ドラマの出演者やスタッフが「この回のあの人、あのシーン」について語ったコメントを不定期で配信するコーナー。今回は、喜多川歌麿役の染谷将太さんから!
染谷将太さんの第30回振り返り
——今回、歌麿が自分なりの画風を追い求める中で、蔦重(横浜流星)から「枕絵」を提案され、乗りました。歌麿は、なぜ枕絵に挑戦しようと思ったのでしょうか?
ここを避けては通れない、枕絵に挑戦しないとこの先には行けない、と直感的に歌麿は感じたんだと思います。魂のこもった作品を作るには“生みの苦しみ”があるとは思いますが、歌麿はそれがすごく重くて、描こうとすると過去のトラウマが出てきますから……。
演じていて気づいたのは、幻覚を“自分から出しにいっている”感じがしたんですよね。きっとそれが歌麿の弱さでもあり、同時に強さでもある。絵に自分の思いをぶつけて表現することができるからこそ、“天才絵師”になれたんじゃないかなとも思いました。

——鳥山石燕(片岡鶴太郎)と再会しましたが、石燕は歌麿にとってどのような存在なのでしょう。
石燕先生は、蔦重とはまた違う形で歌麿を受け入れてくれた師です。「お前には見えるはずじゃ」という言葉は、「歌麿にしか描けない絵があるんだぞ」と、感覚的に教わったような気がしました。そして「歌麿の目に映ったものは、例えば花一つ描くにしても、命や美しさというものを絵に落とし込める才能があるんだぞ」と言ってくれているようにも聞こえました。

——改めて石燕に弟子入りしますが、歌麿にとってどのような意味を持ったと思いますか。
歌麿は、久々に何も考えず、思うがまま、目的がない絵を描き始めます。絵を描くのが好きだったのは、こういう感覚だったよな、ということをもう一回感じ直せた、もう一度原点に戻れた、そんなシーンだったと思います。
蔦重がいなかったら、歌麿が外に出てまた絵を学ぶということもできなかったと思いますし、蔦重という帰る場所があるからこそ、歌麿は一歩外に踏み出せるようになったのかな、とも思いました。
拗ねてはいましたが、蔦重も前向きに見送ってくれたんじゃないかなと思っています。
