うすうす気づいてはいた。でもつい目を逸そらしてしまう。明日こそやろう、次の休みには、そのうち……と先送りにしてきた。
読みかけのまま積まれた本の山、掃除をサボっているエアコンのフィルター、静かに増殖していく体脂肪……。数え上げればキリがない。そんな私に追い打ちをかけるように突き付けられたのが「磁気テープ2025年問題」である。9月22日放送の「あすが輝く ことばの世界」でゲストの一柳みどりさんが「流行語のたまごのことば」として紹介してくださった。
ビデオテープやカセットテープなどに記録された映像や音声が、このままだと再生できなくなるという。再生機器の生産や修理サービスが終了し、テープも年月を経て劣化しているからだ。今のうちに大事なものはデジタル化しておけという話である。2019年にはユネスコが「2025年頃」がそのタイムリミットだと警告を出していたという。世の中、さまざまな「2025年問題」があるが、これが「私の2025年問題」である。
クローゼットの奥の「開かずの箱」を恐る恐る開けてみる。かつて携わった番組のタイトルが目に飛び込んでくる。「ニッポンときめき歴史館」の江戸時代の旅を再現する企画はハードな取材だった。助さん・格さんのような格好で日本橋から横浜市の戸塚まで40キロあまりを1日で歩いてリポートした。「国宝探訪」のナレーションでは「もっと重厚感を!」とプロデューサーから何度もダメ出しされ、鍛えられた。アナウンサーとしての私の道のりがこの箱に詰まっている。
ビデオデッキはもう家にはないし業者にダビングを頼めばなかなかの料金だ。どうしても残したいものだけを厳選しなければならない。これは大仕事になりそうだ。
蓋をしてまたクローゼットに入れたいのをぐっと我慢。自制心の弱い私がこれ以上、見て見ぬふりをできないように、目に付くところに出しておく。見慣れてしまわないかが心配だが……。
(なかがわ・みどり 第2・4月曜担当)
※この記事は、月刊誌『ラジオ深夜便』2025年12月号に掲載されたものです。
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