旧幕府所属の医師(奥医師)を父に持ち、日本の医療の向上を志して看護の道を選んだ玉田多江。主人公・りん(見上愛)や直美(上坂樹里)らとともに梅岡女学校付属看護婦養成所の第1期生となった彼女は、優等生気質で意識が高いがゆえに周囲と衝突することもある。そんな多江を演じる生田絵梨花は、彼女の内面をどのように捉えているのか。インタビュー前編では、多江の人物像や看護婦養成所シーンの撮影舞台裏について話を聞いた。
私が生まれたのは、ドイツのナイチンゲール病院でした!

――出演発表時、朝ドラについて「長年、心の中で強く願っていた」とコメントされていました。その時の気持ちを改めて聞かせてください。
多くの視聴者に愛されている朝ドラに出演することは、ずっと憧れの夢でした。「いつか私も出たい!」と思い続けた目標が今回叶ったことは、何よりも嬉しいですし、身が引き締まります。朝ドラは生活に彩りを与えるような存在だと思っているので、皆様の毎朝の時間に寄り添えることも、すごく嬉しいと思いました。
――実は、生田さんご自身がナイチンゲールとは縁があるそうですね。
そうなんです。出演が決まってから母に「あなたはナイチンゲール病院で生まれたんだよ」と言われて驚きました。私はドイツ生まれなのですが、その病院は、ナイチンゲールが看護指導を受けていたカイザースヴェルトという場所にあって(※ドイツ・デュッセルドルフのライン川沿いに位置する町)、そこで母は私を産んだんです。そんな背景を知ると、今回、ナイチンゲールの精神を受け継いだ“トレインドナース(正規に訓練された看護師)”になる女性たちを描く作品に、看護の道を志す女性として参加できることに、勝手ながら運命的なものを感じてしまって。本当にありがたく、幸せなことだなと思いました。
――ご自身の誕生エピソードを、役作りに生かすことはありましたか?
ナイチンゲール病院で生まれた自分が、ナイチンゲールの教えを受け継ぐ看護を学ぶ人物を演じるからには、と自然と使命感が芽生えてきました。ナイチンゲールが看護において、新鮮な空気や清潔さを重視していたこともあって、部屋の換気をすごくするようになりましたし(笑)、これまでよりも、こまめに掃除をするようになりました。
乃木坂46に入った当初はかなり堅物だったみたい(笑)

――多江という人物を、どのように捉えていますか?
入学当初の多江は、本当に強気ですよね(笑)。周囲に圧をかけるような発言も多くて、最初に台本を読んだときは「強い女性だな」という印象でした。ただ、単なる「きつい性格の女性」にはしたくないな、と。多江は父が奥医師という医者の家系で育ち、兄や弟も医者。自分自身も医者になりたいけれど、女性であるがゆえになれなかった。そのことへの劣等感を抱えていたのではないかと感じました。一生懸命に看護の勉強をしているのに、直美に遅れを取ってしまう焦りもあって……。そんな迷いや弱さを見せられず、強がってしまう――。台本を読み込むうちに、多江に対してそんな人物像を持つようになりました。最初は強く見える分、仲間と出会い、どう変化していくのかを楽しんでいただけたら嬉しいです。
――生田さんご自身、多江のように劣等感や迷いを持つこともあるのでしょうか?
全然ありますよ。「完璧にやらなきゃ」とか、「白黒はっきりさせたい」という思考はもともと強いほうです(笑)。だから、多江のことはすごく理解できます。
乃木坂46に入った当初は、かなり堅物だったみたいで……(笑)。後からメンバーに、「最初はいくちゃんに話しかけられなかった」と言われたこともありました。「笑ってもらえるのかな?」と、みんな恐る恐るだったみたいです。振り返ると、多江と似た道を辿っていた時期があったかもしれません。
自分1人では見られなかった世界を広げてもらえる感覚は、自分のグループ経験と共通

――初めて朝ドラの撮影に参加して、印象的だったことは?
撮影のスタイルですね。月曜日に1週間分のリハーサルをして、火曜から金曜まで撮影をします。特に看護婦養成所のシーンでは、1か月ほど、主人公のお2人と集中的にご一緒していたので、「見上さんと上坂さんはこれを1年近く続けるのか……」と、その凄さを実感しました。
毎日スタジオに来ていると、前室(待機所)もだんだん“お部屋”みたいになっていって(笑)。便利グッズが増えていくんです。
――生活感が出てくる?
そうなんです。「これ何?」って毎日聞いて、どこで買えるか教えてもらって、自分でもゲットしたりして。そういう情報交換の時間も楽しかったですね。
――養成所に入所した7人を“チーム”として見たとき、ご自身のグループ経験と重なる部分は?
すごくあります。同じ場所に集っていても、背景や志した理由はそれぞれ違う。その違いを知ることで、自分の中に新しい感情が芽生えたり、見えていなかったところに目が向いたり。自分1人では見られなかった世界を広げてもらえる感覚は、共通していると思います。
看護婦養成所でのシーンを撮影している現場が楽しすぎて

――共演者の皆さんとのお芝居はいかがですか?
ものすごく楽しいです。最初は、多江として「スンとしていよう」と思っていたのに、楽しすぎて爆笑してしまって(笑)。その後、カメラの前で「ちょっと(雰囲気が)柔らかいかも」と言われて、「いかん、いかん」と切り替えるのが大変でした。
喜代(菊池亜希子)さんは、言葉少なでも人にそっと何かを渡せる存在。ゆき(中井友望)は、独特な世界観で、場の空気を変えていくし、しのぶ(木越明)とゆきの関係性も好きですね。トメ(原嶋凛)は癒やし系でありながら、人への共感力がとても高いと感じました。
――作品全体への印象は?
今回は、自分の役以外のシーンやセリフにも、すごくグッときました。台本のグッときた部分に線を引いたり、付箋を貼ったりしながら読んでいます。描かれている時代や価値観は今とは違いますが、現代を生きる私たちの心に“刺さる”言葉が随所に詰まっている作品だと感じました。きっと、視聴者の皆さんの心にも、何かが残るのではないかと思います。