介護する、されるなど、介護にまつわる素直な思いを詠んだ短歌を募集する「新・介護百人一首」。NHK財団とNHK厚生文化事業団が主催して5年目を迎えました。今年は去る9月12日に応募が締め切られ、10月末、選者をお願いしている5人の歌人の先生方による最終選考を経て、入選の100首が決定しました。

入選作品は、「新・介護百人一首」のホームページで紹介しています。(※ステラnetを離れます


選考会の様子(2025.10.30)

今年は、全国の9歳から103歳まで、5,840人の方から12,943首をお寄せいただきました。ご応募くださったみなさま、ほんとうにありがとうございました。

選考会は今年もナレーターの、まるものぞみさんに一首一首大切に読み上げていただき、ご応募いただいた短歌が伝えたかった思いは何か、選者の先生方と一緒に読み解きながら、歌の情景を想像していきました。
どうして作者はこのように感じたのか、この表現によって短歌が生き生きとすばらしいものに感じる、また、こう表現を変えてみたほうがさらによくなるのでは、など、具体的に話し合いながら、100首を選定していきます。
中には胸が苦しくなるような歌も、ちょっとクスッとしてしまうような微笑ほほえましい歌もありました。それぞれの歌の持つ味わいとともに、そこには介護現場のリアルな日常が広がっています。

さて、今年は、どのような歌が寄せられているのでしょうか。最終選考会で選者の皆さんに感想を伺いました。

(春日いづみ先生)
若い方々のご応募が増え、短歌への関心が高まり、短歌に触れる機会が増えていることに希望を感じます。そして、作品のレベルがさらにアップしてきているように感じます。介護する、されるはいつ誰に起こるかもしれません。常に自分ごととして選歌しています。

(桑原正紀先生)
「新・介護百人一首」の大会が、着実にいてきているように感じています。今年も100首に絞り込むのが苦しいくらい迷う、よい歌がたくさんありました。

(小島なお先生)
昨年から参加をさせていただきましたが、こんなにもあたたかい大会があるんだと驚いています。作品の選考過程から、1作品ごとに時間をかけて作者の思いを想像し、さらに「入選者のつどい」のように作者と交流する機会もあるなど、作品の向こうにある作者の心を感じることができる大会だと感じています。

(笹公人先生)
自身の短歌会やほかの短歌大会で、作品集を配らせていただいていますが、いつも大変喜んでいただいています。今年は、若い方たちのご応募が増えただけでなく、そのレベルもアップし、入選率も上がっているように感じます。

(花山周子先生)
今年は、介護の現場でご本人ができることを最優先に考え、介護される方を尊重したいという思いを込めた歌が多かったように感じます。毎年選考を行っていても、その年により介護に対する傾向に変化があります。「新・介護百人一首」の選考自体が、私自身にとっても体験であり、選考する前と後では、私自身も何かが変化しているように感じます。毎年貴重な体験をさせていただいています。

左からナレーターまるものぞみさん、桑原正紀先生、小島なお先生、春日いづみ先生、花山周子先生、笹公人先生

事務局からも感想をひとこと。
今年も介護の実習を終えた多くの生徒さん、学生さんが応募してくださいました。「新・介護百人一首」もコロナ禍を経て5年目。一時は実習を行うことができないつらい時期もあったようですが、ずいぶん復活してきているように感じます。短歌の一つひとつを読ませていただくと、認知症などにより、なかなかご自身を覚えてもらえないもどかしさ、実習を通じて祖父母への接し方に変化が生まれた気づき、また、利用者の方との楽しいふれあいの時間、最後には本当に切なく悲しい別れ……。こうして生徒・学生のみなさんは、たくさんのことを吸収して、大きく育っていくのだなと頼もしく感じました。

今年は、介護する・される、介護職を目指す方、ヤングケアラーなど、様々さまざまな立場の視点から介護に向き合う作品が寄せられました。その一つひとつにドラマがあり、読む人の心に響きます。
「新・介護百人一首」を通じて、こうして温かな気持ちを共有できることは本当にすばらしく、いつも多くの応募作品に励まされています。

入選作品は、「新・介護百人一首」のホームページ上で紹介しています。(入選作品はこちら※ステラnetを離れます

きっとあなたを励まし、支えてくれる歌があると思います。そしてあなたの詠んだ歌が多くの方を励ますことになるかもしれません。ぜひご覧ください。

(NHK財団 展開・広報事業部 佐々木 佐知子)