最近ハマって(?)いるのがインソール。靴の中敷きですね。山によく行きますし、人よりたくさん歩くほうだと思うのですがときどき足裏の痛みに悩まされます。医師に勧められて型を取り、自分用の中敷きを作ってもらいました。なんだか効果があるようです。それからはいろいろ買ってみては試しています。玄関にインソールがたまってきて「邪魔だ」と家人には評判が悪いのですが増え続けています。

「足の裏」で思い出したのがヌスビトハギ。夏から秋にかけての野草にはヘクソカズラとかワルナスビなどひどい名前をもらったものがありますが、こちらは少し古風で謎めいているのがいいですね。目立たない草で、秋の気配を感じるころ、細く長い茎にぽつぽつと萩に似た小さな花をつけます。細い茎に花をつけるところはタデ科のミズヒキに似ていますが、ヌスビトハギはマメの仲間。どこかやわらかくて奥ゆかしい風情を感じます。問題は「盗人」です。

これは豆のようなさやを持つ実の形からだというのです。この実は小さなトゲをたくさん持ついわゆる「ひっつき虫」の一種なので、昔の盗人が目星をつけた人に取りつくようだからという説があります。足袋で逃げるときのつま先の足跡に似ているというのもあります。

おもしろいのは植物学者の牧野富太郎で、その図鑑には「泥棒がこっそり忍び足で歩くとき足の裏の外側に力が入るのでこんな足跡になる」と述べているのですが「ほんとに?」と泥棒に聞きたくなります。莢には大きなくびれがあって私には眼鏡のようにしか見えないのですが、多くの図鑑は牧野先生に気を遣ったのかこの記述を載せています。

そういえばインソールの専門家は、足裏の外側の骨が、歩くときに大切だと言っていました。そうか、忍び込む用事はないのだけれど私も少し外側に力を入れて歩いてみよう。

(たかはし・あつゆき 第5火・木・金曜担当)

※この記事は、月刊誌『ラジオ深夜便』2025年9月号に掲載されたものです。

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