撮影/半田広徳

おきさちさん(79歳)は、およそ40年前に当時は画期的だったハウスクリーニングの会社を設立。掃除が苦手な沖さんだからこそ思いついたこのサービスは、多くの人に喜ばれています。
無理せず住まいをきれいに保つ方法、そして老いていく中でも生活を楽しむ“自家発電”について、沖さんが語ります。

聞き手 須磨佳津江

この記事は月刊誌『ラジオ深夜便』2026年1月号(12/18発売)より抜粋して紹介しています。


ドイツで見つけた“掃除ビジネス”の芽

――沖さんは地元の神戸大学を卒業したあと、数百倍という難関を突破し、航空会社の客室乗務員になられました。その後洗剤メーカーで働き、1983(昭和58)年から2年間、休職してヨーロッパに渡られたそうですね。

 留学ではなく“遊学”しました(笑)。たまたまドイツを選んだのですが、ドイツ語ができなかったから語学学校に通って、マーケティングの勉強などをして。新しい洗剤を探してこいという会社からのミッションもあったので、毎月リポートを提出していました。

――そのドイツでの経験がきっかけで、家庭の掃除代行サービスの会社を立ち上げられた。

 人生、何があるか分かりませんよね。私は昔からずっとお掃除が大嫌いなんですよ。それなのに、きれいなおうちに住みたい気持ちは強くて。


“そこそこきれい”でオッケー

――簡単に掃除するコツは何でしょう。

 自分がお掃除できない部分は人に頼む。それから、汚れが蓄積する前にそのつどお掃除する。やはり年を重ねてくると、長時間はできませんから。あとはものの住所(定位置)を決めて、使ったら元に戻す習慣をつける。

これらを心がけていれば、いつもきれいな状態ですよね。家事労働は常に“ネクスト”を考えながらやるんですよ。「今これを片づけておけば“次”が楽だな」と。ただ、自分であんばいをよく考えて、無理せずにです。

――そのあんばいが難しいですね。

 “そこそこきれい”というのが大事ですから、パーフェクトはねらいません。私なんて掃除機は週に1回しかかけませんよ。それに換気扇の油汚れとバスルームの水回りの汚れを続けてお掃除すると、種類の違う汚れだから疲れるんです。お掃除するときは1か所のみ、それも5分だけなど時間を決めましょう。そこそこきれいになればいいんです。

――なるほど。でもものが多い人はまず減らさないといけませんね。沖さんはものを減らすのは得意ですか。

 そうでもないですよ。やっぱり物欲は、人間の根本的な欲求ですよね。ただ自分が手入れできる範囲のものしか持たないようにしています。置き場所がなくて床にものを置くのはいけません。ドイツでは「床にものを置くとお金がたまらない」と言うんですよ。つまずいて転ぶと医療費がかかるから、お金がたまらないという意味です。ものが少なければほこりがたまりにくいし、掃除も簡単ですしね。

※この記事は2025年9月9日、10日放送「はじめての“老い”、私流で自然体に」を再構成したものです。


掃除ビジネスが軌道にのるきっかけや、上手に生きるための三原則など、沖さんのお話の続きは、月刊誌『ラジオ深夜便』1月号をご覧ください。

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