ドラマの出演者やスタッフが「この回のあの人、あのシーン」について語ったコメントを不定期で配信するコーナー。今回は、松野トキ役の髙石あかりさんから、第15回の振り返りをご紹介!


髙石あかりさん振り返り

──トキは松野家(司之介/岡部たかし・フミ/池脇千鶴)の実子ではなく、本当は雨清水家(傳/堤真一・タエ/北川景子)の娘だったという事実が、三之丞(板垣李光人)によって暴露されてしまいました。どのような気持ちで演じられましたか?

このシーンのトキは、本当にかっこいいですよね。生みの親としての雨清水家と、育ての親としての松野家があって、例えば、自分で「松野家が私の本当の家族です」と言ってしまうこともできたと思うんです。でもトキは、「知っちょります」とだけ言うんです。事実を事実として受け止めるだけの強さがトキにはあるんです。

演じるにあたっては、以前、橋爪プロデューサーがトキについて話してくれた、「彼女は相手と自分の意見が違っていても、相手を認めることができる人なんだ」という話がヒントになりました。

トキという人は、もし自分が「黒」だと思っていたとしても、相手が「白」だといったら、それをちゃんと受け止められる。しかも、その上で、「私は黒だと思う」と言える人だと。

おじじ様や父上が武士の格好をしているのを黙って認めていたのも、そういうこと。スタイルを貫くのは良い。でも人のためにならない武士は嫌。つまり、相手を否定しない。自分の意見を押し付けもしない。でも感情を飲み込んでしまうのではなく、きちんと自己主張する。自分と相手との間にちゃんと線引きができているというか、介入しすぎないんです。人間というものを、信用しているからこそできることかもしれません。

そんな話を聞いて、実はすごくに落ちました。ずっと、トキは私に似ていると思っていたけど、そうか、ここだったんだと思いました。
だからこのシーンも、自分自身の感覚に重ねて、トキは昔からなんとなく感じていた事実を静かに受け止めている。このことで誰かを責めたり、心を揺さぶられすぎたりすることはないんだ──。そう理解して、演じました。