2年前に放送されて人気を博した連続テレビ小説「虎に翼」のスピンオフドラマ、「山田轟法律事務所」がいよいよ3月20日(金・祝)に放送される。

放送に先立ち、NHKにて完成会見が行われ、主人公・山田よねを演じた土居志央梨、轟太一役の戸塚純貴、制作統括の尾崎裕和チーフ・プロデューサーが登壇した。その様子を紹介する。

★「山田轟法律事務所」とは……

日本で女性初の弁護士・判事・裁判所所長となった三淵嘉子をモデルにしたヒロイン・猪爪いのつめとも(伊藤沙莉)の活躍を描いた2024年度前期連続テレビ小説「虎に翼」の世界観を継ぐオリジナルストーリー。寅子の大学時代からの友人である山田よねと轟太一が、戦後、2人で設立したのが山田轟法律事務所。本編では描かれなかった、2人の知られざるエピソードを描く。


土居「よねに戻れるか不安だった」 戸塚「轟の弁護士としての姿を見てほしい」

まず、制作統括の尾崎チーフ・プロデューサーが、本編放送から1年以上間があいてからのスピンオフ放送がとても珍しいこと、これも応援してくれた視聴者のみなさんのおかげだと感謝を述べた。続けて、よねを演じた土居志央梨、轟を演じた戸塚純貴も、それぞれ感慨深そうな表情で次のようにコメントした。

土居「はじめは、ちゃんと山田よねに戻れるのかなと不安に思っていたのですが、撮影に入ればあっという間に当時の感覚を取り戻すことができました。やっぱり本編の1年間で築き上げたものは大きかったんですね。そして、今、完成した映像を見てホッとしています。スピンオフであると同時に、ひとつの力強いドラマとして仕上げることができたと思います」

戸塚「本編では深く語られなかったよねの思いや空白の時間にあった出来事など、これまで知らなかったエピソードがたくさん描かれています。僕自身、それを知ることができ、とても感動しました。また、なんといってもうれしいのは、轟の弁護士としての仕事ぶりを見ていただけること。本編では、そういうシーンはほとんどありませんでしたからね」

気になるストーリーは、本編の最終回より少しさかのぼり、敗戦直後の上野が舞台だ。

戦争で傷ついた人々の混乱は続き、街には無秩序と差別が横行。これまで学んできた法の無力さに、よねの心もすさんでいく一方だった。そんな中、生き別れていた姉の夏(秋元才加)に再会。これをきっかけに、よねは再び社会の理不尽に立ち向かうことになる──。

土居「終戦直後の苦しい時代を、よねがどう生きたのか。それをどう演じるのか、本気で頑張らないといけないと思いました。実際、セットの上野の街はとてもリアルで、その中に立つだけで『こんな混沌こんとんとした苦しい時代が実際にあったんだ』と考えさせられました。そして、この街には、いろんな人たちがいる──飢えている人もいれば、きれいな格好をしている人もいる、物乞いをしている人も、子どももいる。そんなことを実感しながら演じるのは、とてもエネルギーを使いました」

よねが再会するのは、姉だけではない。孤独だったよねを支えた恩人、カフェ「燈台」のマスター・増野(平山祐介)も再登場する。本編では「空襲で死んだ」と語られていた増野だったが、実は、ひんの重傷を負いながらも生きていたのだ!

土居「マスターとのシーンでは、リハーサルから感情があふれすぎちゃって……。梛川監督から、『少し落ち着こう』と言われるくらい。今思い出しても胸が苦しくなります。よねにとって、マスターがどれだけ大きな存在だったか、その絆が、本作ではふんだんに描かれています。ぜひご期待ください」


本編でも愛された“名(迷?)コンビ”が再び

本編でも名(迷?)コンビぶりを発揮して笑いと感動を届けてきた土居と戸塚。「いつかこのふたりでスピンオフをやりたい」とは、本編撮影中から出ていた話だという。

土居「でも、イメージしていたのは、ふたりが設立した山田轟法律事務所の日常というか、身近な事件をどんどん解決していくようなドラマでした。まさか、こんなハードなストーリーが来るとは思っていなかったので驚きました(笑)」

戸塚「そうそう、もっとワンシチュエーションコメディーのような、街の人たちの小さな悩みを解決! みたいなものを想像してたんですけど、全然違いました!」

とはいえ、やはりタイトル通り、「山田轟法律事務所」の裏話ではある。よねが轟を誘って法律事務所を設立、2人は協力して困っている人々を助ける姿が描かれる。

ところで、なぜ、よねは轟をパートナーに選んだのか? 会場から質問が飛ぶと──

土居「本編中では、私も想像で補って演じていたのですが、今回、直接描かれたことで解像度が上がりました。そもそも、なぜ、よねがそこまで弱い立場にある人を助ける強い志を持っているのか、私も少し疑問だったんです。でも今回、戦後の上野でさまざまな経験をしたことで、平等な世界を目指していくことを神に誓ったからだったんだなと、に落ちたんですね。そしてそのタイミングで、轟が現れた。だからこの人とやろうって思ったんじゃないかな」

一方、轟の心情について、戸塚はこう分析する。

戸塚「轟は、人に対して自分を強く見せ、本当の自分を無意識に隠しながら生きていた人物。復員して、最愛の花岡(岩田剛典)という友人を亡くして絶望し、かぶっていた仮面も保てなくなったタイミングで、決意を固めたよねに再会しました。思い返せば学生の頃から競い合っていたよねには、ふだん言えないようなことも言葉にできる。自分を導いてくれる彼女とだったら、一生のパートナーとしてこれからも一緒に進んでいけるんだと、勇気を与えてもらったのではと思います」

土居「ふたりの出会いは運命だったんですね(笑)」

そして最後に、視聴者へのメッセージで会見は締めくくられた。

土居「『山田轟法律事務所』は立ち上がる物語。絶望からなんとかい上がっていく人たちを見て、ぜひ元気や勇気を受け取っていただきたいです」

戸塚「激動の時代を描いた作品ではありますが、人を思う気持ちや、心が動くことは、現代にも置き換えられるような内容になっていると思います。少しでも誰かの背中を押せるような作品になっていたらうれしいです」

本編では描かれなかった空白の時間を埋めるスピンオフに、期待が高まる。


【あらすじ】

山田よね(土居志央梨)は、空襲でひん死の重傷を負ったカフェ燈台のマスター・増野(平山祐介)をリヤカーで運んでいた。敗戦に打ちひしがれ、無秩序と差別が渦巻く上野の街で、これまで学んできた法は無力に思え、よねの心は徐々にすさんでいく。生き別れていた姉・夏(秋元才加)と再会するものの、2人の心はすれ違ったまま。そして夏を理不尽な暴力が襲う。よねは犯人を追うが、闇市を支配する勢力のうごめきに増野も巻き込まれ、真相は闇に葬られてしまう。絶望の中、よねは新聞で目にした憲法十四条を怒りに突き動かされるように壁に書き記す。やがて轟太一(戸塚純貴)との再会を機に、よねは法律事務所を開設し、追い詰められた人々の事件に立ち向かっていく。


「虎に翼」スピンオフ「山田轟法律事務所」(72分・全1回)

3月20日(金・祝) 総合 午後9:30~10:42
3月29日(日) BSP4K 午後4:45~5:57

NHK ONEでの同時・見逃し配信もあり(ステラnetを離れます)

作:吉田恵里香
音楽:森優太
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
語り:尾野真千子
出演:土居志央梨、戸塚純貴、平山祐介、秋元才加、森迫永依、呉城久美、絃瀬聡一、細井じゅん、北代高士、鈴木拓、大谷亮介、伊藤沙莉 ほか
法律考証:村上一博
制作統括:尾崎裕和(NHKエンタープライズ)、石澤かおる
取材:清永聡
演出:梛川善郎(NHKエンタープライズ)