直美(上坂樹里)とシマケン(佐野晶哉)はたまき(英茉)を連れて新潟へ。久々のりん(見上愛)との再会を喜ぶものの、横沢(井上祐貴)の登場に複雑な気持ちのシマケン。横沢に案内された日本海で、いよいよ覚悟を決めた。「台本のセリフを変えたところがある」と話す佐野晶哉にシマケンへの想いを聞いた。


“朝ドラ”の主人公に対して、ひとつの大きな仕事を終えた気分

――シマケンさん、ていてもどかしくて仕方しかたありませんでしたが、海のシーンはシマケンなりの告白だったんでしょうか。

監督をはじめ制作スタッフから、「この回はすごく大事だから」と言われていました。台本では「いとおしいです。この時間が」というセリフだったのですが、監督と相談して「愛おしいです」だけにしていただきました。「この時間が」というセリフが逃げのように感じてしまって。

最初、台本通りに撮ってみたのですが、「シマケンはまた告白できないのか……」と、また言えなかったことに僕が泣けてきてしまったんです。ここはシマケンの情けないシーンではなく、シマケンとしてピリオドを打つ、成長したシーンにしたかった。りんの目を見て「愛おしいです」とだけ言いたい。だから「この時間が」という言葉をカットすることにこだわって、わがままを許していただきました。

実は告白できなかったわけではなく、シマケンは自分が持っている語彙の中で、「愛している」以上の気持ちを伝えたんです。視聴者の皆さんからしたらもどかしかったかもしれませんが、僕はその“むずむず具合”に、演じながらキュンとしました。

――撮影はいかがでしたでしょうか。

りんさんはボロボロ泣いていて……本当はそういうシーンではないのですが、シマケンとして、見上さんのそういう表情を引き出せて、ひとつ大きな仕事ができたかなと思いました。これから先の撮影もこのシーンを思い出しながら過ごしていくだろうな、と思えるほど素敵すてきなシーンでした。

――演じるのは難しかったですか?

すごく恥ずかしかったです(笑)。これまでも「好きです」とストレートに告白したり、「結婚しましょう」とプロポーズをするお芝居は経験がありますが、それより照れくさかったし、難しかったですね。ゆうを眺めながら、気持ちいい風に吹かれながら、2人の無言の時間に波の音がして。シマケンらしく回りくどいけど、気持ちをちゃんと伝えられたかなと思います。


自分の中で島田健次郎が深まる過程がすごく気持ちいい

――撮影が進むにつれ、シマケンという人の捉え方は変化してきましたか?

やはり朝ドラは撮影期間が長いので、演じる役への理解や思い入れがどんどん深まっています。最近は、最初に感じていたシマケンの印象とは全然違うな、と感じることが増えました。台本を読み進めるたびに、「こういう一面があるからこの行動につながるんだ」とパズルが完成していく感じがあって、自分の中で島田健次郎が深まる過程がすごく気持ちいいです。

――その変化は、一ノ瀬家の人たちと出会ったことも大きいのではないでしょうか?

そうだと思います。美津さん(りんの母/水野美紀)はシマケンの温度感を察知しながら踏み込んできてくれる。だからシマケンも落ち着いて壁を作らずに接していけるんだろうな、と。シマケンは他人に対しては冷たい態度を取るのですが、自分の得意とすることを話すときはとても柔らかく、心地いいテンポで話します。それは自分の中での想定だったのですが、一ノ瀬家の人と親しくなり、お隣さんとも仲良くさせてもらったり、いい意味でこき使われたり(笑)。なかなか他人と打ち解けないけど、親しくなった人にはこんな笑顔を見せるキャラクターなんだな、というのは新しい発見です。

――シマケンにとって直美はどんな存在ですか?

距離感がすごくいいですよね。りんや一ノ瀬家の人たちといるシマケンは、心地良いと感じながらもやっぱり少し気張っている部分がありますが、直美の前では気張らなくていい。友人の槇村(林裕太)に近い感覚ですね。撮影が始まった頃は同じシーンがほとんどなく、上坂さんとも「いつか直美とシマケンは話すシーンがあるんですかね?」なんて話していたのですが、今はかなり直美に助けられています。

――虎太郎(小林虎之介)だけでなく、横沢というライバル(!?)も登場しました。恋の行方はどうなっていくのでしょうか。

どうなるんでしょうね。僕だったら、好きな人にはもっとグイグイ行きたいです(笑)。シマケン、もどかしいですよね。

――佐野さん自身が思う、シマケンの魅力を教えてください。

シマケンは臆病で、優柔不断で不器用で、一歩踏み出せない。でも、そのもどかしさも含めて魅力だと思います。それに、こんなに人のために動ける人はなかなかいない。だからこそ周りの人がシマケンを頼ってくれるし、応援もしてくれる。そして、「りんさんが好き」って直接は言えないけど、「その行動が好き」と遠回しに伝える感じは好きですね。

――では、最後に今後の見どころをお願いします。

この作品で改めて、自分の役割は“相手にどんな表情を引き出すか”なんだと感じました。これからも、りんやその周りの人たちにいい影響を与えられる存在でいたいですし、作品にとっていいスパイスになれるようにせいいっぱい頑張りたいと思います。