連続テレビ小説「ばけばけ」もいよいよ最終週に突入。3月上旬、雨清水トキ役の髙石あかりが取材に応じ、子どもの頃から夢だった朝ドラヒロイン完走の心境や共演者のこと、印象的なシーンなどを振り返った。


セリフは「セリフ」ではなく、「生きている人の言葉」

──第24週では、久しぶりにトキが怪談を語るシーンがありました。以前はヘブン(トミー・バストウ)とトキが夫婦になる前でした。その違いは意識されましたか?

もちろん、より深くなったものをお見せできたらと思って臨みました。今回は、「やっぱりトキって怪談話をしている時がいちばん楽しそう」だったり、「好きなものに触れているときはこんなにキラキラしているんだ」っていうところを伝えたいと思ったので、まず私自身が楽しもうと。……で、楽しかったですね! 「耳なし芳一ほういち」のシーンのヘブンさんの顔、映像だと暗くてよく見えなかったかもしれませんが、般若はんにゃしんぎょうがびっしり書いてあったんです。その姿をリアルに目の前で見られたのは貴重でした。……結構怖くて、面白い時間でした(笑)。

──そのヘブン役のトミー・バストウさんとは、「出会った時から相性の良さを感じた」とおっしゃっていましたが、振り返っての印象や関係の変化などはありましたか?

トミーさんは、すごく自由な方。その一方で周りのこともしっかり見ていて、優しくて。そういった部分が、ヘブンのキャラクターにも出ていましたよね。トミーさんだからこそ、あんなに魅力的でチャーミングで、でも怒ると怖くて、という人物像に説得力が出た。私はそんなトミーさんの自由さに助けてもらうことが多かったです。私はわりと「こうでなきゃ!」という固定観念にとらわれがちなタイプ。でもトミーさんは、そういう縛りをいっさい持っていない。だから憧れますし、私の凝り固まったものをほぐしてもらったように思います。

セリフは「セリフ」ではなく、「生きている人の言葉」だということも、トミーさんとのお芝居で学びました。振り返ってみると、トキとヘブンさんと同じように、お互いに「支えたい」という気持ちを、少しずつ積み重ねていく日々でした。それはお芝居を通じて、相手の心を知ることができたからだと思っています。

──出産や子育てなど、ご自身が経験されていないことも、トキとして経験されました。演じてみていかがでしたか?

実は出産シーンは、以前からやってみたいと思っていたんです。その夢がかなった撮影日が、なんと自分の誕生日だったので、「いちばんのプレゼントだな」と思いながら演じました。「アクション」って言われた瞬間に、力みだったり、反対にそれを逃す動きだったり、自分でも予測不可能な体の動きや声が出て……いろいろ学ばせていただきました。

子どもたちとの撮影も楽しかったです。「あっ! 勲! 勘太!?」という声があちこちで上がって。すごく刺激的な現場でした(笑)。母親もやってみたかった役なので、これも「ばけばけ」で叶って、とてもうれしかったです。


クランクアップは「ふわふわした感じ」

──クランクアップは2月7日でした。その日、大阪のスタジオには、これまで「ばけばけ」に登場した共演者の方々が駆けつけてくれたそうですね。

そうなんです。皆さん、お忙しい方々なのに! 最後のシーンを撮り終わると、扉がバーンと開いて、たくさんの方が来てくださっているのがわかって……泣いてしまいました。隣にはトミーさんがいて、皆さんが私たちに向かって温かい拍手を送ってくださって。こんなに幸せなことがあっていいのかなと思いました。だから、その瞬間は「やり遂げた」というより、この信じられない光景とうれしい状況がつかめなくて、ふわふわした感じでした。

──改めて、「子どもの頃からの夢だった」という朝ドラヒロインを務め終えてのご感想をお聞かせください。

私にとっては、この作品で夢を叶えられたということが大きくて。「ばけばけ」だったからこそ、「この1年間、すごく楽しかった!」と言えると思っています。共演者にもスタッフの方々にも恵まれて、現場はいつも楽しかったですし、また題材、脚本も含めて全部、私にとって完璧な作品でした。もうこれは奇跡だと思っています。この作品に携わる全員が全員のことを尊敬し合えていて。そんな現場でお仕事ができたのは、本当に貴重な経験でした。

──この経験は今後、髙石さんにとってどんなものになっていくと思いますか?

このトキというキャラクターは、私にとってすごく特別なんです。それは朝ドラヒロインということだけじゃなく、あまりにも私自身に近いというか……。脚本のふじきみつ彦さんからも、最初から「髙石あかりさんのままでやってください」と言われて、逆に「私って何だろう?」と思いながら現場に立ちました。そしたらそのまま勝手に、トキという人格が出てきたんです。セリフにもトキが抱く感情にも全く違和感がなくて、たまにトキと自分の過去の経験とが重なって感じられたり、「このシチュエーションなら、私ならこう言うな」と思った言葉が脚本に書いてあったり。本当に不思議な感覚でした。

こんな体験は初めてのことですし、今後、こういった役作りを他の役でもできるかと言われたらできないと思うし、……それくらい、トキは私自身でもあったんです。今でもすぐ「なして?」って言っちゃいます(笑)。

あと忘れないでおきたいのは、トキを演じるうえで得られた、感情が湧く瞬間のイメージや瞬発力。絶対、これからの芝居につなげていきたいと思っています。お芝居の根幹である感情、その波の捉え方、セリフへの乗せ方みたいなものとか。もちろん、共演者の皆さんから学ばせていただいたこともあわせて。本当に素晴すばらしい経験でした。

──ほかに、実感しているご自身の変化や成長はありますか?

セリフ覚えは相当、早くなりました! 以前の200倍くらい(笑)。中には覚えにくいセリフもあったりしましたが、そんなことを言っている時間もない。基本、月曜日がリハーサル、火〜金曜日が撮影というスケジュール。でも、気づくとあっという間にリハーサルの日になっていて、その場で一生懸命体に入れて……。これが朝ドラの洗礼かなって思いました。

あと、大阪での生活で、自炊がすっかり習慣化しました。それまでも料理はしていましたが、今回は「絶対にこの1年、健康でいなければいけない」というミッションもあったので、食事には気を使うようになりました。

──最後に、最終週の放送に向けて、「ばけばけ」をご覧の皆さんへメッセージをお願いします。

まず、これまでずっとご覧いただいて、また愛してくださってありがとうございます。先週やっと、ヘブンさんこと雨清水八雲の代表作『KWAIDAN(「怪談」 )』が完成しました。これがこのあと、2人にとってどんな存在になるのか、ぜひ最後まで見守っていただけたらうれしいです。

そして、やっぱり、いつかは来るであろうその瞬間がどう描かれるのか──。実は、私が想像していたものとは違っていました。でも、とっても「ばけばけ」らしいし、私もこれまで以上にトキそのものになって、大事なシーンに臨めたと思っています。そんな「ばけばけ」らしい最終週、どうぞお楽しみにご覧ください。