1月2、3日に放送される東野圭吾スペシャルドラマ「雪煙チェイス」は、東野圭吾の“雪山シリーズ”として知られる人気作が原作だ。殺人の容疑をかけられた大学生・脇坂竜実が、犯行時刻に殺人現場にいなかったことを証明してくれる“アリバイの証人”を探すために、日本最大級のスキー場に向かうことに。同級生の波川(醍醐虎汰朗)に助けられ、なんとか証人を見つけ出そうとする脇坂を演じる細田佳央太に、役作りのこだわりや、雪山での撮影などについて話を聞いた。


「あんぱん」の豪ちゃんで心が救われた

――細田さんといえば、朝ドラ「あんぱん」の豪ちゃん(主人公・のぶの妹・蘭子と恋仲になったものの、出征先で戦死)が話題になりましたね。

細田 うれしかったです! すごく単純な性格で、ほめられるとすぐやる気になるほうなので、多くの方々に自分が演じた役を好きになってもらえて、求めてもらえたことで心が救われました。

今回、共演シーンはなかったのですが、「あんぱん」で石工の師匠を演じた吉田鋼太郎さんもご出演されています。なので、所轄署の捜査本部の撮影現場にご挨拶に行きました。「佳央太、久しぶり! 豪ちゃんがいなくなってから、朝田家はぽっかり穴が空いた状態で、常にいた人がいなくなるのは不思議な感覚だった」と言っていただけて、すごくうれしかったですね。

捜査本部の撮影シーンはめちゃくちゃ面白かったです! カットをかけないと永遠に芝居を続けそうな皆さんが集まっていましたし、吉田さんと八嶋(智人)さん、やることが毎回変わるんですもん。見ていて、俳優としてすごく刺激になりました。台本にないところで突発的に何を言えるかで、役の完成度や、自分の中で役が高まっているかがわかると思うんです。だから、自分もいつかお2人のようになれたらいいなと思います。

――本作で演じた脇坂竜実は、スノーボード好きの大学生で、今時珍しいくらいのおひとしで、ぐなところがあります。脇坂の魅力はどんなところにあると思いますか?

細田 彼のすごいところは、人と人との距離感がつかみにくい今、全人類に対して同じ距離感なんです。「見ず知らずの人に優しくしない理由なんて、ないでしょう!」という前提で、考える間もなく、すっと腰を上げて誰かを助けている。僕も、脇坂のようにすっと手を差し伸べられる勇気がほしいと思いました。

――脇坂は頼りないところがあるものの、周りが放っておけない、応援したくなる魅力があります。そういう役柄に説得力を持たせるのは難しくありませんでしたか?

細田 めちゃくちゃ難しかったですね。僕自身の好みもありますが、最近のトレンドとして、ドラマも映画も誇張しすぎた表現が少ないと思うんです。一方で、わかりやすさが受けたりもしています。情報量の多さが吉となる場合もあれば、簡単に感じてしまうこともあって……。わかりやすくやればいいってわけでもないですし、かといってやりすぎないようにと考えながら演じていました。


脇坂の同級生・波川を演じる醍醐虎汰朗との距離感

――脇坂には波川という仲のいい同級生がいて、彼は脇坂の人の良さを知っているからこそ、無実を信じて行動を共にしてくれます。そんな波川を演じる醍醐虎汰朗さんとは初共演だったのですか?

細田 本読みの時が初対面でした。チーフ演出の方が「二人はこれから自然と仲良くなっていくと思うので、そういう雰囲気が出せたら」とおっしゃっていました。脇坂と波川を演じるにあたって、僕と醍醐くんの距離感が大事になってくると思いましたし、逆にそこを大切にしていれば大丈夫かな、と感じました。

彼とは一緒にご飯を食べたし、野沢温泉のロケ中は宿のリビングに集まってみんなでお話をしました。彼はすごく貪欲なんだけど、ピュアなんですよ。凝り固まった考えを持っていなくて、なんでもかんでも吸収しようとするところがあるんです。だから、醍醐くんが演じる脇坂も見てみたかったな、と思いました。

――波川との共演シーンで、印象的なものはありますか?

細田 前編の、波川の家でのシーンです。この時に、僕に身に覚えのない強盗殺人の容疑をかけられていることを知ります。撮影に入って早い段階で撮ったシーンで、一番大変だったかもしれません。波川の家で2人きり、会話を中心に繰り広げられるので、会話のテンポや、動き方に、かなり気を遣いました。

――その後、舞台はスキー場に移りますが、細田さんはスキーやスノボの経験はあったのですか?

細田 このドラマに入るまでは、スノボは1回やったことがあるだけでした。野沢温泉村に行く前に、屋内スキー場で滑り方や止まり方などの基礎的なことを教わって、現地でも練習時間を確保していただきました。

野沢温泉村で、パウダースノーを経験できたのは一番大きかったです。人工スキー場と違って高低差もありますし、滑る距離も長く、天気によっても全然変わります。ボード1枚に両足が固定されているのは怖かったのですが、滑っているうちに、最初に感じていた恐怖心がなくなり、楽しくなりました。

さすがに滑っているシーンの9割は吹き替えなのですが、「気持ちいい!」という表情は、実際にパウダースノーを滑ることができたからです。撮影がオフの時も滑る練習をしていましたし、ムロさんがとてもお上手でした。

――雪山の撮影で苦労したことはありましたか?

細田 僕は東京出身で、雪にそこまで慣れていなかったので、こんなにも雪の中で動くのが大変なのか! と思いました。海の中と同じだと感じました。

あと、足跡などがついていない朝一番に撮影することが多くて、1回しかチャンスがないのがプレッシャーでした。


有言実行で、夏に旅行で野沢温泉を再訪

――野沢温泉村での滞在はどのようなものでしたか?

細田 村のみなさんの温かさを一番に感じました。キャスト、スタッフさんを温かく迎えてくださって、懐の深さを感じました。真冬で寒かったのですが、常に人の温かさに触れていたので、心はすごくいい状態。撮影中に帰りたいと思ったことはありませんでした。早起きしてサウナに連れていってもらって、撮影して、終わったらみんなでご飯食べて、お酒飲んで寝て、と健康的な生活を送れていましたし(笑)。

撮影が終わって帰る時に、「また来ます」と言ったのですが、有言実行で、夏に家族で野沢温泉村に行きました。

――ムロさんとの共演は初めてでしたが、いかがでしたか?

細田 台本を読んだ時に、ムロさんが小杉さんをどう演じられるのかがすごく気になりました。脇坂が小杉さんと関わるのは後編からなので、ムロさんのテンションがどのくらいのものかと。実際にお芝居をしてみると、僕や醍醐くんが自由にやることをどっしりと受け止めてくださいました。

――これからドラマを観る人にメッセージをお願いします。

細田 脇坂の魅力は人の好さなのですが、観ている人は脇坂の行動に対してツッコミたくなることが多いと思います。その代弁を波川がしてくれるので、この2人のコンビネーションに注目して観てください。

作品全体で言うと、誰かが誰かを「信じる」ところと、キャラクターそれぞれが持つ温かみが見どころになります。新年2日、3日目にお届けする作品としてぴったりですし、いい一年のスタートになったと思ってもらえるとうれしいですね。


東野圭吾スペシャルドラマ「雪煙チェイス」(前編・後編 2夜連続放送)

2026年1月2日(金)・3日(土) 総合/BSP4K 午後10:00~11:13
NHK ONEでの同時・見逃し配信予定

【あらすじ】

大学生の脇坂竜実(細田佳央太)は、身に覚えのない強盗殺人の容疑をかけられていた。被害者は、竜実がアルバイトで通っていた一軒家の主人(平泉成)。竜実には犯行時刻に、殺害現場から遠く離れた新月高原スキー場にいたというアリバイがあった。しかし、スキー場には1人で行っていたためにアリバイを証明してくれる人物はいない。証人の心当たりは、スキー場で出会った女性スノーボーダーだけだが、素性も名前さえもわからず、手がかりは、「明日以降、里沢温泉スキー場で滑る」という言葉だけだった。
竜実が友人で法学部に通う波川(醍醐虎汰朗)に相談すると、「このまま警察に連行されると無実の罪で捕まるかもしれない」と助言を受ける。竜実は、謎の女性ボーダーに自分のアリバイを証言してもらおうと、波川とともに里沢温泉スキー場へ向かい、彼女の捜索を開始する。彼らは、スキー場のパトロール隊員(前田公輝)や関係者たちの協力を得つつ、少しずつアリバイの証人に近づいていくのだが……
そのころ東京では、警視庁本部と所轄署との特別捜査本部が開設されていた。所轄の刑事・小杉(ムロツヨシ)は、竜実が里沢温泉スキー場に向かったという情報をつかむ。すると、“本庁を出し抜き所轄で手柄を取りたい”と考える上司(吉田鋼太郎・八嶋智人)から、里沢温泉スキー場で竜実たちの極秘捜査をするよう命じられてしまう。刑事であるということを隠して、部下の白井(恒松祐里)とたった2人でスキー場に向かった小杉は、偶然知り合った元スキー選手の居酒屋のおかみ(仲間由紀恵)の協力を得て、竜実たちの捜索を開始する。一方、警視庁本部(高橋ひとみ・白洲迅)も竜実たちの行方をつかみつつあった。広大な雪山を舞台にした“チェイス”の火ぶたが切られるのだった。

原作:東野圭吾『雪煙チェイス』
脚本:森ハヤシ
音楽:大間々昂
出演:細田佳央太、ムロツヨシ、醍醐虎汰朗、恒松祐里、前田公輝、武田玲奈、白洲迅、中山優馬、小林涼子、高田夏帆、吉田健悟、なえなの、丈太郎、六平直政、山下容莉枝、伊藤修子、高野正成 /平泉成、高橋ひとみ/八嶋智人、吉田鋼太郎、仲間由紀恵 ほか
制作統括:木次谷良助(東映東京撮影所)、高橋練(NHKエンタープライズ)、磯智明(NHK)
プロデューサー:加地源一郎(NHKエンタープライズ)、吉崎秀一(東映東京撮影所)
演出:一色隆司、船谷純矢(NHKエンタープライズ)

兵庫県生まれ。コンピューター・デザイン系出版社や編集プロダクション等を経て2008年からフリーランスのライター・編集者として活動。旅と食べることと本、雑誌、漫画が好き。ライフスタイル全般、人物インタビュー、カルチャー、トレンドなどを中心に取材、撮影、執筆。主な媒体にanan、BRUTUS、エクラ、婦人公論、週刊朝日(休刊)、アサヒカメラ(休刊、「写真好きのための法律&マナー」シリーズ)、mi-mollet、朝日新聞デジタル「好書好日」「じんぶん堂」など。

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