日本賞は、教育番組の質の向上と国際理解の促進を目指して、1965年にNHKが創設した国際コンクールです。今年、設立から60年を迎えた日本賞は、教育分野にとどまらず、幅広いジャンルのコンテンツクリエイターから注目される、世界的に権威ある賞として高く評価されています。NHK財団では、30年以上にわたり、日本賞の事務局支援業務を担っています。

先日決定した各部門の最優秀作品と、それらを観て制作者たちと交流できるイベント、日本賞映像祭(11月開催)についてご紹介します。
※日本賞映像祭(11月17日~20日)参加は無料・事前登録で16歳以上ならどなたでも参加可


世界の“今”を映し出す受賞作品

第52回を迎えた今年の日本賞には、世界58の国と地域から373作品の応募がありました。ジャンルもテーマも多様で、世界の“今”を垣間かいま見ることができるラインナップです。
審査は、幼児・児童・青少年・一般の4つの対象年齢に分けて行われました。幼児向け部門では、子どもたちの好奇心や冒険心をくすぐる、想像力を刺激する作品が目立ちました。

児童向け部門では、他者への思いやりや共感力を育むストーリーが多く、観る者の心に優しく問いかけてきます。青少年向け部門では、アイデンティティやセクシュアリティーに関する悩みに真剣に向き合った作品が多く、若者たちの等身大の葛藤が描かれています。
そして一般向け部門では、貧困や戦争、社会的立場などによって困難に直面する人々が、不屈の精神で希望を見出していく姿を追ったドキュメンタリーが多く寄せられました。どの作品も、観る人に「他者を理解し、共感する力」を育むきっかけを与えてくれます。

審査の結果、各部門で最優秀賞に選ばれた作品をご紹介します。


第52回日本賞 最優秀賞作品

幼児向け部門(0~6歳):未就学児の教育に役立つコンテンツ
レナとまきばのなかまたち:にぎやかな巣<ドイツ、クロアチア>

レナの農場には、個性豊かな動物たちが集まり、共に暮らしています。レナは1匹1匹を分け隔てなく大切にしています。このエピソードでは、リスが冬の寒さに備えて、こっそり持ち出した品々で暖かい快適な巣を整えています。ところが洪水が起こり、森の動物たちが次々と農場へと逃げ込んできます。リスは彼らを助けたいと思うのですが――。
全編セリフのない「レナとまきばのなかまたち」シリーズ。ユーモアにあふれたこの作品は、分け合うことの喜びを子どもたちにやさしく伝えてくれます。

児童向け部門(6~12歳):初等教育課程の子どもの教育に役立つコンテンツ
長距離バス<フランス、ベルギー>

1990年代、ポーランドからベルギーに一人で行くことになった8歳の少女アガタ。移動のバスの中でポーランドにいるお父さん宛てに手紙を書いていると、色鉛筆を落としてしまいました。色鉛筆を捜しているうちに、アガタは半人半獣の奇妙な乗客たちがいる幻想的な世界に迷い込みます。移住という現実は、少女の目を通して見ると、未知の世界へ踏み出す経験となるのです。幼い頃にポーランドからベルギーへ移住した監督の実体験をもとに描かれたこのアニメーション映画は、子どもの心の揺れを繊細に描き出しています。

青少年向け部門(12~18歳):青少年の教育に役立つコンテンツ
夢と運命の境界で エジプト 少女たちの岐路<フランス、エジプト> (ドキュメンタリー)

エジプト南部の都市部から遠く離れた村に、少女だけの演劇グループがあります。路上で上演する演目は、少女たちの反骨精神を反映させた作品。彼女たちの夢は女優やダンサー、シンガーになること。型破りなパフォーマンスを通して家族や村人たちに異を唱えています。4年にわたって撮影されたこの作品は、少女たちが子どもから大人へと成長し、人生で最も重要な選択に直面する姿を追っています。女性たちが自分の生き方を見つけ、社会の枠に挑んでいく姿を描いたこのドキュメンタリーは、今も社会的に声を奪われている人々に希望を届けています。

一般向け部門(18歳以上):大人の学びに役立つコンテンツ
路上の名もなき子供たち<オランダ、バングラデシュ>

バングラデシュでは路上生活を送る子供が340万人以上いると推定され、薬物乱用やレイプなどの危険にさらされています。しかし、路上に出て彼らに手を差し伸べる少数のグループも存在します。この作品は、ダッカに暮らすストリートチルドレンの心とその世界、そしてソーシャルワーカーたちによる救済への取り組みを映し出しています。オランダのJaJa Film Productionsと、元ストリートチルドレンによって設立されたバングラデシュのDhaka Picturesによる共同制作で、彼らは自らの経験を通して、訴えるすべのない子どもたちの現状を世界に伝えつづけています。

※ここに紹介した4作品は11月4日より日本賞特設サイト( ※ステラnetを離れます)でもご覧いただけます。


「日本賞映像祭」 観るだけじゃない、語り合う場へ

会場との活発な質疑応答が展開されたトークセッション(2024.11.20)

これらの作品を観ることができるのが「日本賞映像祭」。
今年は、11月17日から20日まで、JR原宿駅前の商業施設「WITH HARAJUKU HALL」で開催されます。16歳以上の方であれば事前登録をすることで、どなたでも無料で参加できます。
日本賞の参加はこちらからどうぞ。 ※ステラnetを離れます

上映会では厳正な審査を経て選ばれた9つの受賞作品を参加者全員で鑑賞した後、それぞれの作品について深掘りするディスカッション、また作品の制作に関わったクリエイターやプロデューサーによるトークセッションも予定されています。
さらに開発途上国に活動拠点を置く放送局などが“これから制作したい”と考える番組企画を持ち寄って競われる「企画分野」のファイナリストたちが、自身の企画を審査委員にプレゼンする「ピッチ」。その様子を間近で見ることができるのも、日本賞ならではのだいです。ファイナリストの緊張感や熱意が伝わる、貴重な機会です。

映像祭の最終日には、上記4つの受賞作品の中からグランプリ作品が、また、企画分野からは最優秀賞と優秀賞が発表されます。

世界各国から集まった審査委員とモデレーターたち (2024.11.20)

日本賞映像祭は、世界各国のコンテンツクリエイターや業界関係者と直接交流できる、年に1度の貴重な機会です。多様な作品を観て、語り合い、共感する4日間。ぜひ、会場で体感してください。

※日本賞の参加はこちらから。16歳以上の方は無料で参加できます。
上映スケジュールはこちらよりご確認いただけます。※ステラnetを離れます
※予定が変更になる可能性があります。最新の情報は日本賞ホームページ (※ステラnetを離れます)をご確認ください。

(NHK財団 国際事業本部 財前由紀)