「新・介護百人一首」は介護にまつわる思いを詠んだ短歌を募集し、入選作品100首を発表する取り組みです。
ラジオ深夜便、2月22日の早朝4時台「明日へのことば」のコーナーで2025年度の入選作品が紹介されます。
ゲストはノンフィクション作家の柳田邦男さん。そして「新・介護百人一首」選者で歌人の花山周子さんのお二人。桜井洋子アンカーとともに先日収録が行われました。
その様子をほんの少し、ご紹介します。
【皿を洗う水音に紛れ深呼吸心をととのえまた寄り添わむ】
東京都 青山将司 42歳
作者がこの歌を詠んだときの様子を伝える詞書です。
介護の合間にふと訪れる小さな疲れ。水音に身を委ね深呼吸することで、自分を立て直し、再び優しさをもって向き合う姿を描きました。
ゲストのお二人は、介護する側の葛藤と、もう一度立ち上がってくる“意思”に思いを寄せました。
柳田さん 介護する側は絶えず葛藤の中にあると思うんですね。ケアする側も挫折感があるだろうと思うんです。そういう挫折感が「水音に紛れ深呼吸」という表現で、深いところの心理状態がよく表現されていますね。でも大事な家族に寄り添うことから逃げようとはしない。
なかなかに複雑な葛藤を短い中で表現されていて感動を受けますね。
花山さん 介護って時間の切れ目のない、一日中ずっとやっていなきゃいけないことだと思うんです。その中で一人の時間を確保することってとても難しくて。シンクにうつむいてお皿を洗っている時間だけが、おそらく一人になれる時間なんじゃないかなと。
流水で作業している最中に、「水音に紛れて」という表現がすごく切実な感じがして。そして、流水の中で心をととのえて、「また寄り添わむ」という、意思がもう一度立ち上がってくるというのが本当に良い作品だなと思いました。

【施設行く朝父が言う微笑んでおまえの介護嫌じゃなかった】
大阪府 高橋 直子 61歳
作者の詞書です。
介護疲れから喧嘩が絶えず、ついに父親の施設入所に踏み切りました。入所日の朝になり、父が穏やかな笑顔で私に言った言葉でした。嫌だったと言ってくれないと行かせられないじゃない。泣く泣く別れました。
この短歌について、柳田さんはお父さんの、花山さんは歌を詠んだ娘さんの気持ちに寄り添ってコメントしました。読む側の立場によって変わる短歌のあじわい方にも気づかされました。
柳田さん 男っていうのはわがままだと思うんですよね。介護を受けている立場でもどちらかと言うと文句の方が多くなる……。でもね、心のどこかではやっぱりありがたい、家族っていいもんだっていうのがあるわけなんですよね。そんな微妙な男の心理状態、それをこの「嫌じゃなかった」っていう、平凡な表現だけれど、それをよく表しているなと思いました。
花山さん これ、私泣きそうになった歌で……柳田さんがお父さん側の立場からこの歌を読んでくださって、私はまさに娘の側からこの歌を読んでいました。
去年父が亡くなりまして。生前、喧嘩もずいぶんした父と娘だったので、この感じとてもわかります。娘さんの中にきっと後悔もあるのでしょう。
でもお父さんがその時に言った「嫌じゃなかった」という言葉は、お互い喧嘩しながらもやっぱり愛情が伝わっていた、その救われる感じっていうのも同時にあって……。
お父さんの「嫌じゃなかった」という言葉が、これからも娘さんの心に残るんじゃないかと思いました。
当日の放送では、このほかの作品も取り上げられる予定です。
さらに収録では、ゲストお二人の介護に関する経験や、介護短歌の意義などについてもお話しいただきました。
介護を通じて感じた様々な思いを三十一文字に込め、これまで自分だけの経験だったものを誰かと共有できる介護短歌。放送をお楽しみになさってください。
ラジオ深夜便/ラジオ第1(R1)
明日へのことば「寄り添う心を介護短歌に託して~2025」
2月21日(土)のラジオ深夜便 午前4時台 (実際の時刻では22日[日]の朝4時[予定] )
また、放送後1週間はらじる★らじるでもお聞きいただけます。
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「新・介護百人一首2025」の入選100首は、ホームページからお読みいただけます。
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また今年度の入選作品100首を収めた作品集を、ご希望の方に無料で頒布しております(送料190円分のみご負担いただきます)。
お申し込み方法の詳細は上記のホームページよりご確認下さい。
「新・介護百人一首」は今年も4月中旬から募集開始予定です。詳細も後日、ホームページでお知らせいたします。皆さんからの短歌をお待ちしています。
(NHK財団 展開・広報事業部 岡部桃香)