ドラマの出演者やスタッフが「この回のあの人、あのシーン」について語ったコメントを不定期で配信するコーナー。今回は、「あんぱん」作者の中園ミホさんによる第109回の振り返りをご紹介!
中園ミホさん振り返り

――嵩(北村匠海)の家を訪ねてくるファンの少女・中里佳保(永瀬ゆずな)は、中園さんご自身がモデルになっていますが、2人の会話については実話ベースなのでしょうか? 結構、尖ったやり取りだと思いましたが……。
さすがに、あそこまで失礼ではなかったですよ(笑)。ただ、実在する方がモデルになったドラマを書く場合は、やっぱり悪い人には描けないですよね。そういう人物にして、ご家族の方が見たらどう感じられるかな、と気を遣うところがありますし。でも、私はすごく癖の強いキャラクターを描くのが大好きなので、一度思いっきり生意気な子を書きたいなと思っていました。それで自分がモデルだったら構わないだろうと判断して、生意気さが振り切れた子にしてみたら、書いていてすごく楽しかったです。

――そういう少女にも、ちゃんと嵩の作品が届いているというシーンですよね。
史実で言うと、やなせたかしさんは、あの時点でトイレから星空が見える長屋に住んでいたわけではないのですが、それは作劇上の都合で(笑)。ただ、普通に10歳の私が、あの長屋を訪ねたとしたら「うわぁ、こんなボロいところに住んでいるんだ」と、まず思うかなと。口にするかどうかは別ですけど、それを全部言わせてみたら、とにかく気持ちがよかったですね(笑)。
けれども、私が父を失った悲しみからやなせさんの詩に励まされたのは事実ですし、こんなに生意気な子でも、嵩の詩にちゃんと救われているところは外しちゃいけないと思いました。ドラマとして、より変な女の子のほうが、そういう子の心にもやなせさんの言葉がちゃんと届くことになるので。私がやなせさんの詩に救われたときの気持ちは、デフォルメしないでそのまま書きました。