『マディソン郡の橋』という1995年のアメリカ映画を覚えているでしょうか? 原作はロバート・ジェームズ・ウォラーのベストセラー小説で、クリント・イーストウッドとメリル・ストリープという名優が共演した、中年男女のたった4日間の恋の物語です。家族のために恋心に蓋をした主婦の切なさをメリル・ストリープが見事に演じ、小説とともに世界的に大ヒットしました。
映画のタイトルにもなった、物語上大きな意味を持つ屋根のある橋は、何とも言えない素敵さで、その後も私の目に焼き付いていました。なんて雰囲気のある橋かしら……あのような橋が実際にあるのなら見てみたいものだと、ずーっと思っていたのです。
それが日本にもあると知ってびっくり!
なんと愛媛県には、屋根のある橋が点在しているというではないですか。1つだけでも見てみたいと愛媛県の内子町を訪ねました。
内子町の中心部から車で、くねくねした山道を延々と走ります。すると突然視界が開け、ぽつんと屋根付き橋が現れました。静寂の中にひっそりと佇むその姿は、ややカーブした木製の太鼓橋で、屋根は杉の皮を葺いたのでしょう。とても古そうでしたが、今でもしっかり渡ることができる現役の橋でした。その奥にある弓削神社の参道なのだそうです。だとすれば、橋が傷むたびにその地域の方々が繰り返し直してきたに違いありません。
看板の説明によると、神社の創建は1396(応永3)年の室町時代だとか。当時から大切に守られてきた橋だったんですね。歴史の重みに加え、橋を大事にしている人々の愛情あってこその風情なのだと納得しました。
それにしても、なぜ屋根を付けたのでしょう……。木製の橋は風雨にさらされると傷むので、橋を守るためなのでしょうか? それも橋への愛情あってこそ。山間の集落に佇む屋根付き橋は男女のラヴ以上の大きな愛に包まれた橋でした。各地にはまだまだ私の知らない宝物があるのでしょうね。そう思ってワクワクしています。
(すま・かつえ 第2・4火曜担当)
※この記事は、月刊誌『ラジオ深夜便』2025年12月号に掲載されたものです。
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