今夏放送予定の特集ドラマ「手塚治虫の戦争」。
1970年代の東京、漫画家としてどん底にあった手塚治虫は、自身の戦争体験をもとにした漫画『紙のとりで』を描き始める。少年誌の連載は打ち切られ、会社も倒産――すべてを失いかけたその時、なぜ手塚は“戦争”を描こうとしたのか。
執筆に挑む1970年代の手塚治虫と、戦時下を生きる彼の分身・大寒鉄郎おおさむてつろう。漫画を描くことに生を見出した2人の物語が、時代を越えて重なり合う。

手塚治虫役の高良健吾さん、漫画『紙の砦』の主人公、大寒鉄郎役の原田琥之佑さんからコメントが届きましたのでご紹介します。


【あらすじ】

1973年、東京。漫画の神様・手塚治虫は、会社の倒産と少年誌の連載打ち切りによって一転、どん底へと転落する。多額の借金と世間の「終わった」という評価に追い詰められ、創作への自信すら失いかけていた。そんな手塚の脳裏によみがえるのは、戦時中――漫画を描くことすら許されなかった少年時代の姿だった。
1945年、大阪。中学生の大寒鉄郎は、軍事訓練と統制に縛られた日常の中で、ただ一人、漫画を描くことに心を燃やしていた。教師や同級生から「非国民」と蔑まれ、原稿を奪われてもなお、鉄郎の手が止まることはない。“漫画家になる”という夢に向かってまっすぐに生きる鉄郎。ふとしたきっかけで彼の漫画に触れた同級生・明石健司や女学生・岡本京子との出会いは、鉄郎の日常に小さな変化をもたらしていく。仲間との青春の日々の中、近づく戦火の足音は、かけがえのない日常をゆっくりと浸食していく――。
過去の記憶に触れながらも、それを描くべきか迷い続ける、手塚。戦争を描くことの意味、そして今の自分に何が描けるのか。交錯する2つの時代の中で、手塚の本能が目を覚ます。


手塚治虫役/高良健吾

『鉄腕アトム』、『ジャングル大帝』、『リボンの騎士』、『火の鳥』――数々の名作を生み出してきただいの漫画家。
漫画家生活30年。その名はすでに伝説となりつつあった。……のだが、漫画家人生最大のピンチに直面していた。

【高良健吾さんのコメント】

このドラマでは、手塚治虫先生の「虫プロ」が倒産する、不遇の時代も描かれます。その時代の手塚さんの苦しみは、愛するものを突き詰めるがゆえに生まれてくる苦しみで、その苦しみを乗り越える原動力もまた、自分が愛する漫画への信念や、闘争心だと思うんです。それを僕はドラマの中で演じ切りたいですし、皆さんが知らない手塚治虫先生の一面を描けたらと思っています。
僕自身もこの作品に携わることで見えてくる、手塚先生のいろんな面にとてもひかれています。役を演じる上で、当時の手塚先生の仕事ぶりと自分を重ねたときに、手塚先生は「漫画の神様」や「天才」と言われていますが、その言葉でまとめてはいけないのではないか、と思うんです。何かと闘う心、常に自分に向いている戦い方に尋常じゃない強さがあって、「これだけできる人っているか?」と僕は感じるんです。手塚先生は手塚治虫先生以外に、誰にもできないことをやり続けてきた方なんだと思います。
皆さんにとっても面白いドラマになると思いますので、楽しみにしていてください。


大寒鉄郎役/原田琥之佑

手塚治虫が描き始める漫画『紙の砦』の主人公。漫画を描くことに夢中な16歳の少年。
いつ戦火に巻き込まれるかもわからない時代の中で、それでも漫画に向かい続ける。

【原田琥之佑さんのコメント】

鉄郎はまわりの空気を無理に読もうとしないし、人にこびることのない男子中学生です。でもなぜか人から好かれて、周囲に人が集まる人です。「描きたいから描く」という、理由のない衝動的な漫画欲があり、「ただ自分が満足するために漫画を描く、描いても描いても描き足りない」という、漫画家にとって大切なハングリー精神をもっているところがとても魅力的です。そんな純粋な少年の遊び心を表現出来たら良いなと思っています。
今回のドラマで初めて戦時中を生きる役を演じるので、いまはその時代の人間として生きられるよう、たくさん勉強しています。漫画を描くシーンもあるのですが、手塚先生のペンの持ち方は独特だったそうなので、そのペンの持ち方で絵を描く練習をしたり、手塚先生から生まれるキャラクターは丸から出来ているキャラクターが多いので、丸をたくさん描いています。
僕は3年前に「軍港の子~よこすかクリーニング1946~」という特集ドラマに出演しましたが、そのときはまだ13歳で、自分が表現したかったことがあまり表現できず、悔しい思いをしました。このドラマで少しでもリベンジできたらなと思っています。

【プロフィール】
2010年2月2日生まれ、東京都出身。2022年映画『サバカン SABAKAN』(金沢知樹監督)にてデビュー。同作にて、おおさかシネマフェスティバル2023新人男優賞を受賞する。2025年映画 『海辺へ行く道』では主演に抜擢。直近では、「俺たちバッドバーバーズ」(26/TX)、映画
『人はなぜラブレターを書くのか』(石井裕也監督)、『君のクイズ』(吉野耕平監督)、『POCA PON ポカポン』主演がある。ほか複数公開を控えている。「日経エンタテインメント!」2026年の新主役100人の“期待の10代俳優たち”に選ばれた。


【作:桑原亮子さんのコメント】

ベレー帽をかぶってニコニコしている、漫画の神様――皆さんが「手塚治虫」と聞いて思い浮かべるのは、このような像ではないでしょうか。
けれどもこのドラマは、そんなイメージの奥の、生身の人間・手塚治虫を追いかけます。人知れず悩み、苦しみながら、それでも生涯をかけて漫画で子どもたちを楽しませたいと願った人。その彼が、自身の戦争体験を元に凄絶せいぜつな漫画を描きました。そこに込められた、時を超えたメッセージを感じ取っていただけると幸いです。

【プロフィール】
2013年に第41回創作ラジオドラマ大賞にて奨励賞、翌年には第53回BKラジオドラマ脚本賞にて最優秀賞を受賞して、本格的に脚本家の道に進む。2017年度の文化庁芸術祭で優秀賞を受賞したFMシアター「冬の曳航」などの作品で注目を浴びる。2020年にはNHK土曜ドラマ「心の傷を癒すということ」で初めて連続ドラマの脚本を担当。第46回放送文化基金賞番組部門テレビドラマ番組最優秀賞受賞。2022年に連続テレビ小説「舞いあがれ!」の脚本を担当。NHKではほかにもドラマ10「しあわせは食べて寝て待て」などがある。


【企画・演出:鈴木航ディレクターのコメント】

手塚治虫さんの『紙の砦』という短編を知ったのは20年以上前のことです。忘れられない印象的なタイトル、漫画が大好きな少年が見た戦争、それが手塚節のユーモアで描かれますが、ユーモアで包み切れない痛切さが胸に刺さりました。戦争の中でも漫画を描くことを手放さない少年の姿は、決して遠い時代の話ではなく、巨大な暴力の中で私たち一人一人がどうやって正気を保つのか、心に“砦”を築くのかという問いを突きつけてきます。
手塚治虫さんが漫画家人生の苦境の時期に、あえてこの特別な作品を描いたことにも、私は強い意思を感じます。
ご本人にとっても描かなければならなかったテーマなのではないでしょうか。
このドラマは『紙の砦』の執筆に挑む手塚治虫さんの姿と、手塚さんが戦時中の少年少女たちの物語を通じて、描き残したメッセージに迫ります。すばらしい脚本を手に、魅力的なキャストの皆さんと「手塚治虫」という高い山に挑めることをうれしく思います。今も戦争が止むことのない世の中ですが、そんな時だからこそ、多くの方にこのドラマが届くよう力を尽くします。


【田島彰洋プロデューサーのコメント】

戦後81年。時代がどれだけ進んでも、世界から戦争はなくなっていません。手塚治虫先生が『紙の砦』を描いたのも、遠い国で戦火が続いていた時代でした。
少年時代、大阪で空襲に遭い、その光景を「これは漫画だと思った」と語った言葉に、私は強い衝撃を受けました。
現実があまりにも過酷なとき、人はそれを物語として受け止めるしかないのかもしれません。
二度と同じ光景を繰り返してはならない――。子どもたちが大人になったとき、自らの意思で戦争を拒むことができるように。その思いを胸に、手塚先生は漫画を通して戦争と向き合い続けました。
その願いは、終戦ドラマという形でこの作品に向き合う私たちにも重なっています。このドラマが多くの方に届き、戦争が奪ってしまうかけがえのない日常の尊さに、少しでも思いを巡らせるきっかけとなれば幸いです。


特集ドラマ「手塚治虫の戦争」

2026年8月放送予定

原作:手塚治虫 『紙の砦』『ゴッドファーザーの息子』
作:桑原亮子
出演:高良健吾、原田琥之佑 ほか
制作統括:福岡利武
プロデューサー:田島彰洋
演出:鈴木航