西日本最大級の教育ICT展示会、第10回関西教育ICT展が8月7日〜8日、インテックス大阪で開催されました。ICT(情報通信技術)で教育力を高めることを目指したこの展示会にNHK財団もブースを設け、これまで財団で取り組んできた「ネット・メディア空間」における社会貢献について展示を行いました。多くの教育関係者のみなさんに見ていただき、感想などを頂戴することができました。その一部をご紹介します。

■インフォメーション・ヘルスアワード
NHK財団では、情報空間の課題の解決方法や、一人ひとりが望む「情報的健康(インフォメーション・ヘルス)」を実現するためのアイデアを募集し、社会実装に向けての取り組みを進めています。展示ではこれまで2回行われたアワードの受賞作品の紹介や、現在募集中の3回目のアワードについて紹介しました。(インフォメーション・ヘルスアワードのサイトはこちら ※ステラnetを離れます)

第1回アワードのグランプリ作品「心組成計」はSNSに触れた際の心の状態を可視化しようという試みです。「トライアル」のコーナーでは「情報に触れている時の心の“健康状態”を知ることで、自分自身のネットとの関わり方を振り返るきっかけになる」といった意見がありました。今後、自己理解や、行動の見直しにつながる教材としての可能性がありそうです。(「心組成計トライアル」はこちら ※ステラnetを離れます)
また、財団が主催するアワードについて、来場者からは、「情報空間の課題を“健康”という視点で捉えるのでわかりやすい。探究学習のテーマとしても活用できそう」との声が寄せられました。
“インフォメーション・ヘルス(情報的健康)”の考え方や、そのアイディアを競う“アワード”は、情報リテラシー教育の新たなアプローチ、探求の入り口としての可能性を感じていただけたようです。
■メディア・リテラシーかるた

「メディア・リテラシーかるた」は、中橋雄教授(日本大学文理学部)監修のもと、3年前、NHK財団で開発しました。
かるたという親しみやすい形式は子どもたちの興味を引きやすく、自然な形で情報の扱い方やメディアの見方を学べる点が評価され、これまでに1,200部を超えるかるたをご希望いただいた学校や教育関係者などに配布しています。
「遊びながらメディア・リテラシーを学べるのが良い」「小学校の授業に使いたい」といった感想が多く寄せられました。先生からは「授業後の振り返りや、家庭での話題づくりにも使えそう」といった意見もいただいています。
ダウンロードはこちら(絵札のダウンロード/読み札のダウンロード)

■新・介護百人一首
介護にまつわる喜怒哀楽、さまざまな思いを短歌にしてご応募いただく「新・介護百人一首」。NHK財団とNHK厚生文化事業団が主催して、5年目を迎えました。現在、2025年度の短歌を募集しています。(募集のページはこちら ※ステラnetを離れます)
会場でこれまでに選ばれた歌に触れた人たちからは、
「介護をテーマにした教材は珍しく、福祉教育にぴったり」「高齢者との交流授業にも使えそう」との意見がありました。また、地域の高齢者と学生が一緒に作品を鑑賞したり、感想を共有したりすることで、世代間交流のきっかけにもなるのではないかという声もありました。
介護という身近なテーマを、教育現場でも扱いやすいように、親しみやすい形式で取り上げている点を評価していただいたようです。
■デジタル・ミュージアム

NHK財団で開発した『災害の記憶デジタルミュージアム』を来場した方に実際に操作しながら見ていただきました。
これは、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社が所有する江戸時代の錦絵図などの災害資料を約4億画素の高画質でデジタル化し、バーチャル空間上の美術館に展示するものです。自分が見たい部分を拡大することができ、またAI合成音声による解説を聞くこともできます。
(8Kで観よう!!『災害の記憶 デジタルミュージアム』が私たちに教えてくれること| ステラnet)
実際に操作してみた人からは「細部まで見えることで理解が深まる」といった声が聞かれ、8K映像による精細な映像が、絵画の質感や空気感をリアルに再現していることを体感していただけたようです。
また、AI合成音声による親しみやすい解説が、専門的な内容の理解を助け、学習のハードルを下げる効果がある、という声も。
さらに、同会場では「まど・みちおのうちゅう」展の8K展示も紹介し、詩人 まど・みちおの世界観を体感できる空間として、多くの来場者の注目を集めていました。(詩人 まど・みちおの“絵画” 4億画素の超高精細映像で、その繊細な筆致が鮮やかに! | ステラnet)
これらの技術は教育の現場でも、探究的な学びや、史料を題材とした研究活動につながりそうです。
2日間、来場者の皆様から貴重な意見や感想を直接伺うことができて、大きな励みとなりました。
NHK財団では、今後も教育現場や地域社会に寄り添いながら、より実践的で有意義な社会貢献活動を展開していきたいと思います。
(取材・文 社会貢献事業部 木村与志子)