4月の「心に花を咲かせて」に出演された小笠原誓さんは、お父上の左衛門尉亮軒氏とともに江戸の園芸に詳しい園芸研究家。お父上の薫陶を受け、父上が収集した貴重な資料や錦絵を研究し、疑問な点は徹底的に調べるそうです。何せ「“原点を当たれ”が家訓ですから」と笑っておっしゃいました。
例えばよく、「江戸の園芸」と言いますが、江戸時代には園芸という言葉はなかったそうです。ではいつから誰が「園芸」と言い始めたのか……。いろいろな本に当たっても、なかなか分からなかったと言います。その調べ方は徹底していて、原典を探して海外の図書館をネットで検索し、ヒントになりそうな本を見つけると内容を調べて、やっぱりそうだったと確信を持つのだとか。研究者といっても本業はほかにあるので、仕事をしながらの調べものは大変だったことでしょう。
「園芸」の言葉の由来を調べていくと、昔の中国の英華辞典で、英語の「ホーティカルチャー(horticulture)」を「園芸」と訳していたことを発見! 日本の園芸という言葉はここからきたのだと知ったそうです。その後、明治6(1873)年に日本で作られた英和辞典で、ホーティカルチャーを園芸と訳しているのを見つけたとか。もちろん、原典も確認済み!! その後も園芸について調べ続け、日本で初めての園芸雑誌は、明治22年に発行された『日本園藝會雜誌』だったことを突き止めたと、喜々として語られました。
誓さんは文字にも注目します。「園」は、囲まれた庭や畑を意味するので納得です。ではなぜ「芸」なのか。現在日本で使われている芸の字、元は「藝」という字だった。「藝は“人がしゃがんで木を植える様子”をかたどった象形文字だと知り、鳥肌が立った」と語る姿に、その興奮が伝わってきました。
知りたいという強い思いが、徹底的に調べるという行動につながるのですね。「知るは喜び」という言葉が思い浮かびます。新年度早々、ゲストのお話に気が引き締まりました。私も頑張ります!
(すま・かつえ 第2・4火曜担当)
※この記事は、月刊誌『ラジオ深夜便』2025年6月号に掲載されたものです。
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