はまきよさん(75歳)は30年にわたり、介護における数々の排せつの相談に乗ってきました。その情熱の根底にあるもの、心豊かに過ごすための考え方について浜田さんが語ります。

聞き手 岩槻里子

この記事は月刊誌『ラジオ深夜便』2026年2月号(1/16発売)より抜粋して紹介しています。


母の介護で残された宿題

――排せつのトラブルは、多くの人が直面するにもかかわらず、表立って相談しにくいですよね。浜田さんが排せつケアに関わろうと思ったきっかけは何ですか。

浜田 1985(昭和60)年ごろ、母が重い糖尿病で入院していました。白内障を併発して目がほとんど見えなくなったのですが、それでもなんとか自分でトイレに行っていました。当時はお医者さんが診察しやすい高めのベッドが多く、下に踏み台を置いていたんですけど、あるときうまく下りられず思いきり膝を床にぶつけてしまって。

病院から「骨折などして寝たきりになったら大変だから、おむつを使ったほうがいい」と言われました。でも母は嫌がったんです、とても。「これからは気を付ける」と言うんですけれど、「お医者さんも看護師さんも、そうおっしゃるから」と説得しました。そして、大きな布おむつを2枚重ねて、漏れたらまた重ねて……。そうしたら母はどんどん具合が悪くなり、1か月ぐらいで亡くなってしまったんです。

――たったの1か月。

浜田 はい。おむつと因果関係があったのかは分かりませんが、おむつを勧めたことにとても悔いが残り、どうしたらよかったんだろうと考えて。そのころやっと日本に福祉用具の展示場が出来始めていたので、見学に行ったりして勉強しました。そして、ベッドが低かったり手すりが付いたりしていたら、またはベッドの横にポータブルトイレがあったら、母はストレスが少なく過ごせたのではと気付きました。

母の介護のことは、まるで私の宿題のようにずっと心の中に残りました。誰にでも老いはやってくるし、高齢者はどんどん増えるので、しっかり介護のしかたを知らなければならない。中でも排せつはとても大事だからちゃんと勉強して、できれば実際にいろいろな人の困り事に向き合いたい、と強く思うようになったんです。


排せつ用具を網羅した情報館を

――そして、京都に排せつ用具の情報館「むつきあん」を作られたのが、2003(平成15)年。この取り組みは2013年に「グッドデザイン賞(注)」も受賞されました。

(注) 日本で唯一の総合的デザイン表彰制度。人や社会、そして未来を豊かにする取り組みに対して贈られる。

浜田 むつき庵は、福祉用具をできるだけそろえて、介護に関する情報を提供したいと開設しました。もともと人が住んでいた京都の細長い町家を改装しているので、車椅子の人が自宅の狭い廊下を通ってトイレに行くシミュレーションなどができます。おむつは到底すべてとは言えませんが、紙おむつ、布おむつ、尿とりパッドを合わせると400点ほど展示しています。

――えっ、400も!

浜田 皆さん、見学にいらっしゃると「こんなにあるの!?」と驚かれます。ドラッグストアでどれを買っていいか分からない方には、サンプルをお渡しして試していただけますし。排せつの相談にも乗っており、看護師や介護士をはじめ医師や作業療法士などはもちろん、介護をしている一般の方や排せつで悩む当事者の方も来られます。医療機関とも連携しているので必要に応じてつないでいます。

※この記事は2025年10月18日放送「豊かに生きるための排せつケアを」を再構成したものです。


寄せられた“排せつの悩み”で印象的だったことや、全国に広がる「おむつフィッター」、豊かに生きるために大切なことなど、浜田さんのお話の続きは、月刊誌『ラジオ深夜便』2月号をご覧ください。

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