し、足をバタバタさせていて……。か、可愛かわいい!
とはいえ青野くんは、佐伯や山田くん(山田一郎/声:古川 慎)が既にりっちゃん(秋音律子/声:加隈亜衣)からチョコをもらっていることを知って気が気ではありません。え、俺は……? それが気になってしまい、1日中りっちゃんを目で追ってしまう青野くん。中学生か!
ヴァイオリンを教えていた去年だって、もらってなかったしな……。そんな思いを抱えつつ帰宅する青野くんを、駅の改札口でりっちゃんが待っていて。

Ⓒ阿久井真/小学館/NHK・NEP・日本アニメーション

差し出されるチョコに「俺だけもらえないのかと思った。良かった」と漏らした青野くんに、りっちゃんは、

「…そんなわけないじゃん。青野は特別だもん」

「中学のころからお世話になってるし?」と言葉を重ねていたけれど、絶対、それだけじゃないよね? この場面、いくつかの会話がアニメ・オリジナルで描かれていて……。うわぁぁぁぁぁ、悶絶もんぜつするな、これ。

一方、ジュニアオケの練習では、再オーディションに向けて演奏者たちの集中力が高まっていきます。ハルちゃんは練習の合間に青野くんからチョコのお礼を言われ、ヴァイオリンを弾くときのきれいな姿勢が勉強になっていると感謝されて、青野くんへの思いをさらに強くするのでした。
そんな思いを乗せてハルちゃんが弾く「交響管弦楽のための音楽」。そこに、チョコに添える手紙に一度は「ずっと好きでした」と書きかけたものの、それを消して「また2人で遊びに行きましょう!」にしたハルちゃんの回想が重なります。

「…もっと見てほしいな。魅せたいな」

そして今回の白眉は、練習帰りの電車で一緒になった、ハルちゃんと青野くんの会話。

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途中駅で乗り合わせてきた乗客の波に押されて、2人はドア近くで壁ドン状態。ぎこちない会話が続く中で、緊張のあまり敬語で会話してしまう顔を赤くした2人が微笑ほほえましくて。きっと周囲の乗客たちも耳をダンボ状態にして、ニマニマしながら会話を聞いていたに違いない(笑)。
ハルちゃんは話の流れの中で、青野くんにジュニアオケの先、ヴァイオリニストとして何を目指しているのかを問いかけます。そして「今は演奏する楽しさを、より深く追求してみたい」と言いながら照れている青野くんに「青野くんならコンマスになれるよ!」と伝えつつ、そのときに隣で演奏できるように頑張るから……、と言葉をめたハルちゃんは、青野くんをまっすぐに見つめて、

「もし、それが実現できたら…っ、ずっと青野くんに言えなかった話を聞いてもらえますか…!?」

言った! ついに言ったぁ!!! そんなハルちゃんの言葉に「うん!」と即答する青野くん。えっ……? これ、真意をわかってないよね……。気を取り直したハルちゃんは「2回目の約束だよ…!」と言っていたけれど、彼は1回目の約束も覚えてなかったからなぁ……。


昴が見せた「本性」。彼もまた、父親との確執が

第19話「本性」では、コンマス席に座る昴雪人が抱えていた事情が明らかになります。彼の卓越した演奏テクニックや、音楽へのしんな向き合い方は(ちょっとムカつくけれど)青野くんも認めていて。それでも何を考えているのかわからないと悩む青野くんを気遣うように、海幕高校オケ部のコンマス・羽鳥 葉(声:浅沼晋太郎)は、

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「どういう人であれ、青野なら上手くやれるだろ。お前のホーム・・・のコンマスが保証するよ」

とエールを贈りました。
そしてジュニアオケの座席順を入れ替えるオーディションが始まります。1stヴァイオリンの降り番(練習には参加できるが、補欠要員でステージには立てない)は、2人。オーディションは演奏会会場のようなホールで行われ、自分が座りたい席次を決めて2人1組で演奏に臨む、というものでした。席次による演奏意図の表現が求められることになります。オーディションのペアは、佐伯と昴、青野くんとハルちゃんで、まずはともにコンマス席を希望する佐伯・昴ペアの演奏がスタート。

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「オーディションだけど、オーディションじゃない。これは演奏会…」

ピアノ伴奏は、山茶花さざんか音大ピアノ科講師であるとき先生(声:清水理沙)が務めます。“1人オーケストラ”と称されるようにピアノで各パートの音色の違いを表現できる技巧の持ち主という設定ですが、それを演奏で体現する“中の人” 松田華音さんのピアノに言葉を失いました。すごいぞ、この演奏は!
佐伯は満員の観客をイメージしながら、気持ちのいい残響に身を委ねながら、楽しそうに「交響管弦楽のための音楽」を弾いていきます。第1楽章、そして第2楽章。頭の中に存在するオケ全体を見渡しながら、審査されていることも忘れて「客席の一番遠くまで届け!!」という思いを音に込める佐伯。「交響管弦楽のための音楽」が、ピアノ伴奏+ヴァイオリン版、ヴァイオリン・ソロ版、弦楽セクション版、オーケストラ版と聴ける贅沢ぜいたくさときたら!

続いては、昴の演奏。この曲に対して彼が明確なイメージを持っている(曲が生まれた当時、戦後日本の情景も描かれていました)と同時に、自分の力ではあらがえない壁に挑んできた自身の鬱屈した思いが浮かび上がってきます。

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「この感情を伝えられると思うと、ぞくぞくする」

音大付属校を志望した昴と、その選択に反対する父親との確執。音楽を仕事にしたいなら結果を出すよう求める父親は、昴にとっての巨大な壁でした。少年時代にヴァイオリン・コンクールで一度も勝てなかったのが、天才少年と呼ばれていた青野くん(Season2の第9話でも描写されていましたが、青野くんが第1位になったコンクールで昴は第5位)であり、それでもけんさんを重ねてついに全国1位となった瞬間。その激流のような感情を曲にたたきつけ、壁を越えて新しいものを作るんだという姿勢を、審査する巌虎たちに見せつけていきました。


青野くんが希望したのは……最後方の席!

第20話「超える」は、青野くん・ハルちゃんペアのオーディション。ちなみに、これまで「青オケ」のサブタイトルは、原作マンガと同じものが付けられていましたが、今回は例外。その意味するところは視聴しているとわかってきます。物語としては、青野くんたちの演奏と結果発表というシンプルな流れですが、音楽にモノローグで重ねられるキャラクターたちの心理描写が絶妙。とても「青オケ」らしい回になっていました。

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オーディションでハルちゃんが選んだのは、コンマスの隣の席。ところが青野くんは意外なことに、あえて最後方の席を希望しました。その意図は……?
2人の間に、かなりの距離がある状態で始まったオーディション。第1楽章、2台のヴァイオリンが奏でる音は完全にシンクロして、審査員たちを驚かせます。離れた距離を計算したうえで、ハルちゃんの良さを引き立てる青野くんの演奏。そのフォローを受けての第2楽章、ハルちゃんの演奏に劇的な変化が現れました。まさにハルちゃん覚醒! ジュニアオケの入団オーディションで彼女の演奏を「貪欲さが感じられない」と評した巌虎が、その考えを改めるほどに強くて太い音で……。
実は青野くんは、オーディション前、海幕高校オケ部の前コンマス・原田先輩(声:榎木淳弥)からアドバイスをもらっていました。長い期間、ソロで弾いてきた自分にとって、そのことが弱点になっている気がすると危惧していた青野くんを、原田先輩は「音量もあるし、ミスなく演奏もできる。縁の下の力持ちのような、職人技も向いてるよね」と評して、

「青野くんが後ろからパートを支える意識を持ったら、みんなはより演奏しやすくなるんじゃないかな?」

このオケでしかできないことを全力でやる。青野くんの演奏を聴いて、「期待以上だ。自分のせ方を知ったようだな」とつぶやく巌虎。父・龍仁とは違うやり方で上を目指そうとする彼の決意を感じ取ります。
ソロだけがヴァイオリンじゃないし、コンマスだけがヴァイオリンじゃない。全部に良さがある、という原田先輩の言葉を胸に刻んで、気迫のこもった演奏で訴える青野くん。

Ⓒ阿久井真/小学館/NHK・NEP・日本アニメーション

「俺は、全部を手に入れて、親父あいつを超える━━!!」

そこに芥川也寸志がのこした父に対する言葉が、字幕で表示されて……。
翌日の結果発表。コンマス席を手に入れたのは昴で、佐伯はその後ろ、第2プルト表に。ハルちゃんは第3プルト表で、青野くんは希望どおり第5プルト表に座ることになりました。
巌虎が講評とともに伝えたのは、新しい自分を魅せた者を評価した、ということ。今回のオーディションで世界に向けて新しい音楽を創れることを確信した、と述べるとともに、このオーケストラで指揮棒を振れることに感謝しながら、約1か月後のコンクール本番に向けて

「『ここに将来のクラシック界を担う人間がいるぞ!』と、世界に発信してやろうじゃないか!」

と、オーケストラを鼓舞したのでした。その後、青野くんは昴に「俺は自分のやり方で、父親を超えたいと思っています」と宣言。全部を手に入れて、必ずいつか……。

いよいよ次回はSeason2最終回となる第21話。サブタイトルは「卒業」。どうぞ、お見逃しなく。


アニメ「青のオーケストラ」Season2

毎週日曜 Eテレ 午後5:00~5:25
毎週木曜 Eテレ 午後7:20~7:45 (再放送)

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カツオ(一本釣り)漁師、長距離航路貨客船の料理人見習い、スキー・インストラクター、脚本家アシスタントとして働いた経験を持つ、元雑誌編集者。番組情報誌『NHKウイークリー ステラ』に長年かかわり、編集・インタビュー・撮影を担当した。趣味は、ライトノベルや漫画を読むこと、アニメ鑑賞。中学・高校時代は吹奏楽部のアルトサックス吹きで、スマホの中にはアニソンがいっぱい。