
織田信長(小栗旬)の妹であり、小一郎(仲野太賀)・藤吉郎(池松壮亮)とも関わりのある市。信長が同盟を結んだ相手・浅井長政(中島歩)に嫁ぐことになった彼女を、演じている宮﨑あおいはどのような人物だと捉えているのか。「篤姫」以来、18年ぶりの大河ドラマ出演となる宮﨑に、市の役作りや撮影に臨む心境について聞いた。
キリッとした、品のあるお市さんにしたい
――今回、市役と聞いて、率直にどう感じたのか教えてください。実際に扮装をしてみて、市に対するイメージは深まりましたか?
まずは「私でいいのかしら?」と(笑)。私の中には、お市さんはもっとシュッとした、キリッとしているイメージがありますが、私は顔が丸い方なので……。でも、「私に市を」と言ってくださったので、自分ができることは何だろうなと模索しながら取り組んでいます
そのなかでメイクさんとも相談をしながら、アイラインの引き方や眉毛の描き方を工夫しています。アイラインを入れる位置で目の印象はすごく変わるので、涼やかで品のあるキリっとしたお市さんに近づけたいと思っています。

――「豊臣兄弟!」で描かれる市を、宮﨑さんはどんな人物だと受け止めましたか?
芯が強い人ですね。この時代の女性はみんなそうだったのかもしれないですが、お市さんのセリフにもあるように、「兄上のお役に立つことができまする」と彼女なりに命がけの戦い方をしていると思いました。小一郎と藤吉郎は力を合わせて一緒に戦っていくけれど、自分は兄上と一緒には戦えない。だからこそ、私にしかできない兄の支え方があるはずだ、と考えていたのではないでしょうか。

――それまで信長の側にいた市が長政に嫁ぐことで、彼女の考え方はどういうふうに変化していくと考えていらっしゃいますか?
この先の台本を読んで感じたのは、少し篤姫みたいなところもあるのかな、ということでした。物語はまったく違いますが、「篤姫」(2008年)で、初めは分かり合えなかった篤姫・(徳川)家定さん夫婦が、最終的にお互い大好きになりましたから。
浅井家に嫁ぐ前に、小一郎から「お市様はきっと、お幸せになれまする」と言ってもらえたときに、素直に「あ、幸せになれるんだ」と思ったので、そうやってみんなに背中を押されて生きていくのだなぁ、と感じました。お市さんは織田家のため、そして兄上の力になりたくて長政さんに嫁ぐわけですが、長政さんから女性としての幸せに気づかせてもらえるとしたら、それはとても幸せなことだろうな、と思ったりもしています。

お市さんの砕け方ってどんな感じなんだろう?
――撮影現場では、役作りのためにどんなアプローチをされているのですか?
撮影するカメラの位置が変わるたびにテストを重ねていくのですが、それが私にとっては大切で、テストごとに皆さんのお芝居も微妙に変わってくるんです。そのたびに少しずついろんなものをもらって、シーンと役をより深めていけると思っています。素晴らしい台本が目の前にあっても、そういった“積み重ね”がないと何か膨らまない、その物語に追いつけないと感じています。
――そんな心持ちでお市を演じて、感じたことなどはありますか?
正直に言うと、クランクインした直後は、撮影が終わるたびに「どうしたらいいんだろう」と不安になっていたんです。監督がOKを出してくださった以上、「これで良かったのかな」なんて思ってはいけないのですが、自分自身でお市さんを探っているところもあったので。
つかみたいけど、つかめないままどんどん撮影が進んでいく、みたいな焦りもありました。もっと違うアピールの仕方があるのではないかなとか、台本でお市さんが小一郎と藤吉郎の前では少し砕けた感じを見せているけれど、お市さんの砕け方ってどんな感じなんだろう……? とか。
普段はそこまで悩まないのですが、今回は悩みましたね。それくらい自分にとって、市という人物が大切なんです。ご覧になる方々の中にも、それぞれの“市像”があると思うので、もしそれとは違っても「でも、素敵だよね」と思ってもらえる市にするために、いろいろなことを考えました。
その考えた時間があったからこそ、撮影のたびに少しずつ安心して過ごせるようになってきて、最近では「あ、お市さんがちゃんと自分の中にいるな」と感じることができています。
――それは具体的にはどんなシーンで感じましたか?
先日、母になってからの場面を撮影したのですが、そこでパッツンの前髪のカツラから垂れ髪のカツラになって、メイクも変わったんです。自分の「こうでありたい」というお市さんと見た目がピタッといいところに収まった感じがしたのが、とても大きかった気がします。ヘアメイクや衣装に助けてもらって、気持ちが落ち着きました。
私の中では、信長は小栗旬さんのイメージでしかない
――信長役の小栗旬さんとは24年ぶりの共演ですが、お芝居をしてみていかがでしたか?
緊張しました。最初のリハーサルで久しぶりにお会いして、そのときは私が初めて市として声を発することでも緊張していましたし、信長である小栗さんと向き合うことにもドキドキしました。ただ、子どものころからお互いに知っているので、なにかしらの安心感はあるんですよね。役の中でも兄ですけれど、年齢的にも私の兄と近かったりするので。お芝居の場所で向き合い、緊張してセリフが詰まってしまうところもありましたが、時間とともに打ち解けていった感じがあります。
――歴史上の有名な人物であり、いろいろな描かれ方をされてきた信長ですが、小栗さん演じる信長はどんな印象ですか?
今、私の中では、信長はもう小栗さん、という印象です。衣装も素敵で、撮影初日にスタジオに入ってお姿を見たときに、「あ、こういう感じなんだ」と思いました。あの出立ちの小栗さんは、やっぱりかっこいいですよね。
小栗さんとお芝居をしてみて、市の中にはいつも信長さんがいるから、私が見ている小栗さんの信長像を、いつも自分の心の中に置いていれば大丈夫かな、と思いました。

――長政を演じている中島歩さんの印象はいかがですか?
独特のゆったりとした語り口調でお話しされているのが印象的で、とても面白い方ですね。あの中島さんならではのテンポが魅力ですが、「早口言葉とか言えるのかなぁ」と思ったりしました(笑)でも、きっと長政さんとは素敵な夫婦になっていけると、何となく思えていて、この“何となく思えている”ことが、とても大切な気がするので、安心はしています。これから一緒にやっていくシーンもすごく楽しみです。

――とはいえ史実から考えると、市はここから怒涛のような人生を送ることになります。
そうですよね。台本を読んでいても、ちょっと苦しくなってしまうシーンがあるので……。それでも楽しみです。
仲野太賀さんの笑顔が見られるだけで毎日幸せです
――久々に大河ドラマの現場に入られて、どんな印象を持ちましたか?
「篤姫」のときと違うと感じることはなく、知っているスタッフの方がいたり、久しぶりの再会があったりするので、「懐かしい場所に帰ってこられてうれしいな」と思いながら過ごしています。やっぱり大河ドラマの現場は楽しいですね。こうやって1年以上かけて、みんなで積み重ねていく時間が自分の中に今でも宝物のような記憶として残っているので、皆さんが同じように日々を重ねていると思うと、このチームにもっと参加していたいな、と思います。
――「篤姫」で大河の主演を経験されて、それを仲野太賀さんが今回やっていらっしゃるのを見て、どのようなお気持ちですか?
うらやましいです。いいなぁ、と思いながら見てます(笑)。本当に仲野さんが素敵な方で。いつも笑顔で、明るくて、スタッフの方への気遣いも見ていてほっこりするし、いい座長だな、と。この作品が作られると聞いたときから「仲野さんが真ん中にいたら、絶対いいドラマになるだろうな」と勝手に思っていたので、自分がそこに参加させてもらえているのは本当に幸せなことです。ここから1年ちょっと過ごしていって、最後はどんな思いになるのだろうなと思うと、それを見届けたいという気持ちになっています。