1960年代後半のGS(グループサウンズ)ブームの一翼を担ったザ・ワイルドワンズ。約10年前、リーダーの加瀬かせ邦彦くにひこさんを失ってからは加瀬さんの次男・友貴ともたかさんが加入し、今年デビュー60周年を迎えました。“自然児”たちが奏でるフォークロックは、今も湘南の海風のように爽やかに吹き抜けています。

聞き手 徳田章

この記事は月刊誌『ラジオ深夜便』2026年5月号(4/17発売)より抜粋して紹介しています。


ストリングスの音色に感動

――「想い出の渚」は加瀬さんのお宅で作られたとか。

植田 加瀬さんがギターをつま弾きながらメロディーを歌ってくれました。

鳥塚 それにみんなで詞をつけようということになって。数日後に集まって「せーの」で詞を見せ合った。僕が書いた詞がいちばんイメージに近かったので、それをもとにみんなで協力して詞が完成しました。
レコーディングは東京・麻布十番のでかいスタジオでした。僕らのしょぼいバンドセットの反対側に、ストリングスの人たちが20人くらいずらっと並んでいる。真ん中に指揮台があって、アレンジの森岡賢一郎*1先生がいらした。収録前にメンバーが加瀬さんに呼ばれて「あっちのバイオリンの人たちは絶対間違えない。間違えるとすればお前らだ。心して演奏するように」と言われて、一気に緊張した(笑)。

*1 1934〜2018年。作曲家、編曲家。「君といつまでも」「瀬戸の花嫁」ほか、昭和歌謡屈指の名アレンジャー。

植田 ストリングスの人たちのこれ見よがしな「チッ!」という舌打ちが聞こえてきて、もう震え上がっちゃって(笑)。

鳥塚 イントロの始まりの一音は加瀬さんのギターだけ。続く8小節は我々の演奏で、ストリングスは後から入ってくる。演奏しながら聴いた、そのストリングスのいろの美しさに感動しました。「ああ、いい曲なんだ。もしかしたらヒットするのかな」とワクワクしたことを覚えています。

植田 「加瀬邦彦ってすごい人だ」と改めて思い知らされました。僕らは無我夢中でしたが、加瀬さんの12弦ギター*2の哀愁ある音色おんしょく、森岡先生の編曲など、佳曲との巡り合いは後から振り返って分かること。収録での緊張感や身震いするような思い、出来上がったときの感動――その体験が何度もあったから今があるような気がします。

*2 通常のギターは6弦だが、副弦を加えて12弦にしたギター。弦が倍増するため広がりのある音が出る。

――加瀬さんには、ワンズでは12弦ギターを使おうという思いがあったのでしょうか。

鳥塚 本人からお聞きしましたが、6弦では寺内さんにかなわないと。寺内さんからも「お前は12弦を弾いたらいい」と言われたそうです。加瀬さんもフォークロックがやりたいから、12弦がいいと思ったみたい。

――友貴さんはお父様が残された12弦ギターを弾くことに、どのような思いを?

加瀬 “運命”と言えばいいのか。今にして思えば自然な流れだった気がします。

植田 黄色い12弦ギターと友貴は、亡くなった加瀬さんからの最高のギフト。友貴は幼少期から知っていますし、音楽の経験がなくても気付いたらちゃんとできている。さすが加瀬邦彦のDNAはだてじゃない。

 ライブで横から友貴を見ると、しぐさまで加瀬さんそっくり。うれしくなりますね。

※この記事は2026年1月18日、19日放送「芸の道 輝きつづけて」を再構成したものです。


ザ・ワイルドワンズ結成時の“メンバーの条件”や、加瀬邦彦さん亡き後のメンバーの思い、そして息子・友貴さんへと受け継がれるお話の続きは、月刊誌『ラジオ深夜便』5月号をご覧ください。

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