私たちアンカーの楽しみの1つは、皆さんから届くお便りです。厳しい指摘をいただくことも多いのですが、ラジオの向こう側の皆さんの日常が見えてくるお便りに感心したり、胸を熱くしたりしています。
1つのドラマを紹介します。私が「深夜便」のアンカーになって7年目、遠く離れた姉妹から、毎回のようにそれぞれの近況などを知らせるお便りが届いていました。栃木で暮らす姉の幸子さんからは自宅の庭に咲く草花を生き生きと描いた絵手紙。一方、大阪の妹・京子さんはボランティアで行く介護老人ホームの皆さんの様子などを笑い話を交えて書いておられました。仲良し姉妹の暮らしがよく分かるお便りでした。ところが今年の春のことです。妹の京子さんから、姉の幸子さんが亡くなられたという知らせが届きました。
その内容です。幸子さんは元気いっぱいの方でしたが、病院の検査の結果すぐ入院。病気が進行していたものの「私は大丈夫」と本人の強い申し出で退院しますが、容体が急変し帰らぬ人となりました。明るい性格の幸子さんは皆さんから慕われ、多趣味で絵手紙もそのうちの1つだったそうです。
話はまだ続きます。幸子さんの入院当初のこと。京子さんの息子さんが、「深夜便」で幸子さんの絵手紙を紹介したコメント部分を録音していたそうです。それを文字に起こしてノートを作り、お見舞いとして届けるはずだったそうですが、残念ながらかなわず、棺に入れて見送ったと書き添えられていました。
この京子さんからの手紙を「深夜便」で紹介すると、大勢の皆さんからお悔やみの手紙やはがきが届きました。「どんな絵手紙か、毎回楽しみにしていた」「幸子さんのお庭を見てみたかった」など、初めてお便りを寄せてくださった方もおられました。幸子さんの旅立ちを伝える京子さんの手紙に胸が詰まり、幸子さんへのお悔やみのお便りに“深夜便ファミリー”の優しさが伝わってきました。
お便りには皆さんの暮らしの中の大切なドラマがある! 改めて実感しています。
(やました・まこと 第2・4日曜担当)
※この記事は、月刊誌『ラジオ深夜便』2025年10月号に掲載されたものです。
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